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[サステナビリティ紀行]生物多様性に関する国際的な動き
2022/05/17


5月22日は国際生物多様性の日です。国連大学では今年のテーマ「Building a shared future for all life 」に沿って今年、中国・昆明で開催される予定のCOP15での採択を目指す「ポスト2020生物多様性枠組」に向けてシンポジウムを開き、国内外の動向を共有しました。こうした生物多様性の国際的な動きを長年ウォッチされ、ご自身ではサンゴの保全活動をしている、コーラル・ネットワークの宮本育昌さんにお話を伺いました。

質問1:生物多様性に関してのご活動を長くされていらっしゃいますが、最近の話題となっている生物多様性問題にはどのようなものがありますか?ご自身の活動も含めてご紹介ください。

生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)は、2020年に発行した地球規模評価報告書で、生物多様性の劣化の直接要因を「土地/海域利用変化」「直接採集」「気候変動」「汚染」侵略的外来種」としています。私たちが取り組んでいる「リーフチェック」は、サンゴ礁の健康状態の変化を継続して観ていく活動です。そのため、これらの直接要因の中では、長期的かつ広範囲に影響する「気候変動」に最も注目しています。

渡嘉敷島でのリーフチェックの様子

質問2: 生物多様性条約に関して、3月にジュネーブで開かれた会合にも出席されたとのことですが、どのような議論がされているのでしょうか。今後の見通しや、重要と思われる点についてお考えをお聞かせください。

ジュネーブでは、2010年の生物多様性条約COP10@名古屋で決まった愛知目標の次の目標「ポスト2020生物多様性枠組(GBF)」について、8月開催予定のCOP15@中国・昆明での検討案を確定する予定でした。しかし、逆に原案に多くの文言が追加され、「まるでクリスマスツリーのよう」になってしまいました。そのため、急遽6月に追加会合がケニア・ナイロビで開催されることになり、私も参加する予定です。GBFには気候変動関連の目標もあり、昨年秋の気候変動枠組条約COP26@英国・グラスゴーで注目が集まった「気候変動と自然はコインの裏表であり、同時に解決すべき」という論点がどのように反映されるか注目しています。

生物多様性条約ジュネーブ会合の本会議場の様子

質問3:海洋保全と再生について、SDGsに関連した活動や政策提言など、最近のお取組みがあればご紹介ください。他のゴールとのつながりで注目していることなどはありますでしょうか。

SDGs市民社会ネットワークの環境ユニットに参加し、SDG14に関して取り組んでいます。昨年7月に発行された「スポットライトレポート」には、サンゴ礁に限らず漁業なども含めた海洋の問題について、ユース団体と共に提言をさせていただきました。具体的には、サンゴ礁生態系にも悪影響を及ぼす陸上からのプラや赤土などの流入を防ぐ法規制の強化、GBFにおける海域保護面積の拡大と海洋基本計画の紐づけ、などを挙げています。

質問4:SDGs達成に向けたパートナーシップに関して、普段から思うことや団体で心掛けていることなどについて教えてください。

私たちの活動の中心である「リーフチェック」は、ダイビングサービスなどの地元の方、サンゴ礁生態系の研究者、そしてボランティアのレジャーダイバーが一緒に取り組む活動です。そのパートナーシップにおいては、活動の目的「将来に渡って素晴らしいサンゴ礁を楽しむ」は参加者全員にメリットがあることを分かっていただくこと、そして科学的であると同時に一般の方にも分かりやすい言葉を使ってサンゴ礁生態系についての理解を深めていただくことを心掛けています。今後も力を合わせて、サンゴ礁生態系の保全を進めていきます。
 

プロフィール:宮本育昌(みやもと やすあき)

宮本育昌コーラル・ネットワーク代表
コーラル・ネットワーク発足(1998年)当初から、リーフチェックの推進にボランティアで取り組んでいる。2021年3月に環境コンサルタントとして独立し、本業でのサンゴ礁生態系保全への貢献も目指している。