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[サステナビリティ紀行]海洋プラスチックごみの問題解決に向けて
2021/09/24


プラスチックごみの問題に関してさまざまな取り組みが行われています。海洋に流出したプラスチック廃棄物は、海鳥をはじめ、様々な生きものや、海洋生態系に甚大な影響を与えています。また、プラスチックは化石燃料に由来し、さらに、現状ではプラスチック廃棄物の多くが焼却されていることから、地球温暖化対策の面からも問題となっています。
この問題に対して日本野鳥の会ではセミナーを開き、会員や一般の方に対して問題点を伝え、解決方法を考えていただく機会を提供しています。担当の岡本さんにお話を伺いました。

質問1:日本野鳥の会で海洋プラスチックごみに関しての連続セミナーを企画・開催されたことにはどのような背景や理由がありますか。団体の主な活動の紹介とともに教えてください。

日本野鳥の会は、野鳥をシンボルに、その生息環境の保全に取り組む、自然保護NGOです。
プラスチックの問題には、海鳥と海洋環境保護の一環として取り組んでいます。海洋プラスチックは800種を超える生物に影響を与えており、毎年100万羽の海鳥、10万頭の海棲哺乳類、ウミガメや魚が命を落としているといわれています。海鳥は、プラスチックを摂取することで消化器官が傷ついたり、必要な食物が取れずに栄養不良になるおそれがあるほか、プラスチックに含まれる化学物質が体内に蓄積することもわかってきています。私たち人間も、海から様々な恵みを受けて暮らしており、現在海鳥や海洋環境に起きていることは、私たち自身の未来とも無関係ではありません。こうした問題を多くの方に知っていただきたいと、連続ウェビナー「海洋プラスチックの問題を考えよう」を開催しています。


プラスチックごみに囲まれるコアホウドリ 写真:OWS
 

質問2:これまで開催されたセミナーではどのような議論や課題が出てきましたか?参加された方はどのような印象を受けたり、これからの行動を変えるきっかけを得たりしましたか。

ウェビナーでは、海鳥や生きものへのプラスチックの影響のほか、政策面の課題や、国内外の動向など、様々な切り口でこの問題を掘り下げ、プラスチックに頼らない社会を実現するためにできることを考えています。現在、第三回まで終了していますが、参加者からは「海鳥や海洋環境の写真・映像を通じて、問題の深刻さがわかった」「現在の政策の問題点、課題がわかった」等の感想をいただいております。また、「日常生活でプラスチックを減らす工夫を聞き、やってみようと思った」「自分にできることをもっと知りたい」という声も多く寄せられ、プラスチックの問題を知る・学ぶだけでなく、「行動に移したい」という方が増えていることがうかがえます。


連続ウェビナーの様子
 

質問3:日本野鳥の会では、自然保護に関する様々な政策提言をされていますね。SDGsに関連した活動や政策提言など、最近注目のテーマがあればご紹介ください。

日本野鳥の会は「減プラスチック社会を実現するNGOネットワーク」の一員として、プラスチックに関する政策提言を行っています。同ネットワークでは、2021年2月に「脱プラスチック戦略推進基本法(案)」を発表しました。ここでは、2030年までに自然環境へのプラスチックの流出ゼロ、使い捨てプラスチックの原則ゼロを実現し、さらに、2050年までに化石燃料由来のバージン・プラスチック(新たに生産されるプラスチック)に依存しない社会を築くための基本理念を示しています。この法案がこれからの政策に反映されるように、政府に働きかけていきたいと思います。


自由にダウンロードできる学習教材「海洋プラスチックごみについて考えよう」
▶教材「海洋プラスチックごみについて考えよう」を作成しました:
https://www.wbsj.org/activity/conservation/law/plastic-pollution/kyouzai/
 

質問4:SDGs達成に向けたパートナーシップに関して、普段から思うことや団体で心掛けていることなどについて教えてください。

今回のテーマ「海洋プラスチック」は、社会全体の課題であり、その影響は非常に広範囲にわたります。現在、日本野鳥の会の会員・支援者数は全国に約50,000人ですが、このような問題に対応するには、より社会に広く働きかけていく必要があります。SDGsの中にも「14.海の豊かさを守ろう」「12.つくる責任つかう責任」等、関連する目標がありますが、SDGsが広まることで、NGO、企業、政府など立場の異なる者が課題を共有しやすくなるのではないかと思います。SDGsを入り口に、多くの方と対話を重ね、この問題を考えていきたいです。
 
●ウェビナーの情報はこちらから:
https://www.wbsj.org/activity/conservation/law/plastic-pollution/
●「脱プラスチック戦略推進基本法(案)」を策定
― NGOが共同提言する日本のプラスチック関連施策の在り方 ―
https://www.wbsj.org/activity/press-releases/press-2021-02-12/

 
柴田哲子プロフィール:岡本裕子(おかもとひろこ)
公益財団法人 日本野鳥の会 自然保護室
千葉県出身。学生時代から地域の干潟の保全活動に関わる。2000年より(公財)日本野鳥の会に勤務。現在、海洋プラスチック対策事業を担当し、セミナーや教材作成等の普及啓発活動や、政策提言活動に取り組む。