[サステナビリティ紀行]SDGs達成に向けて、協同の力で未来をつむぐ
2025/03/12
国連は地域の人々への医療・福祉、働きがいのある人間らしい仕事の創出など、さまざまな分野でSDGsに貢献している協同組合を評価し、その認知の向上と協同組合の振興のために、2025年を国際協同組合年(International Year of Cooperatives:IYC)に定めました。こちらに関わっている日本協同組合連携機構(JCA)の青木覚さんにお話しを伺いました。
質問1:協同組合の取組は世界各地でSDGs 達成に貢献していると伺っています。たくさんの関連組織があるようですが、世界的な協同組合の概要と、国内の概要、JCA について教えてください。
世界には約300万の協同組合と12億人の組合員(組織の意思決定や運営に参加する方)がいます。農協や生協のほか、旅行・住宅・エネルギーなどあらゆる分野に協同組合が存在しています。こうしたことから、世界中の協同組合を代表する国際協同組合同盟(ICA)は、世界最大のNGOの1つと言われています。
一方、日本には4万を超える協同組合があり、延べ1億人が組合員となっています。JCAは、日本の多くの協同組合が参加する連携組織として2018年に設立されました。政策提言や広報、教育・研究、協同組合間の連携促進などを通して、地域のよりよいくらし・仕事づくりへ貢献することを目的としています。

ICAの世界会議で紹介された日本の協同組合の様子
▼協同組合の概要
https://www.japan.coop/pr/means.php
質問2:協同組合が大事にしている考え方や精神は、SDGsの理念にとても近いとのことです。
どのような点に共通点があるかなど、ご紹介ください。
SDGsの17のゴールには、貧困・生産者や消費者の責任・平和など様々ありますが、これらは協同組合が長きにわたり取組んできた事業や活動と密接な関わりを持っています。例えば、食の安全確保やエシカル消費、核兵器廃絶の取組はこの一例です。
また、「誰一人取り残さない」というSDGsのスローガンは、協同組合が大切にしている「一人は万人のために万人は一人のために」という想いと重なるものです。さらに、協同組合が大切にしている価値観などをまとめた協同組合原則の中には「地域社会の持続可能な発展(Sustainable Development of Their Communities)のために活動する」という言葉が盛り込まれており、ここにもSDGsと同じ言葉が使われています。
▼協同組合とSDGs
https://www.japan.coop/wp/publication/6906

協同組合と多様なセクターがパートナーシップで食と環境を守る取組事例
(岡山県内で排出されるカキ殻を100%リサイクルして農畜産物の生産に活かす取組)
質問3:2025年に全国でいろいろなキャンペーンなど取組をされるとのことですが、誰でも参加できることなどありますか。また、IYCの取組みで大切にしていることはありますか。
7月の第1土曜日は協同組合の国際デーです。今年の7月5日(土)は、東京国際フォーラムで様々な協同組合と協力団体が集合して活動を紹介するイベントを開催します。また、大阪万博では、日本とイタリアの協同組合が連携した企画を準備しています。誰でも参加して楽しむことができますので、ぜひお越しください。また、全国の協同組合でもフェスティバルやコンサートなどのご当地企画が予定されています。
25年のIYCは、SDGsと協同組合の取組みをお知らせするきっかけの1つだと考えています。SDGsの達成に向けて、IYCが終了した後の26年に何を残すことができるのか考えて行動することが大切だと思っています。
質問4:協同組合内でのパートナーシップ、協同組合以外のステークホルダーとのパートナーシップなどで大事と思う点、心がけている点などあれば教えてください。
ひとえに協同組合といっても、その歴史や文化は異なります。また、得意分野も異なっています。だからこそ、お互いに学び合い・補い合うことが大切だと考えています。これは、協同組合以外のステークホルダーの皆さまとパートナーシップを結ぶ時にも共通しています。協同組合のことを知っていただきたいですし、私たちも多様なセクターのことを学び、連携していきたいと考えています。
こうした想いから、IYCはSDGs市民社会ネットワーク(SDGsジャパン)をはじめとする社会や地域の様々な課題に取り組まれている皆さまにも実行委員として参画いただき、ともに取組むこととしています。IYCをきっかけに、パートナーシップが一層広がることを願っています。
▼IYC2025特設サイト
https://www.japan.coop/iyc2025/
プロフィール:青木覚
日本協同組合連携機構(JCA)連携推進マネージャー/日本コープ共済生活協同組合に入協後、JCAへ赴任。
中四国エリアの協同組合を中心に協同組合間連携の支援を行っている。SDGsジャパンとともに公開講座「SDGs市民カレッジ特別講座」を企画。SDGsの啓発・普及のために協同組合とNPOの若手職員が協力した。趣味は国内外の協同組合の商品を食べ歩くこと。