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生物多様性条約第12回締約国会議参加報告
2014/11/11


韓国北東部にある平昌(ピョンチャン)で開催された生物多様性条約第12回締約国会議(以下、CBD-COP12)に2014年10月11日から15日まで参加してきました。

●生物多様性条約とCBD-COP12の概要

cop12_1生物多様性条約とは1992年の地球サミットをきっかけに作られた条約であり、生物多様性の保全、持続可能な利用、遺伝資源の衡平なアクセスと利益配分を目的に、2年に1度締約国による会議が開かれています(右写真;会場エントランス)。

条約全体の動きの中でこのCBD-COP12は、2010年に愛知県名古屋市で開催された第10回締約国会議で採択された愛知目標(2020年までに達成すべき20項目の国際的な戦略計画)の中間地点ということで、これまでの進捗評価とこれからすべきことについて明確にすることが期待されました。

また通常、締約国会議に合わせて条約の附属議定書の締約国会合が開かれるため、CBD-COP12の際にも、遺伝子組み換え作物を取り扱うカルタヘナ議定書第6回会合(COP-MOP6)と遺伝資源の衡平なアクセスと利益配分を取り扱う名古屋議定書第1回締約国会合(COP-MOP1)が同時開催されました。これら全ての日程を含めると9月29日から10月17日までのおよそ3週間に渡る会議になります。

●生物多様性と持続可能な開発

リオ+20以降のSDGs/ポストMDGsの流れの影響を強く受けて「持続可能な開発」がCBD-COP12のテーマに採用され、会議全体を通してこの言葉が何度も使われていました。また、合計で35ある議題の内の一つに「Biodiversity and Sustainable Development」という議題が組まれ、前述の愛知目標とPost-2015 Agendaを合流させるかというところについて具体的な議論がありました。

交渉の中では「(生物多様性条約は締約国に対して、)Post-2015 AgendaとSDGsに対して、生物多様性の保全と持続可能な利用の統合の必要性を認識し、それらの目標に関する議論への貢献や各締約国が生物多様性をこの目標に統合するよう促すことを要請する」という文言を採択することが提案され、多くの国がこの提案に同調しました。

また、その過程でアルゼンチンが伝統的知識について、フィリピンが先住民の権利について、といったようにそれぞれ国内において優先的であったり特徴的な関連分野であったりするものに対しての言及がされましたが、最終的にほぼ前述の文言として採択されました。

しかしながら、合流していくという全体の方向性は定まったものの、愛知目標が目標年を2020年に設定しているのに対して、現行のPost-2015案では目標年が2030年に設定されているなど、具体的に2つの目標をどのような形で合流していくかについてはまだ決まっておらず、詳細についてはこれから議論されていくものと思われます。

●UNDB-DAY

cop12_4生物多様性条約の特徴の一つとして、多様なセクターの参画があります。10月14日に、「国連生物多様性の10年(UNDB)」の取り組みをより強化しようという目的で開催された「UNDB-DAY」に参加しました。UNDBとは、2011年から2020年までの10年間を、生物多様性保全活動を精力的に行っていく10年にしていこうと国連が定めたキャンペーンです。

「UNDB-DAY」では、冒頭に生物多様性条約のブラウリオ事務局長、星野一昭環境省参与、涌井史郎UNDB-J(国連生物多様性の10年日本委員会)会長代理のあいさつから始まり、続いてUNDBの国内推進体制を整えた国として、ドイツ、中国、日本の事例が話されました。お昼休憩をはさみ、「セクターを越える巻き込みと連携」と題して、ユース、市民社会、自治体、企業の4つのセクターからのお話がありました。

夜には「UNDB-DAY」ハイレベルイベントとして、各国や国際機関の代表者から改めてUNDBの推進に向けた決意表明がなされ、終了後にレセプションパーティーが催されるなど、まさにUNDB一色の一日だったといえると思います。(右写真;ハイレベルイベントの様子)

「UNDB-DAY」は1日を通して、非常に有意義なイベントだったと思います。その理由としては、一つにこの愛知目標の中間年に当初からの10年スパンで物事を考える時間をもったこと、二つ目にそのような場を個別の国や条約事務局だけでなく、ユースやNPO、企業なども関わったマルチセクターで実現させたこと、最後にCOP12内の公式サイドイベンとして行った事で他国や他地域へ波及していったことなどが挙げられ、これらは愛知目標達成に向けて大きな一歩だと思います。

会議の結果詳細については、環境省のHPまたIUCN日本委員会でも、議論の内容をまとめていますのでぜひご覧ください。

(k.eguchi)