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[サスティナビリティ紀行]生きものと人が共存できる農業を目指して
2017/01/28

日本人の主食、米をつくる水田環境も、近代化と共に大きく変化しました。コンクリートで整備された水路が設置され、便利で効率的な農業ができるようになった一方で、田んぼから生きものたちが姿を消したのです。
今回は、滋賀県野洲市で農業を営みながら、いきもの豊かな水田環境を取り戻そうと活動する、せせらぎの郷/須原魚のゆりかご水田協議会の掘彰男さんにお話を伺いました。

い-きもの観察会
田んぼでのいきもの観察会

総合開発がされる前と後で、琵琶湖周辺の水辺環境はどのように変わったのでしょうか。

かつて琵琶湖周辺の須原の田んぼは、水路を通じて琵琶湖の固有種のニゴロブナなどの魚がやってきて、産卵・繁殖して琵琶湖に帰っていく生命の循環を担う「生命のゆりかご」のような存在でした。昭和40年頃まで、子供たちはお母さんに「おかずを取ってきて」と言われて田んぼに網を持ち「おかずとり」に行っていました。

しかし、利便性を求める時代のなかで、圃場整備などで水路と田んぼの連続性が損なわれてしまいました。一方田んぼでの農作業の効率化を図るため湿田は乾田に切り替えられ、圃場整備事業等で利便性はよくなりました。

「魚のゆりかご米」は、どんな想いによって、どのような連携から生まれたプロジェクトなのですか。

もう一度「田んぼに生きものの賑わいを取り戻そう」との強い思いをもった地域農家が集まり、魚が田んぼに上りやすいように、排水路に魚道つくりを始めました。こうした「魚のゆりかご水田」の取組を初めて10年になります。今では生きもので賑わう田んぼに集まる方々が毎年200名以上になり、取組の輪は農家だけでなく都市住民や大学生などにも広がってきました。

「魚のゆりかご米」の活動は、数々の賞を受賞するなど、外部からもとても注目されています。今後の展望をお聞かせください。

「魚のゆりかご水田米」づくりについてはより安全で安心な農産物の提供と農薬は魚毒性のもっとも低い除草剤を使用するなど、安全で生きものにやさしい水田米を消費者に提供することにしています。また24年産米は、日本穀物検定協会より食味検査において、総合評価として魚のゆりかご水田米が「特A」として評価され、生態系に配慮した水田づくりへの試みがお米の味にも反映する結果となりました。

稲刈り体験
秋には、稲刈り体験を楽しんでもらう

また、一昨年からは、「無農薬・無化学肥料のお米づくり」をスタートしたことで、一層関心を持っていただく消費者の輪が広がり、県外からも「雑草取り」に来てくれる大学生や環境NPOも来られ、暑い夏の草取り作業が、都市住民の方々と一緒に作業することにより、農家の励みにもなり、楽しみながら作業ができるようになりました。

六次産業化として、平成26年4月から地域が一丸となって「酒造りで地域を元気に」と、魚のゆりかご水田米で作った純米吟醸酒 「月夜のゆりかご」が出来上がりました。

今後は「魚のゆりかご水田米」及び「月夜のゆりかご」のブランド化の定着を図るため、毎年実施している大都市での収穫感謝祭を中心としたPR啓発活動及び交流活動を深め、経済的にもより一層自立した、持続可能な取組を目指したいと思っています。

琵琶湖から水路を通じて田んぼに魚が上ってきて、産卵・成育し琵琶湖に帰っていく「生命のゆりかご」のストーリーを多くの方に広め、このような価値を次世代に引き継ぐための活動を始めたいと思っております。

関連サイト
せせらぎの郷

堀彰男さん堀 彰男(ほりあやお)
せせらぎの郷/須原魚のゆりかご水田協議会代表。農家。「地域の水田環境を守り美しい琵琶湖を取り戻したい」と、「魚のゆりかご水田」プロジェクトを立ち上げ滋賀県野洲市を拠点に活躍。「魚のゆりかご米」のプロジェクトは、2016年11月に生物多様性アクション大賞「審査委員賞」を、同12月にグッドライフアワードの「環境大臣賞優秀賞」を受賞した。