[サステナビリティ紀行]湿地の保全と再生の活動
2022/01/25
世界の湿地の保全とワイズユース(賢明な利用)を目的としたラムサール条約(特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約)が1971年2月2日に採択されたことを記念して、毎年2月2日は「世界湿地の日(World Wetlands Day)」とされています。湿地の保全と再生の活動を行っている日本国際湿地保全連合の長倉さんにお話を伺いました。
質問1:ラムサール条約や湿地に関する環境問題とはどのようなことが主に挙げられますか?団体の主な活動の紹介とともに教えてください。
湿地はかつて使い勝手の悪い不毛な場所と捉えられていました。そのため、経済発展に伴う開発等を背景に世界中で多くの湿地が失われてきました。しかし、生物多様性や気候変動への注目が集まる中でその重要性が改めて認識されるようになっています。特に、気候変動の影響で洪水などの水に関連する災害が増加している昨今、炭素吸収源としての価値や災害の影響緩和の役割は注目を増しています。私たちの団体では湿地の保全や再生を図り、ワイズユースを促進することを目的に、様々な観点から調査研究や事例収集、普及啓発などの活動を行っています。
2018年10月にドバイで開催されたラムサール条約COP13にて。
アジア湿地シンポジウム2017の概要と成果についてサイドイベントを開催。
質問2: 毎年「世界湿地の日」に関するシンポジウムを開催なさっていますが、ここではどのようなテーマや議論が展開されているのでしょうか。今年のシンポジウムについても教えてください。
水、生物多様性、気候変動、防災・減災など毎年異なるテーマがラムサール条約では設定されているので、テーマに沿ったゲストを迎えて議論が展開されています。今年のシンポジウムは「人と自然のために、湿地を守る行動を始めよう」をテーマに行政、研究機関、NGOなど、それぞれの視点から話をしてもらう予定です。今回もZoomのウェビナーで開催しますので、お気軽に登録して参加していただければと思います。
質問3:湿地の保全と再生について、SDGsに関連した活動や政策提言など、最近のお取組みがあればご紹介ください。他のゴールとのつながりで注目していることなどはありますでしょうか。
湿地は水や食料の供給、水の浄化や洪水の調整、レクリエーションや観光資源等の多様なサービスを提供し、SDGsの目標とターゲット項目の多くを達成する上で、中心的な役割を果たすと考えられています。当団体は日本におけるラムサール条約のCEPA(コミュニケーション、能力養成、教育、参加、普及啓発)のNGOフォーカルポイントの役割を担っていることもあり、今回の世界湿地の日記念シンポジウムが湿地の保全と再生について考える機会になればと考えています。
質問4:SDGs達成に向けたパートナーシップに関して、普段から思うことや団体で心掛けていることなどについて教えてください。
当団体の日頃の活動とSDGsのターゲット17.17(さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する)が関連していると感じています。研究者と連携した生物多様性調査の実施、地域のNGOや自治体と連携したワイズユースの推進、市民調査を通じた環境教育、防災・減災に着目した伝統知の収集や発信、国連世界湿地の日のイベント開催、国際連携など、幅広い活動を行っています。
2019年9月に生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR)のプロジェクトのワークショップを開催。
九州大学の協力を得てアジア各国の専門家と佐賀のサイトを訪れた時の様子。
【参考】
2022年世界湿地の日記念シンポジウム
プロフィール:長倉恵美子(ながくらえみこ)
特定非営利活動法人日本国際湿地保全連合
シニアプログラムオフィサー
環境再生保全機構での環境NGOへの助成、石綿健康被害救済関連業務を経て2013年より現職。ラムサール条約に関する湿地のCEPAの活動や関連業務、生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR)のプロジェクトに携わる。