サステナビリティCSOフォーラム

HOME > レポート > [開催報告]サステナビリティ円卓会議~SDGs対話フォーラム~

[開催報告]サステナビリティ円卓会議~SDGs対話フォーラム~
2016/11/25


161027beginning
冒頭での報告

環境省の「SDGsステークホルダーズミーティング」や政府の「SDGs推進本部」など、国内でのSDGs推進の動きが始まっています。
市民社会では「SDGs市民社会ネットワーク」が活動を開始し、「対話フォーラム」を連続開催予定しています。今回のサステナビリティ円卓会議は、その1つとして、10/27に地球環境パートナーシッププラザで開催され、SDGsの環境分野においての政府関連や市民社会での動きなどの情報・意見交換が行われました。(主催:一般社団法人環境パートナーシップ会議(EPC)、SDGs市民社会ネットワーク 参加者計約30名)

1)政府のSDGs推進本部、実施指針策定についての進捗報告(外務省)

161027mofa-ishizuka
外務省地球規模課題総括課課長補佐 石塚 恵氏

外務省地球規模課題総括課課長補佐の石塚恵氏が、実施指針骨子、実施指針付表骨子を配布して説明。

・SDGsの前身は、発展途上国向けの開発目標として2015年を期限とした8つの目標MDGs。2030アジェンダは、2015年9月の国連サミットで採択された、先進国を含む国際社会全体の開発目標であり、2030年を期限とする包括的な17の目標「SDGs(持続可能な開発目標)」。

・5/20に総理を本部長、全閣僚を構成員とするSDGs推進本部を設置。同日の第1回会合において、「SDGs実施指針」を策定していくことを決定。9/12にSDGs推進円卓会議を開催し、幅広いステークホルダーと意見交換を行った。

・17の各SDGを紹介。日本自身の課題に関係が深い目標の実施には、多くの国内省庁が関係する。

・SDGs実施指針(骨子)について、ビジョン、実施原則、2019年までを目処に最初のフォローアップを実施すること、8つの優先課題と関係省庁から提出されている施策などを紹介。

・SDGs推進円卓会議での議論を踏まえて骨子に盛り込んだ主なポイントは、2030アジェンダの基本的な考え方等、SDGsの主流化、ステークホルダーとの連携、広報・啓発、フォローアップレビュー。

・パブリックコメントの実施:10/19~11/1

・今後の課題:2030アジェンダの着実な実施(先進国を含む全ての国の国内実施、途上国の実施に対する支援)、新しいグローバルパートナーシップが必要(先進国も途上国も、政府も民間企業も市民社会も有識者も)。
>>>資料 161027外務省1(実施指針骨子).pdf
>>>資料 161027外務省2(実施指針付表骨子).pdf

質疑応答
Q:現時点での骨子は6頁だが、最終的に発表される実施指針は、何十ページにもなるようにかなり量が増えるものなのか。
A:最終的にはSDGs推進本部で決定されるものなので、予断を持って伝えることはできないが、実際に作業している事務方の観点からすると、できるだけコンパクトに分かりやすいものにしたいと考えている。

Q:「人間の安全保障」という基本的な考え方が骨子に入れられたということだが、ビジョンや優先課題において「人間の安全保障」という表現が見当たらない。付表の8番「SDGs実施推進の体制・手段」の重点政策の中に「質の高い成長」とそれを通じた貧困撲滅、とあるが、質の高い成長によって貧困を撲滅できるかは非常に疑問を感じる。経済成長で貧困は軽減できるが、撲滅は不可能。人間の安全保障を通じた貧困解消、質の高い成長を通じた公正な社会経済システム作り、というような形にした方がよいのではないか。
A:人間の安全保障は非常に大事だと思っており、指針の中に組み込んでいるつもりではいるが、現在の表現では不足という指摘ももらっており、これから本文にいく際に意見も含めて修正したいということは考えている。

2)環境分野における関連報告(環境省)

