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[サステナビリティ紀行]G7に向けて活動する市民社会
2023/05/30

5月19日から21日まで広島にてG7が開催されました。G7に向けた市民社会による活動は毎年議長国を中心に各国でも行われており、日本でもさまざまな取組が展開されました。全国の市民社会組織と社会課題の解決に携わる個人とをネットワークして活動しているG7市民社会コアリション2023の事務局の老松京香さんにお話を伺いました。

質問1:G7に向けた市民社会の活動とはどのようなものでしょうか。G7市民社会コアリション2023の主な活動も合わせて教えてください。

7年に一度の「日本がG7の議長国を務める年」が再びやってきました。G7の人口は世界の10%にも満たない一方、経済大国であるG7の決断と約束には、依然として世界中に影響を与える力があります。その成果文書に市民社会からの声が反映され、「誰ひとり取り残さない社会」の実現に寄与することを目指して、「G7市民社会コアリション2023」という市民社会のネットワークが立ち上がりました。2022年5月の設立以降、2023年4月末までに122の団体と78名の個人がコアリションに参加しています。

G7市民社会コアリション2023ウェブサイト

目玉となる活動は、国内外の市民社会と協力した政策提言です。G7議長国の市民社会(Civil Society)として、今年1年間、世界72ヶ国・700名以上の市民からなる国際的な政策提言プロセス「Civil7(C7)」を運営しています。従来のC7サミットで取り上げられてきた5つの分野別課題(気候・環境/経済/国際保健/人道/社会・人権)に加え、サミット開催地広島で平和・核廃絶に取り組む市民団体からの提案を受けて新設した「核兵器廃絶」という計6つのトピックについて、作業部会ごとに議論を重ね、C7政策提言書(C7コミュニケ)を作成しました。4月12日にはC7代表団が首相官邸を訪問し、G7議長を務める岸田文雄総理に対し、完成したC7政策提言書を手交しました。

C7政策提言書・付属文書・声明 

岸田総理へのC7政策提言書手交(Photo by ソー写ルグッド / 宿野部隆之)(岸田総理へのC7政策提言書手交(Photo by ソー写ルグッド / 宿野部隆之))

質問2:4月には東京でC7が行われ、海外からもNGOの人たちが来ていました。他のステークホルダーや省庁からの出席もあったのでしょうか。この会合で議論されたテーマなど、概要や結果などを教えてください。

政策提言書手交の翌日、4月13日・14日には東京プリンスホテルで「C7サミット」を開催しました。2日間で2つの全体会、17の分科会を執り行い、先述した6つのトピックを中心にしつつ、食料安全保障のような分野横断的な課題も扱っています。G7に含まれる7か国だけではなく、アフリカ・アジア・中南米など世界中から参加者が集まり、国内外の市民社会がグローバルに交流・議論する機会となりました。核兵器に関する映像資料もC7サミット開催中に限定公開されました。

コアリションの活動においては、日本政府や他のエンゲージメント・グループとの連携を重視しており、C7サミットにも幅広いセクターの方々にご出席いただきました。オープニングセッションでは山田賢司・外務副大臣にご登壇いただき、C7政策提言書を手交。「C7の提言は、G7に多様でかつ幅広い視点を与えるもの」として歓迎されました。全体会では、G7サブシェルパを務める中村和彦・外務省経済局審議官、および牛草哲朗・農林水産省大臣官房審議官と各作業部会代表者との対話の機会がそれぞれ持たれるとともに、財務トラック代表との対話には三村淳・財務相国際局長が登壇されました。加えて、人道支援と紛争のトピックを扱った分科会には日下部英紀・外務省国際協力局審議官が、ビジネスと人権に関する分科会にはティモテウス・フェルダー=ルセッティ・ドイツ連邦共和国大使館 東京 厚生労働参事官が登壇され、各個別課題に対する見解を述べられました。また今回のサミットでは、エンゲージメント・グループ間の連携強化に主眼を置いた分科会を開催し、Labour7(労働)、Pride7(LGBTQIA+)、Think7(シンクタンク)、Women7(女性・ジェンダー)、Youth7(若者)、Science7(科学者:ビデオメッセージ)の代表者を交えて、更なる連携に向けた道筋が議論されました。

