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[サステナビリティ紀行]北京+30 ジェンダー平等の実現への道はいま
2025/09/19

1995年の「第4回世界女性会議(北京会議)」の開催30周年を迎え、今年3月に行われた第69回国連女性の地位委員会(CSW69)(*注1)では「北京宣言・行動綱領」の実施状況について世界的なレビューが行われたほか、9月の国連総会では北京+30記念ハイレベル会合も開催されます。

北京会議5周年からNGOの立場として「北京宣言・行動綱領」などの実施状況を見てきたJAWW(日本女性監視機構)副代表・事務局長の小林三津子さんに、北京+30を迎えてジェンダー平等の実現に向けたCSW69での議論や課題等についてお話を伺いました。

(*注1)国連女性の地位委員会について(内閣府男女共同参画局):https://www.gender.go.jp/international/int_kaigi/int_csw/index.html
 

質問1:これまでに長年CSWを中心として多くの国際会議に関わってきたと聞きました。主な活動やその動機などについて教えてください。

JAWWの前身は北京会議から5年後の女性2000年会議に向けて活動した「NGOレポートをつくる会」です。「つくる会」は役目を終えて解散しましたが、新たに北京+10に向けて2001年にJAWW(日本女性監視機構)が設立されました。以来、北京+10、+15と節目ごとにNGOレポートを作成するとともに、毎年CSWに参加しています。
CSWでは女性の課題に取り組む活動をしている他のNGO(国際婦人年連絡会、国連NGO国内女性委員会)と外務省の国連代表部との共催で、2009年以降毎年サイドイベントを実施しています。
▼JAWWが行っている活動の詳細
 https://jaww.info

2015年8月 JAWW誕生15年目
前列右から顧問中村道子(故人)、第3代代表・田中正子(故人)、第4代代表・織田由紀子
2列目左が第2代代表・橋本ヒロ子、後列右から2人目が現代表・浅野万里子

2012年3月 CSW56サイドイベント「災害・復興とジェンダー平等―東日本大震災と津波」
 左から3人目が初代代表、原ひろ子(故人)

質問2:CSW69(北京+30)に向け、日本のNGOとしてレポートを発表されました。これまでの国内での取組や課題について教えてください。

『NGOレポート 北京+30に向けて』(日本語版・英語版)を2024年に発刊しました。北京行動綱領が定める12領域およびJAWWが独自に設定している10領域を加えた各領域について、特に北京+25以降の国内の達成状況や課題を中心にまとめたもので、国内の勉強会や国内外のアドボカシー活動にも活用されています。執筆をお願いした各領域の専門家やNGOの方にはボランティアに近い形でご協力いただきました。限られた紙幅ですが、日本のジェンダー平等の全体像を網羅した資料であると自負しております。
なお、発足当時からの方針として、「NGOレポートの作成に当っては、各論併記を原則とする」と会則に明記しています。
また、毎年CSWに向けてその年の優先テーマ(*注2)についての勉強会や報告会を開催しています。JAWW会員以外の方でも参加できます。
▼『NGOレポート 北京+30に向けて』(日本語版)
 https://jaww.info/news-detail.php?id=130

(*注2)優先テーマとは各回のCSWで議論されるテーマのこと。議論の成果は「合意結論(agreed conclusion)」として採択される。

『NGOレポート 北京+30に向けて』(日本語版)

質問3:今回、CSW69にて北京宣言・行動綱領の採択30周年を記念して世界的なレビューが行われたと聞きました。その主な結果や今後の展望などについて教えてください。

北京会議から30年を経て、法制度の改革や女子教育の普及など様々な進展がありました。しかし、依然として差別的な法制度も残っていますし、労働市場における不平等も解消されていません。女性に偏るケア労働が社会的に正当な評価を受けていないことや、複合的な差別への視点を持たれることも課題です。30年前には見られなかった新たな問題も現れていて、例えば急速に深刻化する気候変動の女性への影響や、デジタル空間での性暴力等が重要な課題として挙がっています。これらの解決に向けて、国連では市民社会との連携を強調しています。特にユース世代への期待が大きいようです。
CSW69には日本からも多くの若者が参加し、帰国後には有意義な報告会が行われています。頼もしいと思います。

国連本部の総会ホールで行われたCSW69
~アントニオ・グテーレス国連事務総長による開会宣言
(2025年3月10日 国連本部)

質問4:女性は「アジェンダ21」で定めるメジャーグループの一つでもあり、国際的な連携や国内におけるステークホルダー間のパートナーシップにおいても重要な役割を担っていると思います。連携やパートナーシップにおいて普段から思うことや心掛けていることなどがあれば教えてください。

国際的にはAPWW(Asia Pacific Women’s Watch, アジア太平洋女性監視機)と連携して活動しています。
国内では先に挙げた2つのNGOの他に、ジェンダー平等を目指す団体とはできるだけ協調していきたいと考え、SDGs市民社会ネットワーク、その他のネットワーク組織にも参加しています。北京+30のNGOレポート作成にあたっては、できるだけ若い研究者やNGOの方にお願いするという方針をとりました。若い世代とともに活動することは、最重要課題であると考えているからです。

 
プロフィール:小林三津子(こばやし みつこ) Ph.D(比較ジェンダー論)
小林三津子2009年よりJAWW役員、事務局長を経て2023年~現在 JAWW副代表兼事務局長。
2021年~現在 清瀬市男女共同参画センター勤務。2019年~2020年 電気通信大学男女共同参画・ダイバーシティ推進室勤務。