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[サステナビリティ紀行]ポスト2020(生物多様性愛知ターゲットの次なる目標)の動きに注目する
2020/03/10


2020年2月末、ローマにおいてOEWG2(第2回ポスト2020作業部会)が開かれました。愛知ターゲットの後、今後どのように生物多様性対策が行われていくのでしょうか。参加したIUCN日本委員会の道家哲平さんにお話を伺いました。

質問1:ポスト2020の政策形成プロセスで、今回の会合はどのような位置づけなのでしょうか。道家さんが参加した動機や期待していたことなどについて教えてください。

第2回ポスト2020作業部会
FAO本部(ローマ)で開催。参加者は700名を越え、
政府に加え、NGOや先住民グループ、企業、国連機関
などが半数近くを占めていた。

共同議長が1月に発表した「ゼロドラフト」の意見交換の会合となりました。この意見交換をもとに、目標値や指標やマイルストーン、資金確保や報告の仕組みといった実施メカニズムを検討し、第1素案を作成します。第1素案は、第3回ポスト2020作業部会(7月)で精査し、10月予定のCOP15で、合意を目指すというプロセスになっています。
私は各国やNGO等の意見収集や、国内実施の視点から必要な目標の在り方を考えるために参加しました。

質問2:今回の会合や関連会合で話題になっていたことや参加されたイベントについて教えてください。

今回の会合では、生物多様性の危機的状況に対して、設定するべき目標の野心度が正しいのかが注目されましたが、実質その点は先送りされました。一方、先進国から途上国への資金的な支援など、途上国と先進国(単純化はできませんが)の間で意見が分かれた点が見えるようになってきました。第1回(2019年8月、ナイロビ開催)の会合との違いでは、国連機関やビジネスセクターの参加が増えていて、ポスト2020枠組みへの関心の高まりを感じました。

質問3:会合に参加したり、政府やNGOの方とお話しする中で印象に残っていることはどのようなことですか。ポスト2020政策へのヒントや参考になることはありましたか。

政府もNGOも、共通のキーワードは社会変革(Transformative Change)です。生物多様性条約は25年以上機能し、前進させたものも数多くありますが、2019年に発表されたIPBESグローバルアセスメントレポートは、生物多様性の危機が拡大していることを警鐘しています。国連持続可能な開発のための2030アジェンダ・SDGsを達成するためにも、過去の交渉から、どれほど飛躍して、保全や持続可能な利用、利益配分などを進めていけるのかについては、積極的な意見と、保守的な意見とが入り混じっていました。

質問4:ポスト2020のために必要なステークホルダー連携・パートナーシップについて、提案や期待があればお願いします。

第2回ポスト2020作業部会
IUCNは、各国各テーマの専門家でチームを
作り、発信や情報収集を実施

ポスト2020枠組みはまだ検討中ですが、明らかなのは、政府の取組みだけ変えてもインパクトは少なく、自治体や企業、NGO、ユース、先住民地域共同体、ジェンダーなど多様なアクターの積極的な参画・貢献が、これまで以上に重要であると感じました。
COP10からの10年の間で、企業による生物多様性の保全や配慮が進みましたが、これからは企業とNGO、自治体等が協働する事例が増えていくことになると思います。



※IUCN:1948年に世界的な協力関係のもと設立された、国家、政府機関、非政府機関で構成される国際的な自然保護ネットワーク。(International Union for Conservation of Nature)
※IPBES:2012 年4月に設立された世界中の研究成果を基に政策提言を行う政府間組織として設立された「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(Intergovernmental science-policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services)
参考:https://www.biodic.go.jp/biodiversity/activity/policy/ipbes/
英語サイトhttps://ipbes.net/


道家哲平プロフィール:道家哲平 
(公財)日本自然保護協会 広報会員連携部長

生物多様性条約に2006年より関わるNGOにおける第一人者。国際的な情報収集・分析・発信を行う。企業や団体、自治体など多分野のセクターをつなぐ「にじゅうまるプロジェクト」などを推進している。