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[サステナビリティ紀行]気候変動COP26と周辺の動き
2021/11/25

イギリス、グラスゴーで11月初旬に行われた気候変動枠組条約COP26では、今後の気候変動対策のあり方について様々な議論が展開されました。地球環境の将来を決める大事な会議として世界が注目しており、将来影響を受ける世代として若い人達が声を挙げたことも話題となりました。

参加された国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)の竹本明生さんと丸山鳴さんにお話を伺いました。

質問1:UNU-IASとしてはどのようなかたちでCOP26に関わられたのでしょうか。
UNU-IASの主な活動の紹介とともに教えてください。

UNU-IASは、国連大学(UNU)が設置する14の研究所のうちの1つで、東京を拠点とする研究・教育機関です。UNU-IASは、特にサステイナビリティ(持続可能性)に関する課題の解決を使命とし、現在は「持続可能な開発のためのガバナンス」、「生物多様性と社会」、「水と資源管理」、「イノベーションと教育」という4つのテーマに関連する研究教育を行なっています。

COP26では、こうした教育・研究活動の成果を発信するとともに、多様なステークホルダーとの政策ダイアログを促進させるため、「カーボンニュートラルとSDGs」をテーマにサイドイベントを主催するとともに、「アートと気候変動」をテーマにしたイベントに参加し、専門的な知見を提供しました。

また、COP26で創設を発表したパリ協定専攻コースについて、UNFCCC事務局と今後の連携やカリキュラムの詳細に関する協議を行いました。

COP26でUNU-IASのパリ協定専攻コースに関する記者会見の様子
COP26でUNU-IASのパリ協定専攻コースに関する記者会見の様子
 
【参考リンク】
パリ協定専攻コースについてのプレスリリース
カーボンニュートラルとSDGs
アートと気候変動
 

質問2: COP26では様々な会合やサイドイベントが開催されましたが、参加されて印象に残ったセッションについて教えてください。

COP26のユースデーに開催された気候変動アクションに関する合同大臣サミットが印象に残っています。このサミットでは、議長国の英国をはじめ、各国の環境大臣と教育大臣が参加し、持続可能な社会経済の担い手となる若者への教育を省庁間の連携を通じて実施してゆくことの重要性が強調されました。各国政府からは、環境教育において、省庁間の連携を高めるための約束(Pledge)がビデオメッセージとして発表されました。さらに、このセッションには、ユースの代表団も参加し、気候変動に関するカリキュラム開発や政策決定にユースが参加することの必要性を訴えました。

【参考】
セッションの録画
 

質問3:会議開催中に現場からのレポートを伝える企画として、地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)を通じてネット配信をされていましたが、このようにリアルタイムに発信する意義や、現地で見聞きされた情報発信に関しての注目すべき動きなどがあれば教えてください。

今回の企画では、私たちの目線から現地の映像をお届けすることで、報道等では目にしない会場の今の様子などをユニークな視点でお伝えすることができたと考えています。世間の関心が高い時に、こうしたリアルタイムの発信を行うことは、幅広い層への関心を喚起することにも繋がりますし、気候変動アクションへのモメンタム形成にも役立つものと考えています。

現地での情報発信については、UNFCCC主催のイベントのほか、各国が設置したパビリオンでは自国の特色を生かしつつ最新の技術とノウハウを用いたハイブリッド形式のイベントが開催され、コロナ禍を経てオンラインと対面の双方のメリットを組み込んだ新しい情報発信のあり方を伝えることができました。

イベントでは気候変動行動に関わる様々な人達の10秒間メッセージをまとめた動画を放映したり、AIなど最新技術を使って地球環境を可視化した映像を流すなど、参加者の五感に直接働きかける手法が使われていたことが印象的でした。

【参考】
GEOC YouTubeチャンネルでのアーカイブ動画
UNFCCCによるCOP26のイベントの録画アーカイブ
 

質問4:気候変動対策に向けたパートナーシップや分野間の連携に関して、印象に残ったことなどがあれば教えてください。

分野間の連携に関して印象に残ったのは、気候変動の科学的な分野と芸術分野の連携を加速してゆこうという動きでした。日本でも「アート×気候変動」をテーマにした企画を最近見かけるようになりましたが、今回のCOP26でも、UNFCCCの公式サイドイベントとして、アートをテーマにしたイベントがいくつか開催されていました。

ドイツのボンにある国連大学環境・人間の安全保障研究所(UNU-EHS)が主催したイベントでは、映画監督と研究者が登壇し、科学と芸術が連携して人々の気候変動対策へのアクションを加速させるための方策について議論が行われました。映像作品は科学誌では伝えることが難しい「ストーリー」を伝えることができる点、また、科学ではアプローチできない人々の声を届けることができる点といったメリットが強調されました。これは、様々な立場や異なる関心を持つ人々を一つにまとめて気候行動の加速につなげることのメタファーであるとの意見もあり、実現が困難とされるパリ協定達成のためにはアーティストとの連携が不可欠であるとの認識が共有されました。


写真:アート&サイエンスに関するサイドイベントの様子

【参考】
▶動画:Arts & Science: The new inspiration couple?
 

竹本明生プロフィール:竹本明生(たけもとあきお)
国連大学サステイナビリティ高等研究所プログラムヘッド
環境省にて気候変動対策、環境アセスメント等に関する法案作成、気候変動適応計画の策定、家電エコポイント制度などの政策を担当。2018年より地球環境ファシリティにて途上国の環境保全プロジェクトのファイナンスを担当。2020年6月から国連大学にて気候変動対策とSDGsのシナジー、SDGsに関するガバナンス、持続可能な開発のための教育(ESD)等の研究、教育、アウトリーチ活動を実施。


丸山鳴プロフィール:丸山鳴(まるやま めい)
国連大学サステイナビリティ高等研究所プログラムコーディネーター
2015年より国連大学にて地球環境パートナーシッププラザ業務を担当し、国連の主要なアジェンダやUNU-IASの取り組みに関する普及啓発に取り組む。省庁、NGO、研究者など多様なステークホルダーと連携し様々なアウトリーチ活動を国内外に向けて実施。