161027moe-sekiya
環境省地球環境局国際連携課課長 関谷 毅史氏

環境省地球環境局国際連携課課長の関谷毅史氏が、資料に沿って説明。
>>>資料 161027環境省.pdf

質疑応答
Q:先駆的事例として2社の紹介があったが、もっと詳しい内容はどこかを見れば分かるか。
A:IGES(地球環境戦略研究機関)のHPにステークホルダーズミーティングの頁があり、そこからダウンロードできる。

Q:指標作りにおいて、外務省と環境省で重複する側面についてすり合わせをしているのか。
A:外務省から紹介があった指針、付表には、環境省の施策も含めて政府全体の施策が位置づけられている。ステークホルダーズミーティングも1つの施策。

Q: ESG投資については、環境省だけでなく、金融庁、経産省などとの横断的アプローチがあるのか。
A:現時点では、各省庁がそれぞれに検討・調査を行い、互いに情報交換している状況。最終的には財務報告と同じような形で公開できるようにという趣旨もある。

Q:中小企業向けの手引きはどういった内容になるのか。
A:検討が始まったばかりで、まだ形にはなっていない。中小企業ではSDGコンパスに則った対応ができないケースもあるかもしれない。これまでも例えばISOの仕組みが中小企業には難しい場合に、エコアクション21のように入口のハードルを下げたこともあり、そういう観点もあるだろう。SDGsは複数の目標が相互に関係しており、日本の各企業はどれかに関連することをやっているだろうし、それらが評価されるよう、入口を入りやすいものにしたい。

Q:SDGsには気候変動に関する目標があるが、パリ協定をどう考えているのか。
A:付表骨子6頁目に、優先課題5として、省・再生可能エネルギー、気候変動対策、循環型社会がある。基本的にはパリ協定を踏まえて、日本としてやっていく政策については、今年5月に温暖化対策計画を決定している。パリ協定では2030年目標より先の、より長期的な戦略作りを2020年までに各国から出すことが奨励されているが、温暖化対策計画にはそこまでは書かれていない。G7では2020年よりも十分に早く率先して出すことをコミットしており、環境省では現在、長期ビジョン策定を目指して今年度中にまとめるよう審議会で検討中。

Q:SDGs推進にあたり、各省庁間の調整機関ができることにより、気候変動に対する取り組みにも何かメリットがあるか。
A:SDGsに位置付けられたことで、各ゴールやターゲット間で相互に関連していることが強く認識されるようになったので、例えば温暖化や気候変動対策と持続可能な消費と生産形態の確保が関連していることを認識しながら進めていくことになるだろう。

Q:環境金融政策でグリーンファンド設立の話があったが、既存の金融機関に対してもっと投資するようにというガイドラインができるのか。
A:強要するのではなく、参考情報を提示することはある。地域でできるだけ環境案件に出資するサブファンドを作ってもらえるように多少国費を出して仕組みを整備し、そこに民間の金融機関からも出資して事業化していく取り組みを現在行っており、レバレッジ効果も高く実績が上がってきている。

3)ディスカッション「テーマ:既存の環境条約、国際環境情報から見るSDGs」

各ステークホルダーからのインプット・情報提供

 

161027yamagishiWWFジャパン 山岸尚之氏
「気候変動問題から見るSDGs」と題して、資料に沿って説明。
>>>資料 161027WWF.pdf
(P14に訂正有:誤「全世界の人口の12%に」→正「全世界の人口の17%に」)

 

 

 

161027mouriフューチャー・アース国際事務局 毛利英之氏
「サイエンス・コミュニケーションの視点から見るSDGs」と題して、資料に沿って説明。
>>>資料 161027フューチャー・アース.pdf

質疑応答
Q:SDGs策定プロセスでは、フューチャー・アースは科学的な観点のインプットをどのくらい行ったのか。
A:フューチャー・アースのメンバーも策定プロセスに関わったが、メンバーはフューチャー・アースだけに所属しているわけではない。
Q:SDGsの観点からすると、日本の科学界では、十分なサイエンス・コミュニケーションが行われているのか。
A: 十分ではないのは間違いないと思うが、行われていないわけではない。

 

