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[サステナビリティ紀行]首脳級ハイレベル政治フォーラムと日本の市民社会の動き
2019/09/27


SDGs策定後、最初の首脳レベルのハイレベル政治フォーラムが開かれました。日本の市民社会からも関連会合への参加やサイドイベント開催などに参加しました。SDGs市民社会ネットワークの教育ユニットで活動するプラン・インターナショナルの澤柳さんに参加者の一人として得た経験についてお話を伺いました。

プラン・インターナショナルとしてSDGsに関わっているのはどのような観点からでしょうか。主な活動の紹介とともに教えてください。

プラン・インターナショナル(以下、プラン)は1937年のスペイン内戦において戦災孤児を支援するために設立されて以来、開発途上国において、教育、子どもの成長、子どもの保護など、子どもたちの意見を取り入れながら地域開発を進めてきました。こうした活動の中で、ジェンダー不平等のために女の子がより困難な状況に置かれており、より支援を必要としていることを経験的に学んできました。現在は、すべての子どもの権利が守られ、女の子が差別されない公正な社会を実現するために、特に質の高い教育(SDG4)とジェンダー平等(SDG5)の達成を目指して活動しています。

今回のハイレベル政治フォーラムの主なトピックや、関連会合で話題になっていたこと、主催されたイベントについて教えてください。


プランが主催するサイドイベントに参加するプランのユース
写真提供:プラン・インターナショナル

今回の気候行動サミットで、温暖化対策に積極的な対策をとらなかった世界の政策決定者たちを糾弾したグレタ・トゥーンベリさんのスピーチに心動かされた方も多いのではないでしょうか。気候変動は若者たちの未来を破壊するだけでなく、弱い立場に置かれている人に強い悪影響を与えるといわれています。プランが主催したイベントでは、性別と年齢という2重の差別を受けている女の子は、気候変動によって、より悪い影響を受けやすいことを明らかにしました。例えば、水汲みが女の子の役割とされることが多い地域で、気候変動によって水源が枯渇し、より遠くまで水汲みに行くことによって学校に通えなくなってしまうということが実際に起きています。女の子が質の高い教育を受けること、ジェンダー平等を促進することは、気候変動に対応していくための重要な要素です。

会合に参加したり、様々なステークホルダーの方とお話しする中で気づいたことや印象に残っていることはどのようなことですか。これからの活動のヒントや参考なることはありましたでしょうか。


国連本部内に設置されたSDG ACTION ZONE 
様々なテーマが話し合われた
写真提供:プラン・インターナショナル

気候変動とともに強い関心が寄せられたテーマは、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(以下、UHC)でした。UHCは、すべての人が基礎的な保健医療サービスにアクセスできることです。「UHCの達成なくしては、SDGsの達成はあり得ない」と多くのイベントで訴えられていました。そして、様々なステークホルダーが「ジェンダー平等を達成しなければ、UHCは達成できない」と強く認識していました。プランとして活動する中で、ジェンダー平等はSDGs達成のカギであると常々感じていますが、そのことを改めて確認するとともに、他のSDGsとジェンダー平等がどのように関連しているのか、より多くの人に知ってもらう必要があると感じました。

SDGs推進に向けたパートナーシップに関して、普段から思うことや団体で心掛けていることなどについて教えてください。

プランは、市民社会と民間のパートナーシップである、「イコール・メジャーズ2030」という取り組みを推進しています。これは、SDGsのすべての目標や指標にジェンダーの視点を取り入れ、データを活用してSDGsの進捗を測り、各国政府に目標達成に向けた努力を促す取り組みです。「持続可能な開発目標」の達成は、データの収集、分析、共有、そして活用の方法をいかに改善するかにかかっています。進捗が遅れている部分を特定できれば、SDGs達成に必要な投資を政府に訴えることができます。プランは今後も、さまざまな団体や機関とパートナーシップを組んで、SDGsの推進に取り組んでいきます。
イコール・メジャーズ2030について
https://www.plan-international.jp/news/girl/20181210_13517/

澤柳孝浩 公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン
アドボカシーオフィサーとして、教育支援の拡充とジェンダー平等を目指して、ユース・エンゲージメントや政策提言を担当。日本政府をはじめ関係各所に働きかけている。支援者サポート部、プログラムの監理業務などを経て、現職。