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[サステナビリティ紀行]HLPFを振り返って
2024/07/30

7/8から今年の国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF)が2週間開催されました。各国のSDGs進捗状況を共有し、SDGs達成への行動加速を目指す毎年恒例の会議です。SDGs報告書ではSDGs達成が困難というレポートが出され、9月の未来サミットでの議論も気になるところです。

今回、SDGs市民社会ネットワークから参加した小松真理子さんにお話を伺いました。

質問1:今年のHLPFの特徴はどのようなものですか。金融や多国間主義、次世代への責任など、いくつかキーワードがあったと思いますが、今年のテーマや特徴など教えてください。

昨年9月のSDGsサミットで折り返した後、初めてのHLPFは、多国間主義の役割や意義を再確認する場でした。SDGs加速の資金捻出の必要から、既存の国際金融アーキテクチャーや国連機構のあり方そのものを問い直す声も多く、来年の持続可能な開発のための資金枠組サミットや世界社会サミットでも引き続き取り組まれるでしょう。むしろそれらの会議でSDGsの意義をどれだけ打ち出せるかが正念場です。

また、未来サミットに向け、ユースの参画が重要視されています。ユース代表を20人連れてきた締約国もあれば、小・中学生のSDGsレビューを支援しZoom発表した国際NGOもあり、SDGsのすべてのプロセスで「誰も取り残さない」という挑戦への本気度が問われると感じました。

HLPF2024が開かれた国連の本会議場

HLPF2024が開かれた国連の本会議場

質問2:サイドイベントや公式プログラムで注目、参加された会合について、概要や感想など教えてください。現地参加ならではの印象など、どのような感想を持たれましたか。

様々な団体がVNR(自発的国家レビュー)のグッドプラクティスを紹介したVNRラボに複数回参加しました。日本政府の3度目のVNRを来年に控え、実質これから半年のプロセスに、いかに市民社会がこれまで以上に深く広く関われるか、学びを活かしたいです。

また、ゴールやターゲット間のシナジーも多く扱われていました。17のゴール全てのつながり、そして様々なステイクホルダーの関係性を立体的に捉え、2030年まであきらめず、分野を超えた協働で、効率的にブレイクスルーに向かうことが、加速への道だと感じています。

HLPF開催前日に開かれたNGOオリエンテーション

HLPF開催前日に開かれたNGOオリエンテーション

質問3:CSO(市民社会組織)ではどのような会合やミーティングがありましたか?注目すべきテーマや日本の市民社会にとって活動のヒントや参考になるような情報がありましたらご紹介ください。

HLPF開幕前と間の週末に、CSOオリエンテーションとワークショップがあり、各国のCSOメンバーと交流・現状認識を共有しました。国連でCSO参加枠が狭められている昨今、5月、ナイロビで開かれた市民社会フォーラムでの成果を活かし、国内外で市民社会参加の意義をしっかり伝えなくては、という危機感が強かったです。

個人的には東アジアからの参加者がほぼいなかったことが衝撃的でした。その意味で、SDGsジャパンが12日に「SDGsのネクサスアプローチ:ゴール16と17の交接点」というサイドイベントを共催でき幸運でした。国連の各部署による会議とアジェンダが乱立する中、CSO参加には資金もノウハウも分析力も、またアドボカシーの力も必要で、さらなるネットワーク化が重要です。

韓国代表部主催のサイドイベント「SDGsのネクサスアプローチ:ゴール16と17の交接点」にて

韓国代表部主催のサイドイベント「SDGsのネクサスアプローチ:ゴール16と17の交接点」にて

質問4:SDGs推進に向けたパートナーシップに関して、普段から思うことや団体で心掛けていることなどについて教えてください。

私たち市民社会は、単に政府や国連を批判するだけでなく、より良い未来に向けた代替案を、共に考えるという建設的なあり方も大事にしています。自由に伸びる草の根ならではの視点や手法で、国境や分野の壁を超えて提案したり、人々をつなぐ、パートナーシップをすすめることは、私たちの得意技であり強みです。共有する未来像に向けて協働するための信頼関係を、ていねいに築いていくことを大切にしたいです。

 

プロフィール:小松 真理子(こまつ まりこ)
小松 真理子一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク
アドボカシー・コーディネーター

広島県在住。NGOや教職、県庁勤務経験を経て、現在SDGs市民社会ネットワークで、政策提言事業とアドボカシーを担当。趣味は民謡(超ビギナー)。