[第3回国連防災世界会議]パブリック・フォーラム「防災・減災・復興への生態系の活用」が開催されました(3月14日)
2015/03/20
2015年3月14日、国連防災世界会議のパブリック・フォーラム公式サイドイベントとして、「防災・減災・復興への生態系の活用 ~ 3.11 の経験を世界へ未来へ~」(主催:環境省、国連大学サステイナビリティ高等研究所、IUCN 協力:林野庁、地球環境パートナーシッププラザ)が開催されました。(右写真;挨拶する望月環境大臣)
生態系が有する防災・減災機能:Ecosystem-based Disaster Risk Reduction(以下Eco-DRR)と東日本大震災を契機とする、復興への活用に関心が集まっている中、国内外のゲストスピーカーやパネリストを招き、その主流化に向けた議論が行われました。
国内外の優良事例から見るEco-DRRの効果
セッションでは、宮城県気仙沼大島やフィリピンなどをはじめとする国内外の優良事例(生態系を活用とした防潮堤、災害リスク軽減のための湿地のワイズユース等)の紹介やEco-DRRによる減災効果のシミュレーションなどの発表があり、森林や湿地、マングローブなどに自然インフラとしての機能を持たせることが、生物多様性を保全しながら、経済的かつ地域のレジリエンスを高める防災・減災と気候変動への適応策となり、また自然の豊かさ=地域の魅力を活かすことによる地域活性化への効果についても期待できることが提示されました。
リオ+20以降、自然資本や生物多様性の基盤を活かしたグリーンエコノミーが注目され、ポスト2015開発アジェンダにおいても、気候変動対策とEco-DRRが組み込まれるよう、議論が活発化していますが、海外のパネリストからこの点において、日本に強いリーダーシップとイニシアティブを期待する声が聞かれました。また、Eco-DRRを主流化し、効果的に実践していくためには、生態系の適切な維持管理やその研究、普及啓発活動を進めるのと同時に、過去の経験や教訓、リスクやベネフィット含む知識や情報などを、グローバルからローカルレベルで共有しあうことが重要であり、その過程では、特にコミュニティの力を活用することの重要性が指摘されました。
多様な主体のパートナーシップによって高める防災・減災機能
パネルディスカッションでは、既存の工学的な防災対策と組み合わせつつ、どのような多重防災のまちづくりをしていくか、企業のコミュニティ支援や環境保全活動がCSR活動ではなく、もっと本業の中に活かしていくべきではないか、Eco-DRRのベネフィットをもっと説明していくべきではないか、と言った今後の課題に加え、国や専門家が提供できる工学的な知識と地域が求めるものを組み合わせ、地域の知恵とスペシャリストの知見を体系化しながら、マルチセクトラル、マルチステークホルダーで協働していくことが重要だとする意見や様々な主体とのパートナーシップにより学際的、ホリスティックアプローチに進め、成功事例をスケールアップしていくべきだとするコメントが出されました。
三陸沿岸地域の巨大防潮堤の在り方について議論が高まる中、人工構造物と自然生態系をどう融合していくか、世界の防災、減災の議論にも答えを出していけるよう、今後、自然生態系の持つ防災レジリエンスの役割とコミュニティヘの貢献度を再評価し、多様な主体も巻き込みながら、各地域の実情や条件を丁寧に見極め、地域における維持管理や、生態系の活用による経済的効果や防災機能の評価・検証の在り方を検討していくことが今後の課題になるようです。(s.shirai)
「防災・減災・復興への生態系の活用」プログラム
挨 拶
望月義夫(環境大臣)
安倍昭恵(内閣総理大臣夫人)
基調講演
「レジリエントな自然共生社会に向けた生態系の活用」武内和彦 (国連大学上級副学長)
「生態系管理を通じた防災・減災」インガー・アンダーセン (IUCN事務局長)
優良事例紹介
「途上国におけるパートナーシップ」ジェーン・マドウィック (国際湿地保全連合CEO)
「自然と共生した気仙沼大島の復興の経緯」白幡昇一 (気仙沼大島観光協会長)
「湿地の防災・減災機能」マーリン・メンドーサ (フィリピン環境天然資源省生態系管理班長)、クリストファー・ブリッグス (ラムサール条約事務局長)
「森林の防災・減災機能を高める取組」桂川裕樹 (林野庁計画課長)
パネルディスカッション 「生態系を活用した防災・減災・復興を進めるために」
コーディネーター: 涌井史郎 (国連生物多様性の10年日本委員会委員長代理/東京都市大学教授)
パネリスト:今村文彦 (東北大学災害科学国際研究所教授) ※冒頭話題提供
佐藤正敏 (経団連自然保護協議会会長)
清野聡子 (九州大学大学院工学研究院准教授)
スリカンタ・ヘーラト (国連大学サステイナビリティ高等研究所学術部長)
ラディカ・ムルティ (IUCN シニアプログラムコーディネーター)