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第2回環境・開発勉強会「ポスト2015開発アジェンダと開発資金」
2015/01/24


第二回環境開発勉強会2014年12月10日、ポスト2015開発アジェンダの実行に際して検討が不可欠となる「開発資金」について考える勉強会(主催:動く→動かす(特活)アフリカ日本協議会)が地球環境パートナーシッププラザで開催されました。

ポスト2015開発アジェンダ。MDGsよりも幅広いイシューを網羅しながらも、その実行に不可欠なODA資金は減少傾向を見せています。今後の資金をどう捉え、確保していったらいいのでしょうか。講師は荒川博人氏(現住友商事顧問)。OECFやJBIC、世界銀行などでの豊富な国際金融経験があり、今春まで世界経済フォーラムのメンバーとして、ポスト2015開発アジェンダの議論の最前線にいらっしゃったからこそ分かる議論の内側や知られざる事情を織り交ぜてお話いただきました。

MDGsとSDGs、成り立ちの違い

まずはじめに、MDGsとSDGsにはその成り立ちに根本的な違いがありSDGsへの統合を考える上で、次の3つのポイントを念頭におく必要があるようです。

(1)トップダウンかボトムアップか。
MDGsはターゲットもシンプルであり、誰が見ても分かりやすいテーマでまとめられているが、実は理論的枠組みがないまま大きな政治的な力が働いて生まれた(トップダウン)。一方、SDGsは広範囲な領域をカバーし、多様なプレーヤーを巻き込み、丁寧なプロセスを経ながら進化してきた(ボトムアップ)。
(2)個別ターゲットか、ターゲットを含む社会全体か。
アジアに金融危機が起これば、アフリカにお金が行かなくなる、オイル価格の下落が起これば化石燃料の利用が増えて気候変動に影響がある・・・。価値観が多様になり、物事が相関しあうグローバル化時代において、個別ダーゲットだけを見ていても物事は解決しない。SDGsとの統合で、ますます包括的に見ていくことが求められる。
(3)努力目標(political will)か、法的拘束力(legally binding)か。
MDGsは努力目標(political will)であるが、そこにSDGsを統合させる場合、例えば気候変動の要素を入れるのであれば、法的拘束力(legally binding)のあるものを組み込むことになる。つまり、温度差の異なる議論、異質のものを同じ土俵に上げて、一つのルールに統合していくことの難しさがある。

その上で、荒川氏によると、資金に対する基本的な考え方として、2つのポイントを強調していました。
1. 資金還流のメカニズムの整備
開発資金の基本的な考えは究極的には自国での調達するもの(広義には貯蓄)とし、そこをモービライズ(還流)させることが重要である。実際に、お金の絶対値はあり、還流できていないとすれば、それを活かす仕組み作り、還流させる人材育成が必要である。
2. 保証(ギャランティ)の付与
直接的経済支援とは異なるが、途上国や新興国への投資に不安がつきものの政治リスクと信用について保証(ギャランティ)をつける。これによって、民間投資が促進される。

日本に求められる力とは

荒川氏は講演の最後に、各国首脳が集まる場で、どう主導権を握れるか、どう自国の主張をしていくか、いわゆるパワーゲームが繰り広げられる中で、日本がどう存在感をアピールするのかといった問題提起をしていました。

影響力のある欧米の特徴として、1つは政治家、官僚、学者であり、かつマスメディアに影響力もあるというスーパージェネラリストの層が厚い、2つめにアフリカに進出している欧米の企業は、今では、特定の産業セクターにまで口出しするようになっている、といった点を上げていましたが、この点だけを見ても、明らかに日本は遅れをとっており、日本としての影響力、発信力を高めるには様々なハードルがありそうです。

日本は“魚を釣る”高度な技術なり道具は持っていますが、それを“漁業”全体にまでパラダイムシフトを起こそうという斬新な発想に結び付けられるか、また収集した情報、専門知識などを単体ではなく、それらをまとめてホリスティックに物事を見ていけるか。今後、SDGsが決まっていく過程で日本がリーダーシップを発揮する場面では、必ずそうした総合力が求められてくるようです。(s.shirai)