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[サステナビリティ紀行]世界と地域をつなぐアクション-セーブ・ザ・チルドレン、そして内子町の住民として-
2016/07/30


イギリスに本部を置く国際NGOセーブ・ザ・チルドレンは、子どの権利の保護を目指し、 SDGsの達成に向けて世界各地で精力的な活動を展開しています。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンのアドボカシー(政策提言)マネージャーとして活躍するかたわら、現在暮らしている愛媛県の内子町でも、地域からSDGs達成に向けてアクションを起こそうと尽力している、堀江由美子さんにお話を伺いました。

(語り手:公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン アドボカシー・マネージャー 堀江由美子さん)

セーブ・ザ・チルドレンは、国際NGOとして、国際的にそして日本国内でどのような点を最も重要な課題と考えていますか。その解決に向けてどのような活動をされているのでしょうか。

私たちが目指す世界
セーブ・ザ・チルドレンほか複数のNGO/
NPOの協働で制作したSDGsハンドブック

セーブ・ザ・チルドレンは、1919年の創設以来、世界中で子どもの保健・栄養や教育、暴力からの保護、貧困削減、緊急人道支援など様々な活動に取り組んできました。日本国内では、東日本大震災や熊本地震の緊急・復興支援、子どもの貧困や虐待の課題にも取り組んでいます。

今年度からのグローバルな中長期戦略で、従来のアプローチでは、最も取り残された子どもたちの大幅な状況改善はできないという問題意識から、より疎外され脆弱な立場に置かれた子どもたちを優先し、こうした子どもたちを取り巻く構造的な障壁を取り除くアプローチに大きく転換を図りました。

これは、SDGsの「誰一人取り残さない」という理念とも深く関連しています。国内外で直接事業とアドボカシーの両面で、すべての子どもの権利の実現を目指して活動を続けます。

SDGsにも記され、伊勢志摩サミットでも話題になった言葉に「UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)」があります。セーブ・ザ・チルドレンは、この推進に力を入れていらっしゃいますが、これはどのようなものなのですか。なぜ必要とされているのでしょうか。

UHC-Superheroes
UHC達成に向けG7首脳がスーパーヒーローになって
ほしいとの想いで制作。プレスセンターでも評判に。

UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)とは、「誰もが、いつでも、お金の心配をすることなく、必要な保健医療サービスを受けることが出来る状態」をいいます。

健康への権利は、すべての人が持つ基本的人権ですが、世界では未だに4億人が基礎的な保健医療サービスを受けられず、年間約600万人の乳幼児が5歳の誕生日を迎える前に亡くなり、保健格差は広がっています。

G7伊勢志摩サミットでは、はじめて首脳宣言でUHCの推進が約束されました。「誰一人取り残さない」UHCを実現するためには、この約束を具体的な施策につなげる必要があり、引き続き市民社会の働きかけが欠かせません。

内子町(愛媛県)でも、SDGsの推進にも携わっていると伺いました。国際的なゴールを国内の地域に広めていくにあたって、どのようなアプローチが有効だと思いますか。今後の展望とともに教えてください。

夫が地域おこし協力隊に転身したことに伴い、昨年から家族で内子町に住んでいます。内子町は、これまで全国でも先進的な町並み保存活動の他、エコロジータウンやグリーンツーリズムの推進などの持続可能な地域づくりを行ってきています。その一方で人口減や過疎化の課題も深刻です。

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2015年11月21日に開催した
「ローカルSDGs?in 内子町」シンポジウム

SDGsは、持続可能な環境や暮らしに包括的に取り組み、多様なステークホルダーが主体的に参加するためのツールになると考えられ、昨年秋のシンポジウムに続き、今年後半には内子町総合計画とSDGsをマッピングするワークショップの開催を考えています。

国レベルのSDGs実施にとって、基礎自治体レベルの取り組みの積み上げがカギになると考えられます。SDGsを共通のキーワードとして、国内外で取り組みの共有や連携が進み、持続可能な社会、環境、経済のあり方について議論と活動が進むことを期待しています。

関連サイト:
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが他のNGO・国際機関と協力して制作した子ども・若者向けのハンドブック『私たちが目指す世界 子どものための「持続可能な開発目標」』日本語版はこちらから(セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンのサイトが開きます)

Ms.horie堀江由美子(ほりえゆみこ)
共同通信社に勤務後、英国イーストアングリア大学大学院で農村開発修士号を取得。1999年より(特活)国際ボランティアセンター山形でカンボジア駐在員として農村開発事業に従事し、2002年にセーブ・ザ・チルドレン・ジャパン入局。2010年よりアドボカシーを担当し、子どもの権利実現の観点から国際保健、教育、SDGsなどのアドボカシーに関わる。「動く→動かす」運営委員。共著に『ミレニアム開発目標:世界から貧しさをなくす8つの方法』(合同出版)。