[サステナビリティ紀行]教育の力で、環境問題を解決する
2024/01/23
持続可能な社会をつくるために、それに向けて取り組む「人」が重要です。あらゆる社会課題や環境問題を解決するためにも、問題を理解し、考え、人に伝え、行動できる人が欠かせません。特に自然とのふれあいや対話を通じた教育に長くかかわってきた公益社団法人日本環境教育フォーラム(JEEF)の垂水恵美子さんにお話を伺いました。
質問1:環境教育に関する NPO として長く活動してこられた JEEF さんですが、まず団体概要や特徴、最近取り組んでいる主な活動などを教えてください。
日本環境教育フォーラム(JEEF)は、体験と対話を重視した環境教育で、持続可能な社会づくりを担う人材を育成するNGOです。企業や行政、自然学校、NPO/NGO、教育機関、研究者など国内外の多様なパートナーとの協働による環境教育を実施し、2022年に団体設立30周年を迎えました。特に近年は、国連生物多様性条約COP15で採択された新たな世界目標「ネイチャーポジティブ」の取り組みを強化しています。
質問2:毎年に開催されている清里ミーティングが今年度は昨年12 月、テーマは「これからの日本型環境教育の提案〜2030 ネイチャーポジティブ〜」とのことでした。清里ミーティングの紹介と、今回どのような会合となったか、お聞かせください。
清里ミーティングは環境教育を共通のキーワードとしたさまざまな業種・世代の参加者が対等に意見交換し、考えや理解を深め、新しいアクションにつなげていく2泊3日の合宿型イベントです。1987年の開始から2023年で37回目。コロナ禍でのオンライン開催を経て4年ぶりの山梨県清里のキープ協会清泉寮開催となりました。
「ネイチャーポジティブ」の採択以降、その達成に向けて動き出している、あるいはこれから動き出したい多様なセクターが一堂に会し、会場のあちこちで活発な意見交換を交わしながら、同じ目標に向かって足並みを揃える機会となりました。
*参考:https://www.jeef.or.jp/blog/kiyosato2023report/
質問3:SDGs に関しては、環境教育の視点からはどのような期待や課題があるとお考えですか?清里ミーティングなど事業の中で、SDGs 達成に向けたポイントやヒントなど、ありましたらご紹介ください。
JEEFの思う環境教育は「教育の力で、環境問題を解決する」ことです。1人でも多くの行動変革を求めるには、危機をあおるだけでなく、「楽しい」と思ってもらうことが大事だと考えています。
SDGsもネイチャーポジティブも、私たち環境NPOがこれまで取り組んできたことの延長線上に目標の達成があります。必要なのは時代のニーズや価値観に合わせたアップデート。強みを見直し、目まぐるしく変化する社会の中でよりたくさんの人が興味を持ってくれる言葉選びやプログラムを考え、これまで関わったことのない分野と協働する。1人でも多く巻き込んで、みんなで活動していくこと、そしてそれを続けてもらうために「楽しい」と思うポジティブな気持ちが必要だと思っています。
質問4:教育と、パートナーシップの力で SDGs 達成もできたらと思います。パートナーシップの重要性や課題について、普段から思うことや心掛けていることなどについて教えてください。
環境問題は他の社会課題と結びついているので、「環境×○○」と掛け合わせて複合的に取り組んでいくこと、そのために他分野のパートナーと協働することが重要と考えています。清里ミーティングはそれを促す場でもあり、実践者が多く集まるので、参加者自身のモチベーション向上やネットワークの構築に加え、新しいコラボレーションやムーブメントが生まれる場づくりを心掛けています。
一方で、環境教育を実践する私たちが異なる分野と対話する場がまだまだ足りないと指摘もありました。JEEFとしても自然学校等が企業や行政、教育機関、他まだつながりのない分野と出会う場をもっと作っていかなければと思いました。
参考サイト:
▼清里ミーティング
https://www.jeef.or.jp/activities/kiyosato/
▼ネイチャーポジティブ宣言
https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/j-gbf/naturepositive/
▼日本環境教育フォーラム
https://www.jeef.or.jp/
プロフィール:垂水 恵美子(たるみ えみこ)
公益社団法人日本環境教育フォーラム
大学時代、自然学校や日本環境教育フォーラムでのインターンを経て、2012年4月より現職。清里ミーティング等の環境教育事業、機関誌「地球のこども」編集、SNSを担当する。