サステナビリティCSOフォーラム

HOME > コラム寄稿 > [サステナビリティ紀行]ジェンダーと持続可能性を考える―北京+20を迎えて

[サステナビリティ紀行]ジェンダーと持続可能性を考える―北京+20を迎えて
2015/01/24


語り手:北九州サスティナビリティ研究所 織田由紀子さん

●2015年は1995年に開催された北京女性会議から20年となります。これはどのような会議だったのでしょうか。

北京女性会議とは1995年北京で開催された国連の第4回世界女性会議のことです。女性に関する国連の会議は「平等・開発・平和」をスローガンに、1975年以降5年毎に開催されてきました。
北京女性会議の成果は「行動綱領」と言いますが、これは画期的なものでした。「ジェンダー」という言葉が使われ、女性に対する暴力の問題やリプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)が女性の権利とみなされたからです。
ジェンダーとは、生物学上の分類による性別とは異なる、社会的・文化的に示された役割にもとづく性別のことです。「男性/女性だからこうしなくてはならない」といったジェンダーに基づく制限的なものの見方が、人びとの生き方を縛り、男女平等の実現を妨げていることが示されたのです。

●持続可能な開発とジェンダーを考える上で、どのようなことが課題/論点となっていますか。この20年を振り返り、どのような発展/進化があったのでしょうか。

リオ+20での女性メジャーグループの会合風景持続可能な開発と女性の関係は1992年の「アジェンダ21」に遡ります。そこでは、女性は持続可能な開発の重要な担い手として位置付けられました。
その後ジェンダー平等が加わり、今日、持続可能な開発をすすめるに当たって、ジェンダー平等が大切という考えに反対する人は少なくなりました。これは、この20年間の成果といえます。
しかしながら、今でも、「持続可能な開発とジェンダー平等の達成とは、それぞれ並列的に行われるべき」と受け止めている人は、少なくありません。これは、持続可能な開発は、男女平等や女性の権利とは直接関係がない「経済や環境の問題」と見ている人がまだに多くいるからです。
また、宗教的勢力などに配慮して、リプロダクティブ・ヘルスを女性の権利と見ることに反対する国も依然としてあり、この分野の国際的合意もあまり進んでいません。(右写真:リオ+20での女性メジャーグループの会合風景)

●ジェンダー平等の観点から、SDGsにどのようなことを期待しますか。

2014年9月に国連総会で採択されたOWG(オープンワーキンググループ)の結論(※)は、今後のポスト2015開発アジェンダ/SDGsの中核となるものですが、そこでは、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントが独立の目標として位置づけられました。
ジェンダー平等は持続可能な開発にとって欠かせない大切なものだということが、形で示されたのです。ポスト2015開発アジェンダ/SDGsにおいても、ジェンダー平等が持続可能な開発にとって欠かせないことが明示され、この考えが世界に広く認識され、実施されることを期待します。

日本に生きる私たちは、持続可能な社会と女性について、どのような視点を持つことが必要でしょうか。

持続可能な社会とは、その構成員が、性だけでなく、人種、民族、宗教、年齢などのさまざまな違いによって差別されることなく、誰もがその潜在能力を開花できる社会のことです。
人びとが思いを実現させ楽しく生きられる社会でなければ、たとえ経済的に豊かになり、自然環境保全が達成されても、持続可能な社会とはいえません。そのような社会をつくるために、女性も男性も貢献すべきだと思います。

※(参考)
持続可能な開発目標に関するオープン・ワーキング・グループの提案についての序論(IGES仮訳)


織田由紀子織田由紀子(おだ ゆきこ)
北九州サスティナビリティ研究所研究員。(財)アジア女性交流・研究フォーラム主席研究員、日本赤十字九州国際看護大学教授、JICAタイ国人身取引被害者保護・自立支援促進プロジェクトチーフアドバイザーを経て、2011年7月より現職。専門分野はジェンダーと開発、環境。2012年6月国連持続可能な開発会議(リオ+20)政府代表団顧問。「地球温暖化対策のジェンダー視点からの分析」『アジア女性研究』第15号(2006)など。