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[サステナビリティ紀行]湿地保全に関する国際的な動き(ラムサール条約第15回締約国会議のポイント)
2025/07/16

2025年7月23日から7月31までの期間、ジンバブエ・ビクトリアフォールズでラムサール条約第15回締約国会議(Ramsar COP15)が開催されます。
IUCN-Jのユース国際会議派遣支援(国際経験継承事業)を受けて、ラムサールCOP15に参加することになった佐々木美佳さんに、今回の会議の議論のポイントや各国・地域で必要な取組や、今後、ユースとしてどのように取り組んでいきたいか等についてお話を伺いました。

質問1:今回ラムサールCOP15に参加したいと思った動機について、主な活動の紹介とともに教えてください。

Team SPOONという東アジアを生息地とするクロツラヘラサギを介して、その生息地を守る人々を繋ぐ活動団体に所属し、個体識別の足環を模した指輪をキーアイテムに、人、自然、社会を繋ぐ活動を行っています。

韓国・カンファ島のクロツラヘラサギ


活動をする中で、まずは純粋にこの素晴らしい湿地と、そこを大切に想う人たちの眼差しをより多くの人に伝えたいと思ったことが最初の動機です。さらに、国境や行政レベルを越えて、生き物がつくるフライウェイ(渡り性の水鳥が行き来するルート)の圏域で人々が繋がる重要性を意識してきた経験から、自分自身が一若者として意思決定の場に参画するだけでなく、その場に来ることができない年少の子どもたちや人々の声を集め、声なき生き物や自然(Non-human stakeholders)を代弁し、意思決定する大人へ橋渡しをしたいという気持ちが芽生えました。
COPでは、国際的な湿地保全の意思決定プロセスや国際的な合意形成を学び、現場でしか味わえないロビーイングの空気を感じ取りたいと思っています。

質問2:COP15で注目しているテーマやサイドイベント等について教えてください。

前回のCOP14で採択された決議「 XIV.12 ユース(youth)を通じたラムサールの連携の強化」が「Doc.23.19 若者のエンパワーメントと統合に関する決議案」としてどのように深化し、財政的支援が担保されるのかを特に注目しています。
また、今回で集大成を迎えるCEPA(コミュニケーション、能力養成、教育、参加、普及啓発)の決議も理解したいと思っています。サイドイベントやブース展示での交流から自分たちの活動に活かせるCEPAのアイデアも発掘しに行きたいです。
豊富なサイドイベントはどれも興味深く全部行きたいくらいですが、特にフライウェイパートナーシップやYEW(Youth Engaged in Wetlands)の発表は注目しています。

質問3:COP15参加に向けて、事前学習・準備をされたと伺っています。どのような準備をされたのか、その中で気づいたことや印象に残っていることはどのようなことですか。また、これからの活動のヒントや参考なることはありましたでしょうか。

国際経験継承事業のメンターのラムサール・ネットワーク日本の皆さまから、ラムサールCOPの歴史や国際会議の基本的設えなどのレクチャーを受け、気になる決議案の翻訳を行いました。印象に残っていることは、ラムサール条約は、他の国連条約と違って、草の根の人々による国を越えた水鳥・湿地保全協力の必要性の認識をもとにNGOの提案から生まれた国際条約であることです。
会期中は、国同士の本会議と並行して進む、市民社会の国際連携の様子にも益々注目したいと思いますし、特に毎朝行われるWWN(World Wetland Network)の議論への参加を楽しみにしています。
また、注目している決議が採択された場合は、今後の活動を推し進める根拠として、ぜひ活用していきたいと思っています。様々なレベルの人が入り混じるCOPだからこその、対話の機会も狙いたいところです。

フライウェイ子ども交流会@韓国・カンファ島で船の上から中継を行う様子

質問4:湿地、生物多様性の保全など、COPで議論されている内容を各国、地域で実行していくためにはパートナーシップが欠かせません。普段から思うことや団体で心掛けていることなどについて教えてください。

湿地はそれぞれ固有の場所に存在するという特徴から、その保全には、現場を知る地域の人々と、法律や予算に関わる行政双方の協力が不可欠で、さらに、国際的な推進も重要です。
私たちは、顔の見える関係性を大切に、各地の湿地を繋げながら、人、生き物だけでなく、文化のつながりも含めて、心に触れる活動にすることを心掛けています。誰しもがどこかの流域で水や生き物の恵みを受けて生きていること、湿地の問題を自分事と捉えられるような語り掛けを目指し、湿地や鳥が好きな人だけでなく、公正で平和な社会を求めるすべての人にとって湿地が関係のある場所であることを伝えていきたいと思っています。Ramsar Familyとして、様々なステークホルダーによるシナジーが生まれることを期待します。

 
プロフィール:佐々木美佳
佐々木美佳Team SPOONの事務局メンバー。世界で約500人の会員に向けた日報の配信や、Asian Bird Fairの出展、フライウェイ子ども交流会の運営を通して、大切な生き物や風景に出会い、それらを守る人々と繋がる喜びを味わう。琵琶湖畔で生まれ育った背景から、湿地への思い入れは強く、大学ではランドスケープデザインを学び、渡り鳥の市民科学を研究。現在は研究機関に所属し、気候変動問題や湿地保全に携わる。

■参考サイト
▼Team SPOON
https://teamspoon.wixsite.com/teamspoon
▼ラムサール条約第15回締約国会議(英語)
https://www.ramsar.org/meeting/15th-meeting-conference-contracting-parties
▼ラムサール条約と条約湿地(環境省HP)
https://www.env.go.jp/nature/ramsar/conv/index.html