[サステナビリティ紀行]-SDGs実現にむけた国際的ムーブメントと日本の市民社会
2015/11/26
2015年9月、国連SDGsサミットの傍ら、市民社会
関係者が集まってSDGs達成に向けた2016年以降の
市民社会の連携について話し合った
SDGsの達成に向け、市民社会組織はどのような働きかけをしているのでしょうか。
貧困問題解決に向けた国際目標MDGs(ミレニアム開発目標)達成に向けて、国連と市民社会が連携して展開した国際的キャンペーン「STAND UP & TAKE ACTION」の日本事務局を務めた「動く→動かす」の今田克司さんに、お話を伺います。
(語り手:動く→動かす 今田克司さん)
MDGsの達成年である2015年を迎えました。市民社会主導で進められた「STAND UP & TAKE ACTION」といったMDGs推進の取り組みは、今度SDGsの推進にどのように結びつけられていくのでしょうか。
STAND UP & TAKE ACTIONは、「立ち上がる」といった簡単な行動で「私も貧困のことを考え、世界のしくみを変えるためにアクションを起こします」という意思表示ができるキャンペーンです。動く→動かすが加盟するGCAP(ジーキャップ、貧困をなくすためのグローバルコール)と国連ミレニアム・キャンペーンが2006年にはじめ、日本ではここ数年、年間3万人を超える人々が意思表示をしてきました。
STAND UP は2014年を最後に終了しましたが(*1)、MDGsからSDGsへ推移するなかで、2015年は action/2015 という一年限りのキャンペーンが行われました(*2)。今後はSDGs達成に向けたキャンペーンが始動する予定です。日本国内でも、STAND UP に参加した人の輪を広げ、SDGsの国内普及に貢献していきたいと考えています。
SDGsは、MDGsと比べ目標数も多く(MDGsは8目標、SDGsは17)、より多くの市民社会の参画が必要と言われています。開発・環境・人権など多分野で活動する人たちが連携することで、どのような効果が期待されるでしょうか。可能性と課題をお聞かせください。
可能性は広がっています。MDGsは、基本的に途上国向けの開発目標でしたが、SDGsによって、開発分野と環境分野の統合が行われました。また、人権に関しては、別分野というよりは、SDGsの理念を下支えする基本原則が人権アプローチだという位置づけです。市民社会の動きとして、すでにSDGsの策定過程において、分野を超える連携や協働がグローバルなレベルでも日本においても行われていました。これは今後も続いていくでしょう。
加えて、MDGs においては、先進国の関わりはドナー国としての責任の部分にとどまっていましたが、SDGsでは「普遍性」のスローガンのもと、日本のような先進国においても社会や地域の課題をSDGsに沿って整理し、課題解決に向けた目標を設定して尽力していく必要があります。その点から、日本国内や地域ベースで活躍する日本のNPOとの連携も今後加速していくことでしょう。
一方の課題は、可能性の裏返しですが、SDGsが分野横断的なものであるため、政府の省庁間の協調が必要になり、市民社会としても政府のどこを相手にしたらいいのかしばらくは模索しなければならない状態が続くことがあります。また、SDGsの包括性を活用しつつ、個別具体的な分野で政府に対するアカウンタビリティを要求していくという両面作戦も必要になり、なかなか複雑なタスクになります。
サステナブルな社会を実現するために、日本の市民社会は、国内外でどのようにパートナーシップや参画を進めていけばよいのでしょうか。海外に日本の私たちが注目すべき事例がありましたら合わせてお聞かせください。
日本の地域で市民ベースやNPOと行政の協働で進められている先進的な取り組みを海外発信したり、グローバルやアジア圏内で進んでいるSDGs達成に向けた市民社会の動きに日本のNGO/NPOとして積極的に参加していくなど、すぐにでもできることはいくつかあります。
日本に限らず先進諸国にとってSDGsは新しい国際目標なので、循環経済などをテーマにしたヨーロッパ中心の試み(*3)からも参考にできることが多くあります。しっかりアンテナを張って情報収集をし、海外のアクターとも連携していきたいと思います。動く→動かすとしても、情報発信の強化に努めていきたいと考えています(*4)。
*1) キャンペーンの最終年となった2014年の報告書
*2) action/2015 の日本サイト
*3) 例えばヨーロッパ連合による、EUROPE 2020の動きや、エレン・マッカーサー財団が進める循環経済のイニシアチブなど、注目すべき動きは複数あります。
*4) ハフィントンポストにブログを開設しています。今田克司のブログ、動く→動かすのブログ
今田克司(いまた かつじ)
一般財団法人CSOネットワーク代表理事、認定特定非営利活動法人日本NPOセンター常務理事。1996年、米国で日米NPOセクターの人材交流を推進する日米コミュニティ・エクスチェンジ(JUCEE)を立ち上げ、事務局長。2000年に帰国し、CSO連絡会の事務局長を経て、2004年より市民社会の役割に関する普及活動をすすめるCSOネットワークの共同事業責任者。2008 年より、市民社会の強化を推進するCSOのグローバルな連合体であるCIVICUS(南アフリカ)にて事務局次長。2012-13年に事務局長代理。2013年帰国。現在、日本NPOセンター常務理事、CSOネットワーク代表理事、動く→動かす(GCAPジャパン)代表、CIVICUSシニア・アドバイザー。