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[サステナビリティ紀行]気候変動COP25に参加して~パリ協定はどうなるのか~
2020/01/30

2019年12月2日から15日まで,スペイン・マドリードにおいて,国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)が開かれました。パリ協定のもとで今後どのように気候変動対策が行われていくのでしょうか。NGOとして参加した「環境・持続社会」研究センター(JACSES)の遠藤理紗さんにお話を伺いました。

気候変動問題に関してJACSESではどのような活動・政策提言をしていますか。SDGsに関わっているのはどのような観点からでしょうか。

COP25での議題交渉の様子
COP25での議題交渉の様子。このような小さな部屋で
各議題に関する細かな議論が行われ、最後に大きな
会議場で全体会合が開催され、決定文書が出る。

直近ではCOP25前に提言(※)を発表しました。パリ協定は途上国も含め皆で取り組むものですが、温室効果ガス排出量等の現状をしっかり把握できていない国も多く、協定の実効性や公平性を保ち、世界全体の取組強化に向けて、現状把握や報告といった透明性確保とそのための支援が重要と考えています。気候変動と他の問題(貧困、雇用、人権等)との関連も統合的に考えやすく、現在ある課題に加え、将来世代に負の遺産を引き継がないという観点からも、SDGsには積極的に関わっています。

COP25の主なトピックや、関連会合で話題になっていたこと、参加されたイベントについて教えてください。

フロンイニシアティブ設立イベント
COP25会場内のジャパンパビリオンで行われた日本の
フロンイニシアティブ設立イベントの様子。

COP25では、昨年からの積み残しである市場メカニズム(国外で実現した温室効果ガス排出削減・吸収量を各国の削減目標達成に活用できる制度)のルール作りや、野心・NDC(温室効果ガス削減目標及びそのための削減努力)引き上げが注目されました。透明性に関しては、共通の報告フォーマット形式策定等に関する議論がなされました。また、イベントも多種多様で、交渉外で各々の取組を共有する場にもなっているように思います。私は、日本企業の自社製品・技術を活用した海外での取組や、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)やESG投資といった気候変動に関連した金融の動向、日本が主導したフロンのライフサイクルマネジメントに関するイニシアティブ設立、途上国の適応策を支援する適応基金の活動等について紹介するイベントに参加しました。

会合に参加したり、政府やNGOの方とお話しする中で印象に残っていることはどのようなことですか。気候変動対策へのヒントや参考なることはありましたか。

国際交渉も世界全体の方向性を決めるという意味では重要ですが、非政府アクター(自治体、企業、NGO等)の取組が、政策や交渉のどんどん先を行くように思います。社会は目まぐるしく変化しますので、その変化に合わせた柔軟性が気候変動対策にも必要と感じました。そういった意味でも、やはり透明性の高い報告・検証システムとそれをきちんと対策に反映することがパリ協定では重要であり、そのサイクルがきちんと機能することと、社会や技術等の変化に対応できる柔軟性が野心・削減目標や対策の強化にも繋がるのではないでしょうか。

気候変動対策のために必要なステークホルダー連携・パートナーシップについて、提案やコメントがあればお願いします。

国連サイドイベント
COP25での途上国への技術移転に関する
国連サイドイベントの様子。

COP25でも、気候変動との関連で他分野のトピックがいくつか扱われました。例えば、気候変動とジェンダーについては、アクションプランの改定等に加え、気候変動におけるジェンダーの重要性や貢献に関するイベントが一日行われるgender dayもありましたが、日本ではあまり注目されていません。今後は、気候変動と関連・相互に影響する部分について、異なる分野の専門家やステークホルダーとの連携促進が必要と思います。また、最近は将来世代である若者の声をしっかり聴いていくことが大事と言われていますが、それだけでなく、異なる世代間の相互理解・パートナーシップも大切ではないでしょうか。

※日本発の国際社会のサステナビリティに向けた提言~気候変動対策と貧困対策の統合的解決を目指して~<地球規模での気候変動対応と日本の貢献のための提案 Ver.5>
http://jacses.org/559/

遠藤理紗プロフィール:遠藤理紗(えんどうりさ)
特定非営利活動法人「環境・持続社会」研究センター(JACSES)事務局次長
マンチェスター大学修士課程修了後、保険・エネルギー関連の民間企業での勤務を経て、2014年からJACSESスタッフ。気候変動・SDGsに関する政策提言、普及啓発等を行う。COP25では、NGOメンバーとして日本政府代表団に参加。(一社)SDGs市民社会ネットワーク事業統括会議進行役も務める。