C7サミット初日、グローバルな市民社会メンバーと(Photo by ソー写ルグッド)(C7サミット初日、グローバルな市民社会メンバーと(Photo by ソー写ルグッド))

質問3:広島ではどのような活動をされましたか?現地の市民団体や、各地から来る方たちとの交流もあったと思いますが、G7のような機会を日本の市民社会がどう活用できるか、すべきかなど、活動のヒントや感じたことなど教えてください。

5月のG7首脳会合開催期間中は広島に赴き、C7の政策提言内容や市民社会の活動・問題意識を多くのメディアに取り上げてもらうためのメディアワークを行いました。核兵器廃絶はもちろんのこと、他にも環境や人権など、多種多様な個別課題に取り組む市民団体が全国各地から広島に集結し、国内外のメディアに向けて記者会見やアクション、インタビュー対応などに取り組んでいました。

C7としては、C7作業部会ごとの記者会見や、エンゲージメント・グループ共同記者会見を実施。G7サミット最終日の記者会見では、市民社会の立場からみたG7首脳宣言の評価を発表しました。環境や人道など多少の前進が見られた分野もあったものの、C7全体の評価としては「雨(5点満点中2点)」模様となりました。

C7記者会見開催報告

G7広島サミットは「雨」 市民社会が総括(G7広島サミットは「雨」 市民社会が総括)

日本の市民社会にとって、G7は次の3つの「チャンス」になりうると感じました。1つ目は、アドボカシーのチャンス。日本政府をはじめとするG7各国政府に対してはもちろんのこと、国内外のメディアに対しても、各団体の取り組む課題や活動内容を広め、伝えていく絶好の機会でした。2つ目は、ノウハウ習得のチャンス。国際的にアドボカシー活動を展開したり、国際会議を運営したりといった経験を有するNGOと協働することで、ノウハウを習得できる機会が用意されていたと思います。最後に3つ目は、市民団体が相互にパートナーシップを深めるチャンス。世界72ヶ国からの参加者を巻き込んだ国際的なプロセスであるC7は、国内外の市民社会の交流を促進し、日本の市民団体にとって「グローバルをローカルに、またローカルをグローバルに」するきっかけとなったことを期待します。さらに、日本国内では、全国各地に点在するG7閣僚会合開催地の市民社会が定期的に情報交換を行い、複数のイベントも開催されました。国内外の市民社会が新たなパートナーシップを築き、また関係性を深化させるための機会として、G7は活用できたのではないかと考えています。

質問4:多様なNGOや他のステークホルダー、省庁などたくさんの組織との連携があったかと思います。パートナーシップに関して、普段から思うことや団体で心掛けていることなどについて教えてください。

「G7市民社会コアリション2023」および「Civil7」としての一連の活動、より広く言えば市民社会の声を政策に反映させるためのアドボカシー活動は、パートナーシップの上に成り立っているということを今回改めて実感しました。国内外の市民社会組織はもちろんのこと、各国政府や外務省をはじめとする省庁、他のエンゲージメント・グループ、メディアなど、多様な立場からG7に携わっている方との信頼とコミュニケーションがあってこそ、市民社会の声が届くのだと思います。

G7広島サミットは5月に閉幕しましたが、今回様々なステークホルダーの方と築いた関係性をここで終わりにするのではなく、今後の活動に繋げたいと考えています。今回のパートナーシップを土台に更なる市民社会の活動の輪を広げていくことができれば幸いです。
 

プロフィール:老松 京香(おいまつ きょうか)
老松 京香一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク
G7市民社会コアリション2023事務局

東京外国語大学国際社会学部卒業。大学では平和構築・紛争解決学を学ぶ。
SDGs市民社会ネットワークが共同事務局を務める「G7市民社会コアリション2023」および「Civil7(C7)」の事務局として、G7広島サミットに向けた政策提言・広報業務に携わる。
2023年9月からイギリスの大学院で移民・難民学を専攻予定。