161027inabaSDGs市民社会ネットワーク 稲場雅紀氏
「環境課題と他の課題との関連」と題して説明。
SDGs市民社会ネットワークには、開発、環境、国内の貧困、地域の持続可能性の促進などの分野について様々なNGOが参加し、実際に色々と取り組んでいる。SDGs実施指針の骨子案に関するパブリックコメント募集に際し、書き方や提出方法などのガイドブックのようなものを作成して紹介した。

・(稲場氏は)国際協力、国内貧困問題、人権問題など開発分野で長く活動してきたが、今回WWFやフューチャー・アースなどの環境NGOが地球の限界を示すデータを見て大変驚いた。地球の限界を踏まえてそれぞれの開発をどのように進めていくかという形に、相当発想を転換していく必要があると感じている。

・日本でSDGsを実現する際に4つの大きな課題がある。貧困格差解消、気候変動と災害、ジェンダー、少子高齢化と地方の持続可能性。現行の指針や付表がこれらの課題に応えるものになっているか非常に疑問を感じている。市民社会が本当にSDGs達成を目指すなら、いかに様々な政策を総動員してやるのかとういうように、現在の指針作りとは逆の発想でやっている必要があると感じている。

・現状の日本の政府政権の限界性を踏まえて現実的なアドボカシーをしなければならない一方で、地球の限界を克服するためにいかに動くのかに関しては、現実的な政策アドボカシーとは別の観点から追求していく必要があると考えている。

4)会場との意見交換

161027audience

・SDGsを国内で進めていくときには、環境省や外務省で先行して取り組んできたと思うが、我々市民社会それぞれが取り組んでいくことが必要。地方の人が実際に取り組んだときに、国際ゴールであるSDGsに対して有効なことをやっていることが評価されたり、あまりやっていない人に対しては提案がされることも必要だろう。

・国際的な取り組みについて、日本でイベントを行うと日本人は集まるが海外の人がいない。日本企業も国際機関を使うより、JBICやJICAなど日本の機関を使った方が確実だろうとの考えだろうが、そうするとインターナショナルな世界でやっている人は中にいないという事態になってしまう。SDGsの取り組みにしても、日本の企業や市民社会が国際機関を使ってインターナショナルな世界に参画していく枠組みを、政府として支援してもらいたい。

・毎年何回か主にミャンマーに行っているが、村の変化がすごい。水道もガスも電気も無い所でここ2~3年で携帯が普及したり、ソーラーパネルが置かれて夜に電気がつくようになって小さなTVを見ている。どうしてそういうことが日本では知られていないのか。日本でソーラーを導入するには何百万円と費用がかかったり、手続きが煩雑で中々個人でもできない。なぜこれほどギャップがあるのか。もう少しアジアで起きている現実をしっかりと把握して政策を立てていただきたい。

Q:2020年のオリンピック・パラリンピックに限定するわけではないが、SDGsの中で2020年に対しての捉え方、どこまで目標にしているのか、あるいはこだわっているのか。
A(WWF 山岸氏)
オリンピックは世界的な注目を集めるイベントなので、それを機会に環境に優しい技術が認知を受けるとか、日本の企業の中で調達方針を持つことが当たり前になるとか、シンボリックかつメッセージを送る装置として大事。
気候変動の観点で2020年は大事。「2020年以降の」という公的な目標を変えるのは難しいが、2020年までに世界的な意味でかなりな勝負がついてしまうので、企業や自治体で対策をでき得る限りあらゆる手段を使って盛り上げていくことが必要。

A(SDGs市民ネットワーク 稲場氏)
開発・国際協力の分野では、オリンピックにおいて栄養や食糧安全保障に関するサミットのようなものが、ロンドン以降開かれており、東京でも開かれるだろう。
2020年の前年の2019年にハイレベル・ポリティカルフォーラム(HLPF)の首脳会議が開催されるので、それに向けてSDGsのフォローアップ&レビューのサイクルを作っていく必要がある。
また、2019年には日本で第7回アフリカ開発会議(TICAD)が開催される。この2019年を踏まえて2020年のオリンピックをどうするか、というところは重要なポイントになる。

A(EPC 星野)
愛知ターゲットという、2020年までに達成しなければならない生物多様性の目標がある。生物多様性保全型のオリンピック・パラリンピックを実現したい。東京2020に向けてのNGOのネットワークも始まっている。