サステナビリティCSOフォーラム

HOME > イベント > [開催報告]サステナビリティ円卓会議~ESDにおけるポストGAPに向けたユネスコ国際会合(コスタリカ)報告会~

[開催報告]サステナビリティ円卓会議~ESDにおけるポストGAPに向けたユネスコ国際会合(コスタリカ)報告会~
2018/09/4

持続可能な開発のための教育、ESDを推進する「Global Action Programme on ESD (GAP)」が始まって4年。2015年に採択された2030アジェンダでもESDの役割が示されました。
日本では地域のESD実践をサポートするため、環境省と文科省がESD活動支援センターを設置しています。
今回は、2018年4月にコスタリカで開催されたGAPのパートナー会合に参加した方からの情報提供を元に来場者の皆様とSDGs時代のESDの推進に向けた意見交換の場としました。

開催概要

〇日時:2018年8月23日(木)15時半~17時半
〇場所:地球環境パートナーシッププラザ
〇主催:(公財)ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)、(一社)環境パートナーシップ会議(EPC)
〇協力:(公財)五井平和財団、ESD活動支援センター、地球環境パートナーシッププラザ、関東ESD活動支援センター

プログラム

GAPパートナー会合に関する報告

<文部科学省 国際統括官付 田中洋美氏>

「ESDに関するグローバル・アクションプログラム(GAP)
~国際動向と国内ステークホルダーへの期待~」 >>>資料

 

ディスカッション「世界のESDと日本のこれから」

◆話題提供
① IGESシニアフェロー/東京都市大学教授 佐藤真久氏
「政策的支援(PN1)での検討報告~近年のユネスコ関連資料に基づいて」 >>>資料
② 五井平和財団 常務理事 宮崎雅美氏
「ユースのエンパワメントと動員(GAPパートナーネットワーク4活動報告)」 >>>資料
③ ACCU 教育協力部 プログラムスペシャリスト 若山洋子氏
「変容する学び(Transformative Learning)とホールスクールアプローチ」 >>>資料

◆話題提供者3名+コーディネーター尾山優子(EPC)による意見交換
<尾山>
・ 今はポストGAPをにらんでの動きという大きな変化の時。これから、パートナーネットワーク(PN)間の関わりや、PN以外のSDGsを担っていくステークホルダーとの連携を目指していくときに、できることのイメージや、PNメンバーへの期待について、感じていることを、コスタリカの雰囲気も踏まえてお話いただきたい。

<宮崎氏>
・ ユースがPNの各分野で貢献できることは多い。経験あるプロフェショナル層がユースを育てながら、PNの枠組みを超えて包括的な協働が生まれていくとよい。
・ 今後、広報、アドボカシー活動を強化していく上で、SNSを使うなどユースの発信力は非常に期待できる。

<佐藤氏>
・ PN間も、ESDに関わる人たちの間でも十分にコミュニケーションが取れていないのが現状。今後、PNを超えたネットワーク作成、2つの視点が重要。1点目は、ESDの中でも求める方向性が違うので初めから合意を求めないことが非常に重要。一緒に持続可能な社会という星を見ながらお互いが何をやっているかを学んでいく、ソーシャル・ラーニングそのもの。2点目は、お互いの力を持ち寄る協働が必要。
・ ESDには2つ配慮すべきことがある。1つはSDG4「質の高い教育」に対する貢献ツールとして。もう1つはSDGsの17のゴールに対して教育がベースとなる、基本的な機能を持つこと。17の目標の連携の中でもESDが求められている。

<若山氏>
・ PN2のこの数年間は非常にいい雰囲気で、始終ディスカッション内外で意見交換しているが、他のPNで何が起きているかは非常に見えづらかった。年次会合への参加の際、公式プログラムの外で他のネットワークに属している人とようやくコミュニケーションの機会ができる程度。ただ、そうしたやりとりから得る刺激やアイデアが非常に重要だと感じる。まさにそれが、佐藤先生がおっしゃった「合意を求めない」「同じ星を見ながら」というところなのかもしれない。

