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持続可能な開発目標(SDGs)とポスト2015年開発アジェンダへの示唆~国際議論の現状と実施に向けた課題~
2015/02/7

2015年1月16日(金)国連大学ウ・タント国際会議場にて、「持続可能な開発目標(SDGs)とポスト2015年開発アジェンダへの示唆~国際議論の現状と実施に向けた課題~」が開かれました。

パネル討論1「ポスト2015年開発アジェンダへの示唆―科学からの声と政策」

150116SDGsシンポ東京工業大学の三島良直学長、国連大学デイビッド・マローン学長の基調講演に続き、第一部パネル討論では、環境研究総合推進費用:S11のテーマリーダー含むパネリストからSDGsの実施をサポートする科学的知見に関する最新の成果発表がありました。

参考:人工、人的、自然資本を含めた国の資産全体を数値化して国の豊かさを測る指標を国際比較した報告書「Inclusive Wealth Report 2014」(英語)

続くパネルディカッションでは、科学的データや指標をベースに、グローバルからローカルレベルで資金(特に民間のファイナンス)の途上国へのフローをどう促進し、循環させていくか、途上国投資へのリスクをどう下げていくか、地球規模課題のハイスペックな研究やテクノロジーが社会に役立つことをどう説明していくか、どんな人たちを巻き込み手を取り合っていったらよいのか、その他、実施を支えるガバナンスの整備やキャパシティビルディング、また実施後のモニタリングや評価手法をどう進めるかなどについての問題提起と議論がなされました。

一方で、会場からの質問に、「主婦(一般生活者)が話し合う機会がない。」「目標を掲げるだけではなく、どう達成するかが分からない、空理空論ではないか。」「科学ではないものをどう位置付けるか、非科学的なもの(宗教、心情など)とどうコラボしていくか」、といった声があり、パネリストからは、科学的データの収集・分析と実際にそれらを政策に反映して実施していく間のギャップを埋める、グローバルな文脈をローカルの事情に合わせて生活者目線に落としこみ一般市民や関係者を巻き込んでいく必要があるなどと回答していました。

今後、実施のための適切なパートナーやコーディネーターの存在(素人マインドの持つ専門家、現実を体感している生活者が好ましい)が重要になってくるのではないでしょうか。

今年は戦後70年の節目であり、外交関係ではアジアでは安全保障がフォーカスされます。その中でのSDGsは様々な世界情勢、社会課題に横串を刺すものだと期待されています。伝統的な南北対立だけではなくグローバルなパートナーシップパラダイムシフトが起こせるのか。意味ある合意に向け、間もなくNYで行われるSDGsに関する今年最初の政府間交渉を皮切りに、目の離せない1年が始まります。

パネル討論2「実施をどうするか?日本が何をすべきか?」

第二部では、外国の研究者からは日本の貢献に期待する声も寄せられる中、日本サイドからは外務省、環境省双方から発表がありました。

外務省からは、「国際開発の現場ではODAの2倍を超える金額が民間から入る今日、新興国、NGOや企業など多様なステークホルダーのプレゼンスが増す中で開発を巡るソースとアクターが多様化している。国の役割は今後は、民間資源と開発現場へのリンクなど役割が変わっていくだろう。同時に、途上国で台頭するそうした新たなアクターがどんな成果を出しているかについてのフォローアップとレビューが求められてくる」とコメントがありました。

環境省からは、「SDGsについては、先進国、途上国すべての国を対象にする普遍的目標であり、新たなアプローチを必要とする課題だと考えている。国の環境施策をSDGs/ポスト2015開発アジェンダに照らし合わせて点検し、今後、どう位置付けて展開していくか、気候変動や生物多様性などの条約プロセスがないエネルギーや水、持続可能な消費と生産の問題に特に重点を当てていきたい」と述べていました。

リスク管理の専門家からは、開発に内在するリスク(人口、不公平/公正、都市化など)、生物多様性の損失、気候影響などの問題が顕在化する中で、災害のリスクを管理し、レジリエントな社会を作っていくことが世界共通の課題になっている昨今、日本の震災経験やそれに基づく防災技術などは日本が人間の安全保障の分野で貢献できる分野だとし、レジリエントな社会作りに住民参加型協議で取り組んでいる事例なども報告していました。

終わりに

食糧、資金など、全体としては十分にありながらうまく行き渡っていない、国全体では経済成長しているが格差が広がり貧困が増えている、といったパラドックスな現象が起きています。富を循環させ、公平に分配していくガバナンスやシステムをいかに機能させていくか、サイエンスやデータをどう実際の政策、実施につなげていくか。こうした課題を解決し「持続可能な社会」に向かうには、グローバル化の流れの中で取りこぼしてきたequity=公平さの視点や非科学的な側面(宗教、思想、文化、伝統、マイノリティ、人権etc.)に配慮することが実は重要な鍵を握るかもしれません。(s.shirai)

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