[サステナビリティ紀行]生物多様性条約第16回締約国会議CBD-COP16とその周辺の動き
2024/11/22
11月1日までコロンビアのカリという町でCBD-COP16が開催されました。
GBF(昆明・モントリオール生物多様性枠組)の実施をモニタリングする枠組みや資金問題、先住民や地域社会の参画に関する事項など、最終日まで議論が続いたとのことです。メディアの持つクリエイティブな力を活かし、野生生物の保全に取り組む「Rooting Our Own Tomorrows (ROOTs)」の、安家さんにお話を伺いました。
質問1:今回COP16に参加されたのは、どのような動機やミッションからでしょうか。主な活動の紹介とともに教えてください。
ROOTsは「野生生物を守りやすい社会」の実現を目指し、違法かつ持続不可能な野生生物取引が止まる仕組みづくりを進めています。COP16への参加は、国際交渉の動向を把握しつつ活動を国際的に発信する重要な機会でした。また他国や他団体の取り組みを学び、新たな方向性を探ることも目的です。特に、BBCが開催したイベントではクリエイティブな方法で生物多様性保全を促進する事例が紹介され、非常に示唆に富むものでした。こうした多様な視点との出会いを通じ、COPの意義を改めて実感しました。
質問2:今回のCOP16の主なトピックや、関連会合で話題になっていたこと、注目していたテーマやイベントについて教えてください。
持続可能でない違法な野生生物取引は種の絶滅や外来生物の侵入を引き起こし、生物多様性の損失を加速させます。COP16では「野生生物の持続可能な管理(Sustainable Wildlife Management)」が重要な議題となりました。その中で「需要の増加が野生生物に与える負の影響に対処する」必要性が政府交渉の文言に明記されました。この点は需要の抑制を目指すROOTsの活動とも深く関連しています。日本は野生生物の需要大国であり、その需要が密猟や過剰採取を助長する要因となっています。この議論を通じ、私たちの活動の重要性が改めて確認され、今後の方向性にも大きな示唆を得ることができました。
質問3:会合に参加し、様々なステークホルダーの方とお話しする中で気づいたことや印象に残っていることはどのようなことですか。また、これからの活動のヒントや参考なることはありましたでしょうか。
これまで「需要削減」に関する取り組みは主に一般市民向けのキャンペーンが中心でしたが、ROOTsのメディアへの働きかけを通じたアプローチが新しい視点として注目されました。「需要を助長する報道」が消費者行動に与える影響について議論が深まり、多くのメディア関係者が野生生物や自然を適切に描くことの重要性を共有してくれました。特に、ROOTsの活動がこうした課題解決に貢献する意義が認識されたことは非常に印象的でした。
質問4:生物多様性保全とパートナーシップはSDGs達成に欠かせません。GBFやSDGs達成に向けたパートナーシップに関して、普段から思うことや団体で心掛けていることなどについて教えてください。
SDGs達成には、生物多様性保全と多様なパートナーシップが欠かせません。ROOTsは、メディアと市民が果たすべき役割を重視し、野生生物そのものやその保全の重要性を正確に伝える取り組みを進めています。特に、市民が「野生生物が野生でいる魅力」を理解することが重要です。メディア企業を対象に設置したイニシアチブを通じ、情報発信の力を最大限に活用し、野生生物保全の意識を社会に広げていくことを目指しています。私たちは、この理念を基盤に、持続可能な社会の構築に貢献したいと考えています。
■参考サイト:
▼ウェブサイト:
https://www.roots-wildlife.org/
▼ステートメント:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000151027.html
プロフィール:安家 叶子(あけ かなこ)(理学博士)
Rooting Our Own Tomorrows (ROOTs)代表 他。
アフリカに生息する絶滅危惧種リカオンの研究を通じ、科学と地域社会の隔たりを痛感。現地NPOと連携して保全活動に従事。現在は研究機関や保全団体に所属し、地球環境や生物多様性保全に尽力。好きな生物を守りやすい社会を目指し、ROOTsを設立。