<尾山>
・ 協働でやっていくことの強さ、トランスフォーメーション=変容が大きなキーワードになっていて、同じ方向を見ながらも違うアプローチでESDを推進していこうとしてきた4年間であった。
・ 皆さんの中に経験、知識、ネットワークがかなり蓄積されており、それは5つの優先課題に定めて拡大してきたGAPの大きな成果だと強く感じた。これからはそれをSDGsのステークホルダーに提供していくフェーズだろう。今までの経験から、皆さんだったら何が一番提供したいポイントかを伺ってみたい。

<佐藤氏>
・ 相互の学びの連関をする必要がある。人によって意図するもの、関心があるものが違うが、個人も社会も変わらないといけない。必ず、伝えたいと思う人たちに対するつながりを持っていく。
・ 多様な捉え方があるという前提。意図するところが違ってもESDの幅を持つことにより、多様な人たちと一緒に仕事をしたり子どもたちと関わることもできる。

<宮崎氏>
・ 問題への関心のエントリーポイントが皆それぞれ違うので、それを手放しての協働は一時的にあっても、長続きはしないのが経験上。それぞれの取組が加速する関係性が築けた時は素晴らしい。そうでない場合でも、それぞれ自分がやりたいことを譲歩するのではなく、応援し合える関係は築ける。コミュニティは、違うことをやっていても応援し合える仲間だと、特にユースといると感じる。
・ ESDがSDGsにどのように貢献していくか。一つは、これまで通り個々の目標の達成に教育という要素で後押ししていくこと。もう一つは、SDGsというトータルな目標そのものをもっと皆に知ってもらい参加してもらうことを、教育の中に取り入れていくこと。
・ さらに、ESDはSDGsの個々のゴールのつながりの調整役になれる。それは今後、SDGsのコミュニティと協働していく場合でもESDが果たせる役割。

<佐藤氏>
・ SDGsは17あるが、それらはつながっている。SDGsを達成するときにESDのレンズが使える。ESDを物の見方と捉えるならば、SDGsに貢献する大きな役割がある。

<若山氏>
・ PNでは今、提供する素材を作っている。様々なプロジェクトで最終的なアウトプットとしてPolicy briefやVideoが出てくるが、それを活用する先に対話が期待される。
・ ACCUがサステイナブルスクール事業で提案・活用しているホールスクールアプローチでは、まず真ん中に据えるビジョンをステークホルダー全員で考えることから始める。共通理解に至る過程は中々難しいが、この擦り合わせの時間をサステイナブルスクール事業では非常に大事にしている。その過程自体が少しずつ成果を出してきて前に進んできている実感がある。
・ 座を突き合わせて擦り合わせていく作業、一つ一つの丁寧な過程、もっとリアルなところを提供していけたら、ESDに取り組み様々なレベルの実践者の方々に実感を持ってホールスクールアプローチ(または機関包括型アプローチ)でやってみようと思っていただけるのでは。

<尾山>
・ SDGsは17もあり、アプローチも色々ある。それをまず1つの認識、マストではないが何となく合意をしていこうというところからスタートしていいと。SDGsを必ずしも全部を同時に達成する必要はない点を理解するところからスタートすることが、大きな次への後継、知見なのかと。

<佐藤氏>
・ SDGsを達成しようとするなか、大半の人たちはあまり対話ができていない。専門家重視の考え方が大きいと対話が中々できない。どのように対話の魅力を感じさせながら、専門家のものの考え方をリスペクトできるのかということをやっていかないと、対話だけでは解決しない。

<尾山>
・ 経験値が少ないユースがいることで、発想が豊かになり、発信力が高まったる等、様々な効果があると思うが、ユースが他のPNで対話の扉を開いくなどの様子が見られたか。

