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ポスト2015年開発目標第3回政府間会合参加報告(1)
2015/04/8


●開催概要

政府間交渉
政府間交渉

2015年3月23日-27日に、ポスト2015年開発目標第3回政府間会合がニューヨークの国連本部にて開催されました。議題は「持続可能な開発目標とターゲット」です。

2014年7月にオープンワーキンググループ(OWG)で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の成果文書(17目標169項目のターゲット)については加盟国の間で概ね合意が得られていますが、今回の会合では、その進捗を測るために設定する指標や、設定されたターゲットの正当性(既存の国際条約との整合性など)について討論されました。

会合に先立ち、討論の参考資料として国連統計委員会がレポートを作成し、それに対して3週間のうちに寄せられた70カ国のフィードバックを取りまとめた文書が用意されました。また、ターゲットに関して、共同ファシリテータによる文書が会合初日(3月23日)に用意されました。会合はこれらの文書に対する意見表明を中心に展開されました。

会合後半では、9月に国連本部で開催されるサミットにおける双方向対話のテーマや今後のプロセスが話し合われ、6つのテーマ(あらゆる次元における貧困削減と不平等への対応、気候変動への取り組みとより持続可能なライフスタイルの実現、強く・包括的でレジリアントな経済の構築、平和な社会と強い機構の推進、グローバルパートナーシップと適切な実施手段の再構築、SDGsコミットメント(普遍性と差異)の進捗のレビュー)が概ね合意されました。

また会合最終日には、共同ファシリテータより、FfD(国連開発資金会議)とポスト2015年プロセスの整合性と統合性を確保するための合同セッションの開催について提案があり、加盟国は4月に開催されるセッションの詳細について話し合いました。また、リオ+20の成果文書に記された「技術ファシリテーションメカニズム」の設立に関する草案作成の可能性についても意見が交わされました。

●市民社会・ステークホルダーの参画

コーディネーション会合PH
コーディネーション会合

会期中、毎朝8時30分-9時30分の1時間、国連側の関係者とメジャーグループ・ステークホルダーのコーディネーション会合が開催され、会議の進捗状況などに関する説明や質疑応答の場が設けられ、今後のプロセスにおける市民社会の関与を求める意見が国連側に伝えらえました。

また、25日の午前中には加盟国とメジャーグループ・ステークホルダーによる対話セッションが開催され、市民社会側が意見を表明する機会が設けられました。

●指標に関する論点

担当機関
指標づくりについては、基本的には OWGの成果文書やSDGs/ポスト2015年開発目標の政府間プロセスを尊重し、国連統計委員会が専門的知見を提供し具体的作業を行なうという役割分担が確認されました。加盟国からは統計局(日本の場合総務省)がこれらの業務を担当することとなります。

IAEG-SDGsの設置
統計委員会の決議に従いSDGs指標の機構間・専門家グループ(IAEG-SDGs:Inter-agency and Expert Group on SDGs Indicators)が近日中に設置されることが概ね合意されました。このグループが、今後の指標づくりのプロセスのリーダーシップを取ることとなります。

タイムフレーム
指標づくりに十分な討論を行うには、相応の時間が必要であるという認識が共有されました。今後のロードマップは2015年7月までに開発され、IEAG-SDGsによって2015年12月までに国際的普遍的指標と指標枠組に関する草案が提出されます。指標については、2016年3月に開催される国連統計委員会で承認される見込みです。

指標の位置付けについて
指標については、国連各加盟国において統計能力に差があることや社会的背景などを配慮し、グローバルな指標を設置しつつも各国や地域の実情を配慮すべきであるという声が多くありました。途上国の統計能力向上に向けた支援の必要性についてG77+中国を始めとする途上国側ら多くの国から指摘されています。また、ジェンダーや年齢などを配慮した細分化データの必要性を求める声が多くある一方、指標の数が増えることはその分多くのリソースや時間を割くことになるため現実的でなく、管理可能な数にまで抑えるべきとの声もありました。この他、障害者や高齢者、先住民族や性的マイノリティなどへの配慮も必要する声が、市民社会組織側からも提言されています。

●ターゲット関する論点

OWG成果文書の扱いについて
ターゲットについては、昨年に発表されたOWGの成果文書に定められた17目標169ターゲットをベースとして討論を行なうべきで、OWGの議論の蒸し返し(REOPENING)は避けるべきとの意見が圧倒的多数を占めました。ただし、その度合いについては、G77+中国ら途上国側による「デリケートな政治バランスで話し合われた事柄の蒸し返しに断固反対」とする立場と、先進諸国による「野心レベルを下げないことを配慮して吟味すべき」とする立場との間に差異が見られています。

●共同ファシリテータによる提出文書について

23日の午前中に、ターゲットに共同ファシリテータより、ターゲットに関する修正提案文書が公表され、目標3(健康)、4(教育)、6(水・衛生)、8(成長と雇用)、9(レジリアントなインフラと工業化)、11(都市と居住)、12(持続可能な消費と生産)、15(生態系と生物多様性)、17(実施手段とグローバルパートナーシップ)に関する修正案が提出されましたが、項目によって、OWG成果文書より野心レベルが向上したもの、後退したと読めるものなど差異がみられました。例えば生態系保全に関しては、当初、生物多様性条約で策定された愛知目標に沿った形で2020年までの目標記述がされていた箇所が、2030年の目標として修正された提案がなされたことから、メキシコを始めとする加盟国やNGOメジャーグループから反対の声が上がりました。全体として、この提案文書には十分な根拠が示されていないことなどが不満事項として認識されたこととなります。

サイドイベントPH
サイドイベント

●今後の論点

ターゲットに関しては今後1)OWG成果文書において具体的目標値が定められていないもの(X%などと表記されている事項)、2)既存の国際的合意事項と比較して整合性が取れていないものについての検討を中心に討論が行われることが合意されました。これについては、共同ファシリテータが、検討のベースとなる文書を提示する予定です。 SDGsについては5月中旬頃にゼロドラフト(草案)が公開される見込みであり、これを受けて内容面についてさらに踏み込んだ議論が展開されそうです。

(m.imai)