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[サステナビリティ紀行]国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF)と日本の市民社会の動き
2021/07/28

7/6~7/15に国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF)が開催され、同時に様々なイベントが開催されました。
今年日本政府は、第2回目となる自発的国家レビュー(VNR)を発表しました。市民社会としてVNRに対する「スポットライトレポート」がSDGs市民社会ネットワークによってつくられました。この作成にも関わられたワールド・ビジョン・ジャパン(以下、WVJ)の柴田哲子さんにお話を伺いました。

質問1:ワールド・ビジョン・ジャパンでSDGsに関わられているのはどのような観点からでしょうか。主な活動の紹介とともに教えてください。

WVJは、すべての子どもたちが健やかに成長できる世界を目指し、開発援助・緊急人道支援・アドボカシーを行う国際NGOです。アドボカシーでは、SDGsの策定以前から、SDGsの諸目標の中に子どもの健やかな成長を担保する項目が組み込まれることを目指し、国内外で政策提言や政府との対話等を通じてSDGsの策定過程に影響を与えるべく働き掛けを行ってきました。SDGs策定後は、目標の達成に向けた進捗をフォローし取り組みを加速するよう、国内外で様々なステークホルダーと連携し、政策対話や啓発イベント、キャンペーンなどを行っています。

質問2:今回、HLPFイベントの一つとして、日本におけるVNRプロセスの経験を共有するVNR Labs(VNRラボ)が開催され、市民社会として柴田さんもご登壇されました。どのようなイベントだったか、感想も含め教えてください。

VNR Labs(VNRラボ)は、閣僚級で行われる自発的国家レビュー(VNR)を補完する目的で毎年開催されているイベントで、今年は“Resilience, Recovery, Hope”をテーマに17のセッションが開催されました。
私は、7月16日に開催された日本政府主催のセッションに、日本の経済界・地方自治体・市民社会のメンバーとともにパネリストの一人として登壇させていただきました。日本政府によるVNR策定までの取り組み紹介の後、パネルディスカッションでは、各界からの登壇者が、3つのガイディングクエスチョン(SDGsへの取り組みや課題、VNRを通じて得られたことと課題、国際社会との連携)に対し、それぞれの立場から意見を述べました。
日本時間の金曜夜という時間帯でしたが、国内外から多様な参加者が数多く参加し、フロアからの質問も多数出され、とても活発な会でした。HLPF自体が学びの共有を通じたSDGsの実施促進を目的としていますが、フロアからの質問等を踏まえると、各国の様々なステークホルダーが他国の経験を如何に自国のSDGs実施促進に役立てるかについて、真剣に考えていることを実感しました。


2021年のHLPFにて。オンライン開催されたHLPFイベント、VNRラボの様子。経済界・地方自治体・市民社会のマルチステークホルダーによる議論が行われました。
 

質問3:今年、日本政府は第2回目となる自発的国家レビュー(VNR)を発表しました。また、日本の市民社会も、SDGs市民社会ネットワークがVNRに対する「スポットライトレポート」を発表し、その作成には柴田さんも関わられたとのことです。VNRの感想およびスポットライトレポートについてご紹介ください。

私は、2017年に行われた日本政府による第1回目のVNRもニューヨークで傍聴させていただきましたが、その時と比べ、今年の第2回VNRやVNRラボでは、日本政府が市民社会を含むマルチステークホルダー連携を従来以上に重視するようになったことが感じられ、大きな前進と感じました。一方、引き続きの課題は、SDGsの進捗を測定するためのデータの不足です。2030年の目標達成に向けて、私たちが現在どの地点にいて、ゴールまでどれくらいのギャップがあるのかが客観的に評価できないため、どのように資源を投入すればよいのかわからない状態です。
市民社会によるスポットライトレポートは、SDGsの17のゴール毎に、市民社会から見たSDGsの達成状況の評価と課題をSDGs市民社会ネットワークのメンバーが執筆したものです。私は開発ユニット幹事として執筆に関わったほか、戦略チームメンバーとしてレポートの全体とりまとめを担いました。政府によるVNRでは注目されないけれど、特に「誰一人取り残さない」という点から市民社会として重視する課題に光を当てるという意味で「スポットライトレポート」としています。


2018年のHLPFにて。子どもに対する暴力撤廃に関するサイドイベントを国連諸機関と共催し、日本の市民社会の取り組みを紹介しました。
 

質問4:SDGs推進に向けたパートナーシップに関して、普段から思うことや団体で心掛けていることなどについて教えてください。

SDGs自体がマルチステークホルダーで形成・策定されたということもあり、SDGsの目標達成には益々国内外での連携が不可欠になっています。
例えば、SDG16.2(子どもに対する虐待、搾取、取引、あらゆる形態の暴力及び拷問をなくす)の達成を目指すアドボカシーでは、国内外の多様なステークホルダーと連携することにより、日本政府の積極的な関与を引き出すことに成功し、政府・企業・国際機関・専門家・市民社会といったマルチステークホルダーによる「子どもに対する暴力撤廃のための国別行動計画」の策定に繋がりました。
行動計画の策定過程では多くの課題や困難も経験しましたが、これらの経験を通じて、立場の異なるステークホルダーによるパートナーシップで物事を前進させるためには、単に批判するのみでなく、相手の立場に立ってどうしたら前に進めることが出来るかを真剣に考え、異なる立場からの視点とともに積極的に提案・議論する姿勢の重要性を実感しました。

 
●国連HLPF 2021: https://sustainabledevelopment.un.org/hlpf/2021
●VNR Labs 2021:https://sustainabledevelopment.un.org/content/documents/27862VNR_Labs_Flyer_2021.pdf
●日本政府によるVNR 2021:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/vnr/
●ワールド・ビジョン・ジャパン:https://www.worldvision.jp/news/advocacy/20210720.html
 

柴田哲子プロフィール:柴田哲子(しばたのりこ)
特定非営利活動法人 ワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)アドボカシー・シニア・アドバイザー
国際協力銀行、国際NGOジェン アフガニスタン事務所長を経て、2011年にWVJ入団。2013年よりアドボカシーに携わる。
(一社)SDGs市民社会ネットワーク事業統括会議進行役・開発ユニット幹事、教育協力NGOネットワーク副代表も務める。
東京大学大学院総合文化研究科修士(国際貢献)。