[サステナビリティ紀行]富山から世界へ –G7サミットで発表した「環境市民宣言」-
2016/05/31
アースデイフェスティバルにて宣言文を発表
2016年5月15日、16日に富山で「G7環境大臣会合」が開催されることを契機に、5月14日、15日に富山県内の市民が中心となり「環境市民フォーラム」と「アースデイフェスティバル」からなる「アースデイとやま」を開催しました。
環境市民フォーラムでは、全国から集まった参加者187人の議論を経て「環境市民宣言」がつくられ、日本政府(環境省)に手渡されました。「アースデイフェスティバル」には約2,500人、78ブースの出展があり、市民社会の多くのひとたちがつながり、その声を世界に向けて発信しました。
多様な市民をどのように集め、その声を束ねていったのか。アースデイとやま実行委員長の本田恭子さんに伺いました。
(語り手:アースデイとやま実行委員長 本田恭子さん)
「環境市民フォーラム」「アースデイフェスティバル」に向けての市民社会のムーブメントは、どのようにつくっていったのでしょうか。富山の他、全国の市民社会とのつながりはどのように形成されたのですか。
「アースデイとやま」の活動は、自然環境や食品の安全性などに関心が広がりはじめた1990年代から始まり、今年でなんと26年目を迎えています。その間、生活協同組合やグリーンコンシューマーなどの消費生活に関わる団体や、自然保護、環境教育、森づくりの人たち、福祉作業所や農業、フェアトレードや地元素材にこだわった商品・食品づくりに関わる人たちなど、「環境」をキーワードに、実にさまざまな団体や個人が集まり、ネットワークしてきました。
「アースデイとやま」は、それらの団体から有志が集まり、毎年実行委員会を立ち上げて、企画運営に当たります。コアスタッフとして長く継続している人もいれば、1、2年の人もいます。今回はG7富山環境大臣会合の開催に合わせ、市民からも声を届けようとの呼びかけに応え、県内外や国外での豊富な活動経験を持つ新メンバーも加わり、フォーラム開催と市民宣言への道筋が描ける態勢が整いました。求めれば、ローカルにも人材はいると実感しています。
富山に根を下ろしながら、世界の市民社会へのメッセージとしたいと、ミーティングを重ねるごとに、熱い想いが広がり、実行委員会メンバーも増えていきました。伊勢志摩サミットでのNGO活動にも参加し、市民社会ネットワークへのつながりが深まったことは、今回の成果の1つと言えます。
「環境市民宣言」は参加者187人もの参加者の議論をへてまとめられたと伺いました。具体的に、どのようにまとめたのでしょうか。参加型プロセスにこだわられた理由はなんですか。宣言のポイントについて教えてください。
円形模造紙「えんたくん」を使ったフォーラム分科会
「○○市民宣言」といいながら、一部の専門家や行政マンによってつくられ、市民にはほとんど実感がない場合が、多いのではないでしょうか。少なくとも、フォーラムに集まった人たちが、一緒につくり上げたという実感の持てる市民宣言でなければ、その後の行動・実践にも結びつかないのでは、と考えました。
ワークショップを多く手がけてきた熟練のファシリテーターとともに、分科会、全体会を通して、意見を集約するプロセスを何度も話し合い、ワールドカフェ、えんたくん、ファシリテーショングラフィックなどの活用により、意見の共有化を図りました。
もちろん最終的に成文化する作業は、ファシリテーターとコアスタッフが担い、数時間のうちにやってのけたのは、すばらしい集中力の賜物でした。10項目にわたる宣言ですが、ポイントは3つあります。
1.グローバル経済から地域循環型の持続可能な経済へのシフト
2.自然の恵みとともにある暮らし
3.政策提言に向けた市民のエンパワーメント
未来への責任を果たすために、自己と社会の変革を進めようと宣言しています。
この活動を、今後どのようにいかしていきたいですか。今後の展望をお聞かせください。
まずは、情報共有ができる「市民プラットフォーム」をつくることです。「環境市民宣言」に関わった参加者や活動団体の情報交流の場として、またお互いにエンパワーメントできる場として、日常的に機能していく「しくみ」がほしいところです。
アースデイとやま実行委員会から新たな組織が生まれ、「環境市民宣言」に基づく活動が、定期的・継続的に発表・共有されていくよう期待しています。
関連リンク:
世界から富山へ「環境市民宣言」(アースデイとやまサイト内のPDFが開きます)
本田恭子(ほんだ きょうこ)
コピーライターとして(株)電通富山支局勤務などを経て、本田恭子企画室を自営。1990年代から環境教育に関心を持ち、「環境教育ネットワークとやまエコひろば」を設立する。自然体験と環境教育、市民参加の森づくり、持続可能な地域づくりなどをキーワードに活動。環境教育コーディネーターとしてESD、グリーンツーリズムにも関わり、近年は森林バイオマス等の再生可能エネルギーの活用と地域循環をめざす。2003年からアースデイとやま実行委員長。