【自治体トップインタビュー】 渋谷区 長谷部 健 区長に聞く
2019/01/30
渋谷区の基本構想を策定するにあたっての思いや趣旨についてお聞かせください。また、SDGsに関連した取り組みについても教えてください。
インタビューに答える長谷部区長
基本構想は、渋谷区の一番のステートメントとして、A子育て・教育・生涯学習、B福祉、C健康・スポーツ、D防災・安全・環境・エネルギー、E空間とコミュニティのデザイン、F文化・エンタテイメント、G産業振興、として7つのカテゴリーがあり、これらを実現すると「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」ができるという設計になっています。絵本形式としてより多くの方々、特に子どもたちに読んでもらい、彼らのシティ・プライド醸成につながることを期待しています。基本構想の傘の下にすべての政策があるので、それに紐づいた提案であれば、提案を受ける方も受けやすくなる指針としています。
SDGsについても、理想として共有の目標ができているのはとても良いと思い関心を持っています。SDGs全てのゴールに同意しますが、私自身が渋谷区らしいという点にこだわりたいので、SDGsをそのまま踏襲するのではなく、これを渋谷区の街の個性として、ブレークダウンしたものが基本構想だと思っています。SDGsとダイバーシティ・多様性・インクルージョンはつながっており、この「ちがいを ちからに 変える」は、互いに性別や国籍、年齢、出身地が違うことを認め合って調和していくことです。どうしても調和できないことがある際に、どのように寛容性を持って受け入れていくか、受容力を大切にしてきちんと理解した上で、ダイバーシティと言わないといけないと思っています。
渋谷区の環境基本計画を、本年4月に策定された経緯、そして環境活動への取り組みについて教えてください。
基本構想ができてから、新環境基本計画策定に取り掛かりました。SDGsもそうだと思いますが、みんなに知ってもらうことがやはり大切です。本計画も、実行するのは人だという思いがあるので「わたしが動く。渋谷が変わる。」という標語と、常にループしてアクティブに回っていくイメージで「行動が社会を変え、社会の変化が意識と行動のさらなる変革を生む持続可能な仕組みづくり」としています。
渋谷は海や山を持っている場所ではないので、「都心で暮らす」ことを追及していかないといけないと思っています。都心ならではのできること、例えば屋上で菜園を始めてコミュニティができるなど好循環が起きつつあります。もっと地域にコミュニティをしっかり作っていく、従来は町会と商店会がメインであったけれど、PTAや民生委員を中心としたものや、SNSを使ったコミュニティなどいろいろあります。夕飯の支度をしているときに、子どもを近所の家で1時間面倒みてくれて助かるなどのような隣近所どうしのコミュニティで解決できることがたくさんあります。
2017年から「おとなりサンデー」という事業を始め、6月の第一日曜日は近所の人と交わる日として、パーティーやバーベキューなどで公園を使うことに許可を出しています。SDGsや環境基本計画も意識しつつ、究極の人のつながり、最先端の田舎暮らしを実現したいです。都会に暮らすことで、便利なことは享受しながら、人がつながっていくことで解決できることは環境面でも多くあり、区政においても非常に重要で、特に地方自治体として非常に大切にしなければいけないことだと思います。
渋谷区で取り組んでいる市民協働事業として市民や企業セクターとの協働について、どのように進めようとしているか教えてください。
渋谷区の北部地域である幡ヶ谷、初台、笹塚、本町に渋谷区の人口の約半分が住んでおり、地域や福祉の課題に対して、NPOやNGOと連携して社会実験的にサポートシステム等について話を始めています。市民協働事業として、ササハタハツと名付けてワークショップ形式で意見を吸い上げています。水道道路という一本道の活用について、歩行者天国にして駅伝をしてみたい、ブロックごとに分けてキャッチボールができるスペースにしたいなど、普段この道でできないことを実現できないか、また商店街の活性化策として、空いている場所でNPOと協働したい、商店街と連携して最新のモビリティを使って宅配してほしいなどのアイディアも出てきています。渋谷でトライをしていくこと、アクティブにチャレンジしていくことは価値があることなので、みんなに集まって、と言うのではなくやりたくなるように仕向けていく、やりたい人がやりたいことをできる環境を作っていきたいと思います。
企業とは、協定を結んで具体的な事例を作っていくことを進めています。例えば、緑道をお茶畑にしたい、「おとなりサンデー」の際にコーヒーを無償提供したいという話から、地域課題の解決に向けた福祉・教育のサポートをする新しいカルチャーへの投資の話まで、渋谷の街を愛する思いのある企業と組んでいくことを考えています。このような手法により、渋谷を愛してくれている方々、住民、企業やNPOなどあらゆるステークホルダーを巻き込んで都会ならではの事例として、SDGsの「誰も取り残さない」ことを実現していきたいと思っています。
渋谷区で今後取り組んでいきたい課題と取り組みについて、教えてください。
先日のハロウィンの際には、翌朝5時にボランティアが集まってきて、8時に普段の渋谷を取り戻し、12時には1年で1番きれいな渋谷になっていることはあまり知られていないけれど、渋谷を愛する人の力は本当にすごいと思っています。
渋谷という都心に暮らすことの責任として、ごみの課題には今後取り組んでいかなければならないと思っています。渋谷区は観光客などの流入人口が多い地域であるため、ルールをつくるのではなく、ごみを捨てにくい空気を醸成できないかと考えています。また、事業者が多く事業系のごみが多いので、レストランの食品廃棄物などのごみの発生抑制やリサイクルなどを突き詰めていくことや、ファンドレイズなどの手法を考えてはいますが、持続可能な仕組みとなり得るものはどのような仕組みか、今後の課題として考えていきます。
[インタビュー実施:2018年11月21日]