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【自治体トップインタビュー】 富山市 森 雅志 市長に聞く
2019/01/9

富山市のSDGs未来都市への思いについてお聞かせください。


インタビューに答える森雅志市長

私のSDGsに対する思い入れは非常に深く、間接的な影響をもたらすことも考えれば、富山市はSDGsの17ある目標すべての達成に貢献できると考えています。これまでの活動が評価されて環境モデル都市と同様にSDGs未来都市にも内閣府から選出いただきました。OECDからも世界のコンパクトシティ5都市に、国連からはエネルギー効率改善都市に選ばれ、さらにロックフェラー財団からは100のレジリエントシティのひとつに日本で初めて選ばれました。
海外との協力事例では、河川の落差を利用した小水力発電の技術を開発途上国に提供しています。この技術を活用することで、地産地消で発電が可能になり、精米機を稼働させて高値で販売できる米を栽培できます。このことは、貧困の解消に寄与することができるのではないでしょうか。
富山湾は地形上、対岸の国からごみが漂着することはほとんどないので、富山湾のプラスチックごみは、神通川等に流れ込む農業用水や生活排水が流れる小河川から流れ込んでいると推測できます。国や県が管理する神通川のような一級河川の下流で取り組むことは難しいですが、市の管理下にある小河川に網場を設置して、流れて来た浮遊物を回収する取組を開始したいと考えています。そこで、まずは網場の設置可能な場所のデータなどを収集する調査事業の実施に向け、検討を進めているところです。このようにビジョンや計画段階で留まるのではなく、行動に移し結果を出すことが重要です。

次に、富山市がSDGs未来都市計画として実施されている施策のうち、代表的なコンパクトシティに関する取組について、実行に至るまでの経緯や成果について教えてください。

都市が郊外に広がるスプロール型の都市構造では、道路や下水道も郊外に延長され、維持管理費やごみ収集などの行政コストが増加してしまいます。しかし、公共交通を軸としたコンパクトシティ戦略では、友人と街中に出かけるときに、それぞれが車を利用して、お酒も飲めずに帰っていくという従来の構図を、公共交通を利用することで、コンサートの幕間にワインを飲めるような上質な暮らしに転換できます。その他にも、祖父母と孫のグループで利用する場合、富山市の公共施設は全て無料です。祖父母は孫と一緒にでかけると消費も伸びる。こうした発想の転換が必要なのです。この事業は県内自治体に広まっていて、富山市と協定を締結した自治体の市民は、相互に公共施設を無料で利用することができます。この政策を実施した結果、高齢者の外出機会が増加し、健康な高齢者が増えて医療費の削減につながっています。このように、市民が市の課題を意識せずとも解決に向けて動くような施策を実行していけば、公共交通の利用が増えたり、細かいごみの分別にも協力をしてくれたり、自然エネルギーの意味を理解して補助制度などを市民が利用してくれるようになるのです。その結果、総体としてSDGsに寄与する都市になっていくだろうと考えています。
また、単身赴任者ではなく、家族で住んでもらうために、街を花で飾り、子育て政策も手厚くして、お洒落な雰囲気も大事にしています。実際に、中心市街地の小学校の在校者数は増加しており、子育て世代が車一辺倒の社会から脱却している状況を示しています。私は、富山市が徐々に持続可能な状況に近づいているのではないかと感じています。

富山市における持続可能な地域づくりや、市民協働など行政以外の主体との連携状況について教えてください。

例えば、市内の中山間地にある水田で水を張れば、稲を耕作しなくても、10アールあたり1万円を支払っています。中山間地の水田が耕作放棄地になると、豪雨の際に下流域の都市部に水が一気に流れ込んでしまい、水害が発生します。そこで、中山間地の水田を維持することで、災害を防ぐといういわゆる「緑のダム機能」を活かす取組をしています。また、平野部のある地域では、農家に協力をいただき、市から1ヘクタールあたり1万3千円の負担金を支出して、水田の排水口のサイズを小さく絞り水の流出を抑える取り組みも行っています。こうした取組の成果で、下流域における都市型浸水は以前より発生しなくなりました。取組自体は地味かもしれませんが、行政も含めた地域住民がお互いに助け合うというパートナーシップ関係を構築することができています。

取組を国内外に発信し、普及展開する中で得られたことについて教えてください。

開発途上国への貢献では、現在も市内企業と協力し、インドネシアのバリ州タバナン県で小水力発電などの技術移転を進めており、昨年完成した4基の小水力発電システムから発生した電力の一部を、新たに導入する高性能の小型精米機に供給するプロジェクトを進めています。また、中部ジャワ州のスマラン市では、市の公共交通事業者が保有する72台のディーゼルバスをCNG(天然ガス)でも走行可能なハイブリッドエンジンに改造するというプロジェクトにも取り組んでいます。私は、29あるSDGs未来都市の中でも、海外への協力については、富山市が突出しているのではないかと考えています。確かに、他の政令指定都市は、海外の大都市に対する支援をしていますが、富山市は島嶼国の小都市に対する支援を積極的に行っています。例えば、大きな河川がない現地の状況に応じて、農業用水を活用した小水力発電の設置支援など、スケールは大きくないかもしれませんが、需要のある事業に取り組んでおり、価値がある取組であると感じています。
富山市の取組が国際的に注目されたきっかけは、経済協力開発機構(OECD)から世界のコンパクトシティ5都市に富山市が選ばれたことです。一地方都市である富山市が、市民の暮らしのためにと取り組んできたことが、世界で評価され、シビックプライドを上昇させたことは大きな成果です。できることから着実に実行してきた成果が、今般のSDGs未来都市の選定につながったと思っています。今後も足踏みせず、そして、ぶれずに政策を実行していきます。
[インタビュー実施:2018年11月6日]