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[サスティナビリティ紀行]パートナーシップ先進国は?ハイレベル政治フォーラムから読み解く
2017/07/28


国連ハイレベル政治フォーラム
(HLPF)のバナー前にて(左が堀内氏)

2017年7月10日-19日、ニューヨークの国連本部にて、SDGsに関するハイレベル政治フォーラム(HLPF)が開催されました。日本がはじめて進捗状況を発表する、日本の市民社会団体からもたくさんの参加がありました。会合に参加した国際協力NGOセンターの堀内葵さんに伺いました。(語り手:国際協力NGOセンター 堀内葵さん)

今年のHLPFではどのような点が注目されていたのでしょうか。着目すべきポイントについて教えてください。

2年目となるHLPFは「変化する世界の中で、貧困を削減し、繁栄を推進する」という全体テーマで開催されました。今年から重点的に取り扱うSDGsのゴールが設定され、今年はゴール1(貧困ゼロ)・2(飢餓ゼロ)・3(保健医療)・5(ジェンダー平等)・9(産業と技術革新)・14(海洋資源)が選ばれています。各国がSDGsの進捗状況を報告するVNR(自発的国別レビュー)は43カ国が発表しました。昨年の22カ国に比べてほぼ倍増しています。閣僚や政府高官が77名、全体参加者は2458名、サイドイベントは147件開催され、8日間におよぶ会議となりました。


VNR報告書を発表する岸田外務大臣

日本政府もVNRを発表し、「だれ一人取り残さない多様性と包摂性のある社会の実現」というビジョンのもと、SDGs推進本部の設置や円卓会議の開催、SDGs実施指針の策定などを盛り込んだ報告を行いました。その後、途上国での上下水道の設置や母子手帳の普及、現地生産による栄養改善などを紹介する映像に続いて、次世代を担う若者のエンパワーメントを行う社会企業家によるスピーチがなされ、最後に岸田外務大臣が子どもと青少年、保健、防災、ジェンダー平等、シリア支援に対して10億ドルを拠出する、と発表しました。

企業の動きとしては、昨年に引き続き「SDGsビジネスフォーラム」が開催され、SDGs達成に向けた企業の役割が議論されました。SDGsへのビジネス投資をモニタリングする明確なメカニズムや、民間による投資を促すために十分な利益の出るプロジェクトの重要性が議論されるとともに、民間セクターにおけるSDGs認知度の向上も強調されました。

堀内さんは、SDGs市民社会ネットワーク開発ユニットにも関わっておられます。SDGs市民社会ネットワークとして提言を作成したそうですが、これはどのように作成され、どのような内容なのでしょうか。


日本政府主催レセプションで
NGOによるSDGsレポートを配布

SDGs市民社会ネットワークに所属する各ユニットが提言内容をまとめ、それらを統合して作成しました。5月に開催されたSDGs推進円卓会議の場で日本語版を発表し、ニューヨークでは日本語版に加えて英語版も配布しました。内容は、SDGs達成に向けた日本の政策と実施メカニズムの現状と課題を評価しつつ、貧困・格差、開発、保健医療、教育、ジェンダー、障害、防災など11の分野から日本・世界の現状分析と政府への提言をまとめています。

パートナーシップの観点から、どのような着目すべき動きがありましたか。これから世界の市民社会とともにどのようなことを目指していきたいでしょうか。そのために、国内で今後力を入れていきたいことがあればお知らせください。

デンマークやスロベニアのVNR発表では、市民セクターがしっかりと発言をする機会がありました。デンマークの財務大臣は、SDGs行動計画に含まれる4つの優先事項(Prosperity、People、Planet、Peace)に加えて、Partnershipを5つ目の要素として強調していました。また、ネパールやブラジルの発表では、政府・企業・市民セクターの連携が謳われました。

今回のHLPFに関する報道で日本のメディアで話題になった「PPAP」は、外務省が「Public Private Action for Partnership(パートナーシップに向けた官民行動)」という意味で使用しており、日本政府として官民連携に力を入れていくことを表明しています。SDGsの認知度向上という意味ではこれらの動きを歓迎する一方で、その次のアクションに向けた施策を考えていかなければなりません。あの動画を入口にSDGsを知った人に向けて次にどのような情報を提供できるのかが、政府・企業・NGOを含めた市民セクター共通の課題と言えるでしょう。

一方で、あるNGO関係者がVNR発表の場でコメントをした通り、市民社会スペース(市民社会の活動のしやすさ)が世界的に縮小していることも事実です。市民社会には「Space(活動空間)」、「Voice(発言の機会)」、そして「Resource(資源)」が必要である、という言葉はそのまま日本社会にも当てはまります。日本政府がパートナーシップを組むべき市民社会の動きが制限されないように、日本のNGOは世界のNGOとともに行動していかなければなりません。

horiuchi03堀内葵(ほりうち あおい)
(特活)国際協力NGOセンター(JANIC)アドボカシー・コミュニケーショングループ。SDGs達成に向けた提言や、外務省とNGOの定期協議会のNGO側事務局を担当。(特活)AMネット理事。「防災・減災日本CSOネットワーク」事務局長。神戸大学大学院総合人間科学研究科修了、総合人間科学修士。共著に『国際協力用語集 第4版』(佐藤寛監修・国際開発学会編、丸善出版、2014年)。