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[サステナビリティ紀行]グローバルとローカルをつなぐ市民社会~G20サミットに向けて~ 
2019/01/30


世界の主要国とされる20カ国の首脳が集まり毎年開催されるG20サミット。今年2019年の開催国は日本。6月に大阪で開催されるG20サミットに向けて、市民社会の動きも活性化しています。2018年の開催地アルゼンチンの市民社会の働きかけを受けて「2019 G20サミット市民社会プラットフォーム」が設立。47(2018年12月現在)の参加団体が加盟しています。今回は共同代表の岩附由香さん(特定非営利活動法人ACE代表)にお話を伺いました。

G20サミットは、各国首脳や閣僚が集い世界の経済・政治・環境などの地球規模課題について討議し、さまざまな決定を行う政府間会議です。市民社会によって開催するC20サミットはどのように位置づけられどのような役割をもっているのでしょうか?

2018年ブエノスアイレスC20において、アルゼンチンの
マクリ大統領に、市民社会の提言書を手交する岩附

C20サミットは、Civil Societyの頭文字Cをとり名付けられています。G20に向けて、インプットを行うために位置付けられている正式なエンゲージメントグループのひとつです。正式なグループは7つあり、C以外は、Business, Labour, Women,Think Tank, Science,Youthとなっています。C20は2013年ロシアが議長国を務めたG20から始まり、毎年開催されています。
C20サミットの主な目的は、世界の市民社会がG20サミットの議題に対して、市民社会が持つ固有の価値を踏まえた提言を行うことによって、G20の内容的深化に貢献することです。今年の場合、6月にG20サミットがありますので、そのインプットとして提言を行うために、その前に提言書を完成させ、4月21日~23日に東京で開催されるC20サミットでG20の議長である安倍首相に提言書を手渡すことを目標としています。
2019年の日本のC20については、環境から財務まで多様な10のテーマでワーキンググループを作り、オンラインで、英語で世界のCSOの方々と政策提言内容を議論し、3月には完成させる予定です。

2019年のG20サミットはSDGs達成という観点からも注目されています。市民社会が特に注目しているのはどのような課題でしょうか?G20にどのような期待がありますか?

ブエノスアイレスG20サミットにおいて、国際メディアセンターで
記念撮影するアルゼンチンと日本の市民社会代表

G20の議題は議長国が設定します。2018年12月1日のブエノスアイレスでのG20サミットにおいて、安倍首相は大阪G20サミットでの主要テーマに、「革新的技術により社会問題を解決し、『人間中心の社会をつくる』」を掲げ、「SDGsを中心とした開発、地球規模課題への貢献を通じて、自由で開かれた包摂的かつ持続可能な未来社会の実現を目標に掲げ、推進していきたい」とスピーチしています。G20の議論のプロセスは財務トラックとシェルパトラックの2つに大きく分かれ、シェルパトラックの中には複数の作業部会(Working Group)が設定されています。その中の開発作業部会において、SDGsもテーマとして掲げられています。
C20としては、①主要な議題として掲げられていることに対し、現場感覚を活かしてインプットを行うこと ②必ずしも主要な議題と掲げられていない議題についても、G20において重要と考えられるものについては、主要議題と結び付けながら、議題の中に入れていくことを行う必要があります。市民社会組織としては、テクノロジーの革新を含む大きな変化を迎えているこの時代に、「誰1人取り残さない」というSDGsの精神が達成されそうな方向に向かっているのかを、各分野で注視していく必要があると思っています。

C20サミットを成功に導くため、私たちにはどんなことができるでしょうか?日本の市民社会へのメッセージをお願いします。

今回C20サミットを日本の市民社会組織が開催するのは初めてのことであり、かつ20年に1回しかないことですので、多くの人に参加してもらいたいと思います。NPO/NGOのみなさんはぜひ市民社会プラットフォームに参加してください。
C20サミットについては、首相の参加を実現すること、そしてC20からの提言が首脳宣言や他の大臣宣言に反映されること、それにより、持続可能性に対する課題について、解決へのG20政府のコミットメントの高まりがみられること、それが出来れば成功と言えます。
日本の市民社会組織にとっては、成長の機会になると思います。ワーキングループの議論は日本の国内コーディネーターと国際コーディネーターがリードすることになっており、政策構想力が求められます。また、多くの世界のNGOと議論する機会を通じ、必ずしも可視化されていない「問題間のつながり」や「共通の課題」を認識し、問題の隠された本質に気づくなど、新たな視点を得る機会となるでしょう。日本、その他政府との対話を通じ、政策提言のチャネルを太くしていくことも、重要だと思います。
日本の全てのNPO・NGOが英語で議論に参加するのは難しいかもしれません。しかしG20で議論されていることは、今の世界のリーダーの関心事が反映されています。この世の中がどのような方向に向かっているのか、普段の目の前の仕事から少し目を離して、世界を俯瞰してみるきっかけになると思います。また、それぞれの皆さんが活動しているテーマや領域が、G20サミットの中でどのように位置づけられているのか(いないのか)を、この機会によく見てみるのもよいと思います。例えば私がACEとして取り組む児童労働問題は、ブエノスアイレスG20サミット首脳宣言の中ではっきりと明記されているほか、労働大臣会合の宣言には行動計画まで添付されています。
G20サミットの直前には、大阪で市民サミットも開催されます。持続可能性や地球規模課題についてメディアや市民が知り、アクションをとるきっかけにもなることを願っています。


岩附由香(いわつきゆか)2019 G20サミット市民社会プラットフォーム 共同代表/2019年日本C20議長。1997年に学生5人でACEを創設し以後代表を務める。児童労働ネットワーク事務局長、Global March Against Child Labour理事。近著に『チェンジの扉』(ACE著、集英社)。