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[サステナビリティ紀行]SDGサミット2023レポート
2023/09/28



(国際連合本部ビル)

2023年はSDGs達成の2030年までの中間年として重要な節目の年です。国連総会ハイレベルウィークの中で、9月18日-19日には、“SDGサミット“が開催され、「達成は危機的な状況にある(The achievement of the SDGs is in peril)」として、今後取るべき行動についての「政治宣言」が採択されました。SDGサミットを前に、SDGs市民社会ネットワークのメンバーとして、国連等でのSDG関係の諸会議に参加したJANIC/THINK Lobbyの若林秀樹さんにお話を伺いました。

質問1:今年の“SDGサミット”の特徴はどのようなものでしたか。SDGsだけでなく、気候変動や世界的な自然災害、大地震、ウクライナ情勢など国際的に深刻化課題が絶えない中ですが、今回集まった組織や人たちの関心や注目トピックなど教えてください。

SDGsは、一部の目標を除いて著しく不十分な達成状況にあり、その中でSDGサミットを迎えることになりました。目標の中には、取り組みが行き詰っている、もしくは後退しているものもあります。SDGサミットを機に、国際社会は、これまでの遅れを取り戻し、2030年に向けて、正しい軌道に戻すことが求められていましたが、何が何でも達成するという強い意思までは、残念ながら様々な会議での議論や「政治宣言」を通じては伝わってきませんでした。やはり食糧危機、経済格差、気候変動、途上国の厳しい財政状況、ウクライナ情勢等の複合的危機の中で、構造的なグローバルノースとサウス、途上国を中心に、国内での政府と市民社会の対立も背景にあると思います。
国連本部近くでも、化石燃料使用の中止や、気候変動の取組の強化を求める、「グローバル気候マーチ」に、若者のみならず、多くの高齢者が参加していたのはとても印象的でした。

質問2:ハイレベルウィークと称して、資金調達や国際保健に関するハイレベル会合や気候野心サミットも開かれました。サイドイベントや公式プログラムなどで参加された会合やイベントについて、概要や感想など教えてください。現地参加ならではの印象など、どのような感想を持たれましたか。

今回の国連総会はSDGsを中心に、パンデミックへの対応、ユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)、結核という3つの「ヘルス」に関連するハイレベル会合が開催されたのが特徴的であり、さらに大きな課題となっている、開発のための資金、気候野心サミットも開催されました。
特に、グテーレス事務総長は、年間3000億ドルの資金が2030年までのSDGs達成に必要だと訴えていますが、開発、環境、ヘルス、教育等、それぞれの分野で、「資金の急増(Stimulus)」を求める声が聞こえてきました。


(SDG Action Weekend プレナリー)

質問3:CSO(市民社会組織)ではどのような会合やミーティングがありましたか?注目すべきテーマや日本の市民社会にとって活動のヒントや参考になるような情報がありましたらご紹介ください。

国連本部で開催されたSDGsアクションウィークエンドでは、政府、CSO、国際機関、専門家ら集まり、64のセッションが開催されました。市民社会を中心とした、グローバル・ピープルズ・アッセンブリー(GPA)でも、2日間、様々なセッションが開催され、それぞれの課題において、社会正義(ソーシャル・ジャスティス)、社会保護(ソーシャル・プロテクション)を求める声が強かったと思います。日本からのCSOs参加者やユースも、核廃絶、ヘルス、気候変動、教育、ジェンダー、子ども等、様々な分野でそれぞれの立場から議論に参加されていました。また世界的に市民社会スペースの縮小が懸念される中で、開発途上地域のCSOは、持続な可能な社会の前提となる、基本的な自由と人権を保障するSDG16の取組を強化すべきであるとの主張も強かったと思います。

質問4:各会合などでパートナーシップの重要性については言及がありましたか?SDGs推進に向けたパートナーシップに関して、普段から思うことや心掛けていることなどについて教えてください。

SDGsに反対する人は誰もいませんし、政府のみならず、市民社会、ビジネス等、すべてのセクターの取組が求められています。しかし、それぞれの政府やセクターの立場によって、取りくむコミットの強さや、方向性が違うのも事実です。それは仕方がないことだと思いますが、だからと言って、これだけの深刻な課題を置き去りにすることはできません。そのためには、お互いが共通の目標、「誰一人取り残さない」に向かって、お互いの強み、特徴を生かして、協力していくしかありませんね。
最後に、今回の諸会議に参加して一番心に残った言葉で締めくくりたいと思います。” The SDG is not “checking in the box” but “our hope of people.”
自分なりに解釈すると、SDGは、表面的な数字(取り組み)をチェックして満足するのではなく、人びとの幸せのためにある」と。結構、重い言葉ですね。来年9月には、国連未来サミットに開催されます。共に頑張りましょう!

 

プロフィール:若林 秀樹 (わかばやし ひでき)
若林 秀樹特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター (JANIC)理事/THINK Lobby 所長。
国連グローバル・コンパクト・ ネットワーク・ジャパン理事。
アジア開発連盟(ADA: Asia Development Alliance)アドバイザー。
早稲田大学Life Redesign College (LRC)講師、國學院大學法学部兼任講師。
早稲田大学商学部卒業、ミシガン州立大院修士課程修了(農学)。ヤマハ(株)社員、同労組役員、電機連合・総研副所長、在米日本大使館経済班一等書記官(ODA担当)、比例区選出の民主党参議院議員として「次の内閣」経済産業大臣等を歴任。
米戦略国際問題研究所(CSIS)客員研究員、公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本事務局長などを経て現職。