[サステナビリティ紀行]サスティナブルな東京オリンピック・パラリンピック2020を目指して
2018/03/15
2020年の東京オリンピック・パラリンピックを持続可能(サスティナブル)な大会にしようと結成されたNGO/NPOネットワーク、SUSPON(サスポン)。2018年2月に発行した「ボランティアがつくる持続可能な未来」が注目を集めています。今回はその代表であるNPO iPledge(アイプレッジ)の羽仁カンタさんにお話を伺いました。
SUSPONの目指す「持続可能な東京オリンピック・パラリンピック」とは具体的にはどのようなものなのでしょうか。
SUSPONシンポジウムの様子
オリンピック・パラリンピックは市民・企業・行政が連携して、日本の未来であるレガシー(遺産)を作る一大イベントです。そのプロセスや実施には、市民やNGO/NPOが参加し影響を与えていくことで、開かれた透明性のある形にしていく必要があります。多くの人々が参加できる仕組みをつくることで、その後の「参加型社会」へとつなげていきたいと考えています。
またそのためには、環境だけではなく、人権、福祉など国内外の NGO/NPO が持つネットワークや横のつながりを活かし、幅広い視野で問題を捉え解決していくことも重要です。NGO/NPOが行政や企業と対立するのではなく、国際的なネットワークや様々な経験を活かして、開催に向けた提案、対話の場を作り、お互いを尊重し、協力し合っていくことこそが、持続可能なオリンピック・パラリンピック、ひいては持続可能な未来に向けた唯一の道だと考えています。
持続可能なオリンピック・パラリンピックにするための注目事例はどんなものがありますか。2020年東京に向けて、これからどのような点に力をいれていく必要があるでしょうか。
SUSPONリユースカップの活動
大規模なイベントでは短期間に膨大な廃棄物が出ますが、大量生産・大量消費・大量廃棄ではなく、3Rの優先順位に沿った「ごみゼロ」の大会にしていくべきだと考えています。SUSPONでは、来場者が親しみやすくポジティブに共感できるような仕組みの一つとして、リユース食器の導入を提案しています。リユース食器は使い捨て容器に替えて、洗って繰り返し使用できる食器のこと。丁寧に扱えば200回以上繰り返し使用可能です。また、全国にある洗浄施設の多くは社会福祉施設が担っているので、環境と福祉を繋ぐ新しい取り組みとしても注目を集めています。
カップにはデポジット金をかけることで、来場者が気に入ってお土産に持ち帰った際に、未返金となる分のデポジット金をカップの運用経費に充てるなど、独立採算で実施することも可能です。実際同様の方法で、海外ではスポーツイベントやロックコンサートで、イベントの趣旨に合わせた様々なデザインのリユースカップが使われています。
「ボランティアがつくる持続可能な未来」はどのようなことを伝えているのですか。持続可能な未来のために、企業や行政、ボランティアなどが連携してどのようなことができそうでしょうか。
持続可能な未来を作るためには、社会の課題解決に向けて、自ら考え、能力を発揮して実現できる力が必要です。これはボランティア活動を通して身につけることができるものです。冊子では、ボランティアの受け入れ側がそうした学びの機会をうまく生み出すために、これまで多くのボランティアをコーディネートしてきたNPOが実際に工夫している点や、考慮すべきポイントなどを提案しています。
東京2020大会では、市民が持ち寄った携帯電話やパソコンなどの小型家電から金属を抽出しメダルをつくるプロジェクトや、大会で福島県の再生可能エネルギーを使うなどの取り組みも市民発信で進められています。国の主導だけに頼らず、市民一人一人が積極的に行動できる社会になればと思います。
羽仁カンタ(はにかんた)
NPO iPledge代表/「持続可能なスポーツイベントを実現するNGO/NPOネットワーク」(通称:SUSPON)代表/Free the Children Japan理事。国際青年環境NGO「A SEED JAPAN」を1991年に設立。代表として活動する傍ら、全国の野外音楽フェスティバルでのごみを削減する「ごみゼロナビゲーション」を立ち上げ、フジロックフェスティバル、ap bank fes、アースディ東京、エコプロダクツなどで展開。2014年にNPO iPledgeとして独立。オリンピックの環境対策を行うプロジェクトを手がけている。