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[連載:持続可能な社会の実現に向けて]第3回:マルチステークホルダーの連携
2015/01/24

話し手:環境パートナーシップ会議(EPC)副代表理事/リオ+20地球サミットNGO連絡会幹事
星野智子

●SDGsの達成のためには、マルチステークホルダー(多様な主体)の連携が必要不可欠と言われています。今後、どんなステークホルダーが関わっていく必要があるのでしょうか。

17の項目に分かれているSDGsには貧困、教育、消費と生産、ガバナンス、などたくさんの課題が盛り込まれています。
これらを達成するには、社会を構成するすべてのステークホルダーの参加が期待されていると言えます。市民社会としては、多様なNGOはもちろんのこと、ジェンダーや若者・子どものグループ、先住民グループ、そして消費者グループなどとの連携が必要です。
また具体的な指標の設定など技術的、科学的知見も必要なことから、学術界や科学者の参加が期待されます。第一次産業、労働者、企業は国連の9つのメジャーグループにも数えられており、主要なステークホルダーであることは当然ですが、特に、毎回議論となっている資金問題に関しては金融業界の参加と連携も欠かせないでしょう。

●マルチステークホルダープロセス(多様な主体の連携によるプロセス)の普及に取り組んでいる、NNネットの概要について教えてください。

社会的責任向上のためのNPO/NGOネットワーク(略称NNネット)は、NPO/NGOの参画と連携を通じて、セクター間の対話を促進し、あらゆる組織が社会的責任と信頼を高めるよう働きかけるために2008年に設立した組織です。
日本NPOセンター、国際協力NGOセンターなどネットワーク型のNPOや基盤的組織型のNPO32団体が加盟しています。環境パートナーシップ会議は幹事団体として設立当初から参加しています。
国際社会では、企業だけでなく全ての組織に関わる規格であるべきとして“組織の社会的責任:Social Responsibility”の議論が起こり、多様な主体の参加のもと、2010年にISO26000が発行されました。
国内でも多様な社会課題について、NGO、政府、産業界、消費者団体、労働組合、専門家その他からなる“マルチ・ステークホルダー”による「社会的責任に関する円卓会議(SR円卓会議)」が発足し、NNネットでは代表協議者を選出しています。
このような背景の中、NNネットではあらゆる主体の対話、協働をめざしています。

●NNネットの運営する「地域円卓会議」とは、どんなものでしょうか。

「SR円卓会議」に設けられていた「持続可能な地域づくり」ワーキンググループ(作業部会)の有志によって、各地域で多様な課題を対話と協働によって解決することを進めるために「地域円卓会議」が提案され、2012年3月にはマルチステークホルダー・プロセスや実践のポイントなどをまとめたリーフレット「地域円卓会議のススメ」が作成されました。
すでにいくつかの地域では円卓会議の開催によって地域課題を解決したり、協働の輪が広がったりしています。自治体が主導する地域もあれば、NPOが事業として行っている地域もあります。いずれもその地域に関わる人たちの多様な意見を地域づくりに活かしています。

●マルチステークホルダーの連携を進めるうえで、どんなポイントや課題がありますか。またどのような利点がありますか。

基本条件として、すべての参加者が主体的・積極的に参画することや、対等性、柔軟性、協調性が求められます。また誰の意見も傾聴するような開かれたコミュニティも必要です。
議論が円滑に進むように会議の設定方法や、進行役(ファシリテーター)の存在も重要です。マルチステークホルダーによって対話すると、より民主的な意見反映が可能となり、多くの人の関心を寄せることができるので、対話後の活動でも多くの人が関わることが期待できます。

●マルチステークホルダー連携を通じて実現したい、将来の展望をお聞かせください。

SDGsが国連で採択されたのちには、国内での対応が求められ、具体的には、SDGsの各国版・各地域版の策定が求められることでしょう。ぜひ各地において、マルチステークホルダープロセスで「持続可能な地域目標(SCGs:CはCommunity)」を作っていただけたらと思っています。
地域のことを地域のみんなで考え、目標設定をする。そしてそのプロセス自体が持続可能な開発(地域づくり)のための学び(ESD:Education for Sustainable Development)となればよいと思います。
2030年までに、環境が良くて、貧困がなく、平和で、文化と伝統のある、住み心地のよいライフスタイルが各地に定着するように、市民参加、協働がもっと進んでいたら素晴らしいと思います。