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[サステナビリティ紀行] 誰もが輝ける“今”をつくる
2020/07/9


2020年はSDGs達成のための“行動の10年”の最初の年です。各地でもさまざまな活動が始まっていますが、教育の不平等や経済格差の問題は、見えない貧困が増える中で深刻化していると言われています。難しい問題に対しての作戦の一つとして“フットサル”を取り入れた団体があります。沖縄で活動する一般社団法人daimonの糸数温子さんに伺いました

質問1:糸数さんの所属する団体と、主な活動についてご紹介ください。

私は2012年にフットサル大会「ダイモンカップ」を立ち上げ、コミュニティデザインを実践するNPOを立ち上げました。市民向け、企業研修、福祉事業の利用者、そして支援者それぞれに対して、個人の問題に還元されがちな社会構造の問題について、それぞれが自分自身の経験だけで分かったつもりになる前に、「まずは一緒に過ごしてみませんか」というアクティビティを提供しています。誰かを排除する言葉かけをしない人がひとりでも増えてくれるといいなと思ってやっています。


「ダイモンカップ2017 in国際通り」
国際通りを占拠して、多様な人のつながりが交差するフットサル大会を実施。

質問2:教育の不平等や格差について問題意識をお持ちとのことですが、SDGsを知ってから得た視点や学びはありますか?SDGs達成に大事だと思うことはどのようなことでしょうか。


お母さんのためのフットサル大会の1場面

はじめてSDGsについて知ったとき169のターゲットの目標設定の詳細さに驚きました。
沖縄県内における「子どもの貧困」対策にかかる施策をSDGsと照らし合わせると、具体的な目標達成へのプロセスが描かれていないことに気づきます。例えば、SDGsの「目標1 貧困をなくそう」では、「1.3 各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度および対策を実施し、2030年までに貧困層および脆弱層に対し十分な保護を達成する」というものがあります。生活保護の「捕捉率」の低さや、相対的貧困率の高さが顕著な沖縄では、脆弱層に対して十分に社会保障が行き渡っているかなど、指標があることによって自分たちの地域にできることを問うことができます。目標ありきになってはいけないですし、その目標設計も難しいのですが、具体的な数値目標を多様なアクターで共有していくことが大切だと思います。

質問3:スポーツを通じて多様な人たちがコミュニケーションを図れることは課題解決のヒントだと思います。これまでに得られた良い変化はどのようなことでしょうか。
スポーツの可能性についてはどのようなお考えでしょうか。


平日は、多様な団体の集うフットサル大会

私達は、ダイモンカップを通じて「社会問題」に関心のなかった方でも無意識に「支援」に関われる場作りを行ってきました。スポーツの面白いところは、その場にいるだけで「役割」が与えられ、会場にいる間は、職業も年収も学歴も関係なく、お互いの関係性がフラットになって助け合うことで、ひとびとを広く繋いでいくところだと思います。
私自身は現在「代表理事」職を3年間お休みして、これまで私たちがダイモンカップを通じて実践してきた活動を相対化するため博士課程に進学しました。スポーツの可能性という意味で、スポーツと社会包摂の理論を学び、現場の方々を支えられるような研究成果を発信していきたいと考えています。今後とも、志ある方々とつながっていきたいです。

質問4:誰もが輝ける地域にするために、ステークホルダー連携やパートナーシップについて提案や期待していることがあればお聞かせください。


薬物依存、精神障害、困窮など障害者雇用を
考える研修会も合同で実施しています

「誰一人取り残さない」というSDGsのスローガンって面白いですよね。これを達成するためには、私たちひとりひとりが「当事者」として社会保障を設計しないといけない。ただ、自分とは違う状況にある人々の暮らしを知ってるつもりになりがちなので、多様なアクターの知見をお互いに持ち寄っていくなかで自分自身の問題と接続させて考えることができると思います。私たちもこのコロナ禍において、沖縄において子どもの貧困対策事業に関わるNPO団体のネットワーク「沖縄セーフティネット協議会」として、沖縄県議選に向けて貧困や社会保障に関する議論を前進させるために「公開質問状」を連名で提出するなどの連帯したアクションを行ったりしました。多様な団体が協力しあっており頼もしく感じています。

「沖縄セーフティネット協議会」https://hinkyookinawa.wixsite.com/website

糸数温子プロフィール:糸数温子
1986年、沖縄県那覇市出身。「誰もが誰かのセーフティーネットであり続けられる社会の実現」を掲げて一般社団法人daimon創設。琉大特命助教を経て、現在は日本学術振興会特別研究員DCとして一橋大学博士課程に在籍。沖縄を拠点に、講師やコメンテーターを務め、沖縄における貧困対策に関わる学術研究を基にした発信を続けている。http://atz.daimon-okinawa.com/