<佐藤氏>
・ ユースの方が対話できているのかもしれない。PN1で行政の議論や政策の中に、対話の魅力をユースの力で発信してもらうことも1つの可能性としてある。

<宮崎氏>
・ ユースは対話の中からものを生み出す能力が非常に高く、彼らにとっては一緒に新しいものを生み出す唯一の方法が対話ではないかと思う。

◆参加者との質疑応答

Q1:SDGs4.7について。この中にESD、平和教育、文化の多様性、男女の平等など様々なキーワードが入っている。様々な分野に関わってきた方々がSDGs4.7でつながれるのではという議論があるが、今回のコスタリカの会議の中で4.7という言葉がどのくらい、またどのように扱われていたのか。
A:
・SDGs4.7にESDも入っているが、ESDは1つのテーマとして扱われるべきではないとペーパーでも会議でも強調されていた。ESDをやっている人たちの認識としては、全てのゴールを可能にするのがESDなのだと、少なくともそうあるべきというのは非常に感じた。<宮崎氏>
・ SDGsはアイコンのように17の四角形が並んでいるものではなく、基本的にはバッジのような円であったり、スライドで示したような動的なスパイラルだと思う。四角形で認識してしまうとどうしても要素還元的にタグ付けをする傾向になる。SDGs4.7を取り出すというよりも、どういうときにそれを関連付けたり、動的なスパイラルの発想にしていくかが重要。<佐藤氏>

Q2:ESDはメインストリームにどれぐらい入っているという実感があるのか。どれだけ誰でも触れられるものになっているか。
A:
・今、Climate ChangeのIPCCの議論でも、CBDの議論の中でも、教育に関する重要性が高まっている。教育というよりも、学習の側面と、キャパシティビルディングの側面が出てきている。教えるという文脈の前に、大人が変容を強く求められていて、我々も変わらないと社会が変わらないということがやっと土壌に入ってきた。個人の側面からも社会にも関わってくることを考えると、ESDが果たす役割が大きい。<佐藤氏>
・ESDの世界にどっぷり浸かって、ESDステークホルダーの方たちと日々仕事している範囲では、多大な関心が寄せられていて、非常に多くの人ががんばっている実感はある。メインストリーム化されているかは、はっきりと答えられないのが正直なところ。PNに入っていない団体の方々の意見、何が足りていないのか、どういった方向でPNは残り1年を過ごしていくべきなのかという意見をむしろ率直にいただけたら大変ありがたい。<若山氏>

Q3:GAPが最初に提案された時から5年経つが、その間にSDGsが出てきて、世の中がものすごく大きく変わっている。もともとGAPで教育を再考しなければいけないと言っていたが、今、本当にESDはそこまできているのか。会議の中で後継プログラムを作る際にどのくらい革新的な話や変革が入っているのか。
A:
・革新的なものの1つはPN間のつながりが出てきたこと。ESDはSDGsの4だけに落とし込むのではなくて、SDGs全体のプラットフォームになり得る。<佐藤氏>
・ユネスコは、新しい問題やトレンドをウォッチしていく必要があると考えている。1つは若者のトレンド。もう1つは新しい科学技術。科学技術の進歩と共に新しい問題もどんどん出てくるので、対応能力をESDは付けていく必要があるという議論があった。しかし、ESDは科学技術の進歩などに一生懸命付いていくだけではなくて、科学技術が変な方向に行かないように進化の舵取り役をしていくのもESDの役割だと思う。<宮崎氏>

Q4:政策作成プロセスは少しクローズに見える。本当に世界中でSDGsやGAPを広げていくなら、世界が何を考えているかがもう少し見えるようになればいい。それが可能になるにはどうすればよいのか。
A:
・SDGsに関する様々な議論は非常にESD的になってきていると思っている。政府が物事を決めていく時代があったが、今は参加性や透明性が随分出てきた印象。今回もPN1の議論があり、その後も様々な会合やオープンなプロセスがあると聞いている。パートナーシップという考え方はSDG17として捉えられがちだが、実はSDG16の側面がとても重要。今後、ESDでパートナーシップは非常に重要になることが強調される一方で、どのようにSDG16が公正に対する配慮をしていくか、様々な政策立案形成と一緒に考えていく必要がある。<佐藤氏>

<尾山>
ESDの長い歩みの中で、ここまでの実績や成果が有る。SDGsの時代に、これからも社会をリードしていく役割、存在として私も期待しているし、またこういう場を作ってければ。発表者にも改めてお礼申し上げたい。