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[開催報告]SDGsセミナー「SDGs達成のための取組と評価」
2018/06/2

SDGs達成に向けて、行政、企業、市民といったあらゆるセクターが取組を進めています。一方、それらの取組の効果を定量的・定性的に評価する指標は社会の中で共有されているとは言いがたく、取組の広がりにくさにもつながっています。今回は、SDGsの「評価」と、国際的な現状および市民社会、自治体の取組から情報共有をいただき、今後に向けたディスカッションを実施するセミナーを開催しました。

開催概要

○日 時:5月17日(木)14:00~16:00
○会 場:地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)
○主 催:(一社)環境パートナーシップ会議(EPC)
○助 成:地球環境基金

プログラム

14:00-14:30 話題提供①「SDGsの国際的な動向と評価」
明治大学大学院グローバル・ガバナンス研究科(博士後期課程) 髙木 超氏

14:30-15:00 話題提供②「市民社会の動きとその評価」
CSOネットワーク 今田 克司氏

15:00-15:30 話題提供③「自治体の動きとその評価」
法政大学デザイン工学部建築学科准教授 川久保 俊氏

15:30-16:00 フロアディスカッション
話題提供者3人+コーディネーター星野智子(EPC)による意見交換

内容

話題提供

①明治大学大学院グローバル・ガバナンス研究科(博士後期課程)髙木超氏
「SDGsの国際的な動向と評価」と題し、報告。 >>>資料
・MDGsの特徴や成果、SDGsとの違いについて説明し、ハイレベル政治フォーラムや各国のレビュー状況について報告。日本は科学技術イノベーション(STI)、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)や防災(DRR)に注力している。
・SDGsの業績測定は行われているが、予算や規模、開発途上国の統計能力などの課題が存在する。狭義の評価(Evaluation)を実施することはSDGsの構造上、困難が伴う。
・先進事例としてニューヨーク市と、コロンビアのメディジン市を紹介。

②CSOネットワーク 今田克司氏
「SDGs×市民社会×評価」と題し、報告。  >>>資料
・NPOにも評価文化の普及を。
評価をやったことがないNPOが7割。やると9割が役になったと答えた。
・データとエビデンスの重要性。
細分化されたデータを取り、「誰が取り残されているのか」を正確に把握する必要があるが、できない場合が多い。公共セクターのデータ収集には限界があり、市民発のデータづくりの必要性がある。
・評価=測定ではない。
測定に基づき、的確な分析を行い、適切な価値判断を下すことが必要であり、価値判断は市民社会参加で進めることが必要。

③法政大学デザイン工学部建築学科 准教授 川久保俊氏
「自治体の動きとその評価」と題し、報告。
SDGsを認知していない自治体も未だに多い。認知してはいても推進予定の無い自治体も多く、予算・知識・人・時間が無いことが最も大きな理由。一方で、先進的な取組をしている自治体もあり、モデル事業や参考事例があると横展開し易い。グローバルレベルな指標はそのままでは使用できず、日本にローカライズされた指標を使用し、検証し、次の政策を考えることが重要。自治体間、自治体と企業、自治体と市民のような交流も重要。

フロアディスカッション 話題提供者3人+コーディネーター星野智子(EPC)による意見交換、質疑応答

・今田さんの発表にあった、市民からデータを集めるというアプローチは有効だと思う。日本では恐らく正確なデータが公開されていると思われるが、開発途上国では「悪いところが明るみに出ると投資してもらえなくなる」などの理由からデータの公開に後ろ向きの国もある。(髙木氏)

Q:環境未来都市の選考基準には、SDGsの理念「誰一人取り残さない」とどのくらい関連があるのか。社会面、市域の中の格差、独居老人、少子化へのケアなどがどのくらい充実しているかを都市に見ようとしているのか。(今田氏)
A:環境のみではなく、経済、社会との統合性をかなり意識している。選考プロセスや評価基準はホームページでも公表されている。(川久保氏)

Q:評価について、国連では、実際にデータを見ながら行おうとしているのか、まだ理念的なのか。(川久保氏)
A:SDGsは業績測定の仕組みを用いており、狭義の「評価」とは少し状況が異なる。そこで、UNITARがSDGsの評価専門家を育成するプログラムを昨年11月から実施しており、自分を含め15名程度が世界中から参加し、各人がそれぞれのフィールドで広めているところと承知している。(髙木氏)

Q:自治体におけるSDGs達成度を測定する手法は自治体職員をメインターゲットにして作成しているが、どうやったら市民が参画するような案が作れるか。(川久保氏)
A:どうやって市民を巻き込むかをかなりしっかり考えている行政職員は多いので、そういう人たちと地域のNPOが結び付いて横展開していくのも1つ。(今田氏)


フロアディスカッションの様子

Q:「SDGsウォッシュ」と言われているか。(参加者)
A:成功しているキャンペーンにはウォッシュが付いてくるものであり、SDGsに付くとしたら認知度が高まっているということだろう。何がウォッシュで何がそうでないか、専門的な知識が無いと簡単には判断できない。SDGsは多岐多様なテーマが含まれ、非常に難しい。(今田氏)
A:例えば、オリンピックや国際会議など、自治体が国際的な支持を集めたいときにSDGsをいわゆる共通言語として用いて、アピールするなどの使い方も可能である。こうした戦略的な使い方を非とするかは、議論が分かれるところでもある。(髙木氏)

Q:自治体の人は既存の政策・施策とSDGsとの連携をどのように考えているか。(参加者)
A:自分の仕事がどのゴールに貢献するか、まずは自治体の人に認知してもらう必要がある。全国の自治体を回る中で、大きい自治体ほどどうしても縦割りになりがちで連携に苦労されている印象を受ける。一方で小さい自治体では職員数が少なく必然的に1人の人が様々なことを同時に行っているのでSDGsとの連携を行いやすいという側面もある模様。(川久保氏)
A:自治体の人が自分の仕事が何に繋がっているか自覚することが必要であり、自分たちが今まで取り組んできた仕事をSDGsという枠組みにはめて、あるべき理想の姿から逆算するバックキャスティングなど、新たなアプローチを取り入れる契機になるのではないか。また、取り組む際は首長(トップ)からの働きかけと、職員の取組という双方向のアプローチが求められる。(髙木氏)

・地域にはアクティブなプレーヤーが大勢いる。SDGsは自治体の古い縦割りを崩すツールでは。LGBTなど地域の中で声を挙げられなかった人たちに光が当たり、表に出てくる。日本政府の方向性は、得意なことをやろうと言っているように聞こえるのを危惧している。(参加者)

Q:公表データは企業活動と直結しない部分が出てくるのでは。企業が様々な活動をしても、自治体レベル、国レベルで評価してくれる受け皿はあるのか。(参加者)
A:他者からどう見られるというのではなく、SDGsを使って自分たちの活動を如何に改善し得るか考える方が大事ではないか。取組の進捗状況の管理には指標の活用だけでなくチェックリスト的なツールも必要もあると良い。フロー(努力量)を評価するのか、ストック(状態)を評価するのか。そのような点も考慮して評価の在り方を考えることが望ましい。(川久保氏)

・EPCで作成した、様々なステークホルダーのパートナーシップ事例を紹介する動画「パートナーシップで作る私たちの世界」をご覧いただき、ご参考としていただきたい。(星野)