[サステナビリティ紀行]脱炭素社会に向け、環境活動情報を発信しつづける
2021/05/26
2050年の「脱炭素社会」を実現するために、企業や行政など様々なセクターが取り組みを加速させています。そして、環境問題に対する一般市民の関心も、SDGsへの注目とともに高まっているように感じます。脱炭素の暮らしやそれに向けた活動は、どのようにすれば実現できるのでしょうか。「エコギャラリー新宿(新宿区立環境学習情報センター)」という社会教育施設の指定管理者として、新宿における環境活動をコーディネートされているNPO法人新宿環境活動ネット 代表理事の飯田 貴也さんにお話を伺いました。
質問1:「エコギャラリー新宿」の活動について教えてください。最近発信している情報や実践している取り組みには、どのような特徴がありますか?
新宿は“オフィス街”“学生街”“観光都市”“国際都市”など、多くの個性的な顔を持っています。そこで「エコギャラリー新宿」では、このような多様な人・モノ・情報が行き交う“新宿らしさ”を活かし、立場や分野を越えた連携・協働を重視した運営を行っています。こどもから大人まで、幅広い皆様に向けた多岐に渡る事業がありますが、事業ごとに色々なコラボレーションが生まれ、Win-Winの学び合いが実現しています。最近では、「SDGs(持続可能な開発目標)」という国際目標と自分たちの地域や自身の生活とのつながりを考え、一歩踏み出して行動していただけるような情報発信や事業運営を心掛けています。
エコギャラリー新宿
質問2:最近では、「脱炭素社会」や「SDGs」について一般の新聞、雑誌やテレビでもよく目にするようになったと思いますが、「エコギャラリー新宿」でお仕事をされている中で変化は感じますか?
例えば、小学生に環境に関する日記を書いてもらう『新宿区「みどりの小道」環境日記コンテスト』という事業があります。新宿区内では毎年800~1,000名程のこどもたちが5週間以上取り組んでコンテストに応募してくれていますが、その内容を見ても、当たり前のように「脱炭素」「カーボンニュートラル」といったキーワードやこれらに関連する記載が見られ、「SDGs」についても数多く書かれています。特にここ数年は、こうした機運の高まりを感じます。
出前授業
質問3:飯田さんは、地球環境パートナーシッププラザの次世代運営委員です。次世代を担うお一人として、環境問題やSDGsに関して、どのような思いをお持ちですか? 仕事以外でも活動していることなどがあれば、教えてください。
仕事以外の活動としては、「日本ESD学会 若手の会」「日本ESDユース」といったユース世代のコミュニティ運営に携わっています。サスティナビリティをテーマに同世代がつながることでお互いを高め合い、ユースの声を社会に発信していく一助となるような活動を行ってきました。
いくつかの国内調査では、若い世代ほどSDGsに対する認知度や関心が高いといった結果が報告されています。自分で言うのはおかしいかもしれませんが、これから私を含めた「ミレニアル世代」、もっと若い「Z世代」と呼ばれるような環境意識の高いユース世代が続々と大人になっていく未来に対して、希望と可能性を感じています。先輩方からのバトンをしっかりと受け継ぎ、私自身も勉強し続けながら、環境活動の輪を広げていきたいと考えています。
日本ESD学会若手の会
質問4:新宿環境活動ネットは、多様なセクターによる連携・協働を重視した活動を展開していらっしゃいます。環境問題解決やSDGs達成に向けて、これから必要とされるステークホルダー連携やパートナーシップについて、提案や期待していることがあればお聞かせください。
SDGsは、副題として「Transforming our world(我々の世界を変革する)」が掲げられています。これは、現在の道のりの延長線上に目標があるのではなく、目標から逆算して今の私たちの生活やライフスタイル、価値観などを“変革”していく必要があるということです。そして、“変革”を推し進めるためには、新しいマインドやシステムへの切り替えが求められます。先ほどご紹介した通り、SDGsの世界では若い世代ほど意識が高い“逆年功序列”とも言える状況が起こっています。その上で、SDGs達成に向けた環境活動をより一層促進していくためには、「ユース」を巻き込み、「ユース」の力を借りる必要があります。年齢差にとらわれず、世代を越えた“異文化交流”を推進していくことが“変革”の原動力になるのではないかと考えています。立場や分野、地域、ジェンダーなどの多様性と併せて、「ユース」を含めた世代バランスへの配慮が当たり前の社会にしていくことが、SDGsの目標達成に向けた近道だと信じています。私自身もいわゆる「ユース」として15年近くにわたって活動してきた当事者経験を活かし、これからは自分よりも若い世代が存分に活躍できる環境を作る側に回れればと考えています。
プロフィール:飯田貴也(いいだ・たかや)
NPO法人新宿環境活動ネット 代表理事。「環境学習コーディネーター」として学びの場づくりを手掛けながら、「ESD円卓会議」(環境省・文部科学省)、「日中韓環境教育ネットワーク国内委員会」(環境省)、「環境パートナーシップオフィス運営委員会」(環境省)等の委員としてユースの声を発信している。