[サステナビリティ紀行]-国連世界防災会議への働きかけを通じて
2015/07/28
市民向けに企画された「市民防災世界会議」には
さまざまなテーマに取り組む多くの 人たちが参加した
2015年3月、第三回国連世界防災会議が仙台で開催されました。防災に関し、国際社会がどのように対応すべきかが包括的に話し合われ、2030年を見据えた「仙台防災枠組2015-2030」が採択されたのです。気候変動の影響もあり、自然災害の脅威は世界的にもますます増大化していると言われています。
SDGsではDisaster(災害)という言葉が前文や目標1(貧困削減)、目標2(食料安全保障や持続可能な農業)、目標11(都市と人間居住)など随所に見られ、注目のキーワードと言えます。災害問題において、市民社会が果たしうる役割とはなんなのか。国連世界防災会議に市民社会(CSO)ネットワーク事務局として参加した堀内葵さんに伺いました。
(語り手:2015防災世界会議日本CSOネットワーク 堀内葵さん)
国連世界防災会議に向けて、日本の市民社会(CSO)として連携し、提言を行うに至った経緯を教えてください。
2013年にジュネーブで行われた国連国際防災戦略事務局(UNISDR)主催の会議において日本政府関係者が「仙台で開かれる第3回国連防災世界会議では原発問題を扱わない」と発言し、メディアでもその様に報道されました。
このことに危機感を抱いた複数のNGOが呼びかけて、「2015防災世界会議日本CSOネットワーク(JCC2015)」を発足させました。日本で開催される国際会議に、東日本大震災の教訓、とりわけ福島第一原子力発電所事故の教訓を盛り込むべき、と考えたからです。
具体的にはどのような提言活動を行いましたか。成功点、今後の課題はなんでしょうか。
JCC2015の参加団体は、災害支援、開発、人権、
環境など多様であることが特徴
3月の本体会議までに1年以上前から準備会合が世界各地で開催されてきました。JCC2015は、6月のアジア防災閣僚級会議(於:バンコク)や7月・11月の政府間準備会合(於:ジュネーブ)に参加し、共同議長との対話や提言書の発表を通じて、市民社会として考える「防災のあり方」を提言してきました。例えば、自然災害のみならず、技術災害や人為的災害も対象とすること、社会の構成員すべてが災害リスク軽減に関わること、などです。
また、会議に合わせて福島原発事故の教訓を伝えるブックレット『福島 10の教訓~原発災害から人びとを守るために~』を日・英・中・韓・仏の5か国語で作成し、会議参加者に配布しました。
これらの活動の結果、成果文書として採択された「仙台防災枠組2015-2030」のなかに「Man-made disaster(人為的災害)」が含まれるなど、日本からの教訓が反映されたと評価できます。
今後の課題は日本国内において「仙台防災枠組」をどのように実施し、評価・モニタリングしていくか、そして、そこに市民社会がどのように政府や他のセクターと連携して関わっていけるか、という点です。
国連会議で採択されたことをフォローアップするにあたり、どのような活動を予定していますか。また、SDGsとの関連性から考えられるアクション等があればお知らせください。
JCC2015は今年6月に解散総会を行い、活動を終えました。しかし、参加団体の皆さんと活動の振り返りを行うなかで、「福島を含む東日本大震災の教訓はまだまだ伝えきれていない」「持続可能な社会づくりや気候変動などについて2015年は非常に重要な年であり、そこに関わっていくべきではないか」「災害に強い社会づくりや防災の主流化をもっとやっていくべき」という意見が集まり、新たなネットワークを設立するために準備を進めています。
環境NGOを含む幅広い市民社会団体に呼びかけ人となっていただいていますので、SDGs時代を見据えて「災害に強い社会」を作るために活動していく予定です。
堀内葵(ほりうち あおい)
(特活)国際協力NGOセンター(JANIC)調査提言グループ所属。在学中より開発教育や水・農業・地域の課題などに関する調査を行う(特活)AMネットで活動を始め、後に事務局長を務める。ラジオ局AD、大学職員、環境NGOスタッフなどを経て、2012年5月よりJANICで勤務開始。NGOによる提言やネットワーキングが主な活動テーマ。JCC2015では事務局長を務めた。共著に『国際協力用語集 第4版』(佐藤寛監修・国際開発学会編、丸善出版、2014年)。