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[連載:持続可能な社会の実現に向けて]第4回:ビジネスセクターの動き
2015/02/21

話し手:環境パートナーシップ会議(EPC)副代表理事/リオ+20地球サミットNGO連絡会幹事
星野智子

●SDGsの策定プロセスに、ビジネスセクターはどのように関わっていますか。

国連における9つのメジャーグループの一つとしてビジネスセクターは位置づけられ、リオ+20にも積極参画していました。また、1992年のリオサミットを契機に世界中の経済人から始まった「WBCSD(持続可能な発展のための世界経済人会議)」や、国連が提唱して2000年に発足した「国連グローバルコンパクト」などは、常に関連の活動を展開しています。(下図;WBCSD加盟企業一覧)

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●ビジネスセクターがSDGsに関心を持つ理由はなんでしょう。

国連グローバルコンパクトは「人権」・「労働」・「環境」・「腐敗防止」の4分野を軸に活動を展開していますので、これらの領域に関連の深いMDGsにもSDGsにも当然関心が高いでしょう。一般の産業界から見ても、資源やエネルギーをどう分配したり生産するかという課題もあれば、水や食料、海洋といったあらゆる側面で、地球の資源や安全が保たれなければビジネスリスクが高まったりビジネスチャンスを失うことにもつながりますから、グローバル展開をしている企業を中心に、関心を示している企業が多いです。自然資本という考え方も広がりつつあり、生物多様性を守ることがビジネスチャンスと資源を守ることだということも知られてきていると思います。

●SDGsの目標とビジネスセクターの活動は具体的にどんな関係がありますか。

TEEB目標8の雇用(Decent Work)や、目標9の持続可能な工業化、目標12の持続可能な消費と生産(SCP)にも注目が集まっていると思いますが、前述したように、世界の資源問題や水・エネルギーなどの問題が深刻化すればそれに関わるビジネスにリスクが増えたり、またはチャンスが起こることもありますので、全般的にすべての目標にビジネスも関わっているといえます。目標15は主に生態系保全ですが、TEEB(The Economics of Ecosystems and Biodiversity for Business)によると、生物多様性の損失による経済的影響は、年間2~4.5兆米ドルに及ぶと試算しており、今後、消費者や企業、政府は、商品価格の上昇、商品や資金の調達や、サプライチェーンの混乱などを通じて影響を受けることになろうと予測しています。(右写真;TEEB表紙)

●ビジネスがサステナビリティに関わるにあたって、どんなことに関心を持つべきでしょうか。

「自然資本会計」は一つの関心点だと思います。情報開示に「自然資本」を取り入れる動きがリオ+20の時点で加速し、世銀などが相次ぎ方針を発表しました。森林や水など自然資本への影響を定量的に評価して盛り込む動きに着目していくと、将来性のある企業かどうかが見えてくるかもしれません。WBCSDはInclusive Business(インクルーシブ・ビジネス:BOP層(BOPはBase of the economic pyramid の略で、低所得層を意味する)に対して製品やサービス等の供給と現地の雇用創出を商業ベースで行う持続可能なビジネスソリューションを推進しています。こちらもグローバル化の中では見落とせないポイントではないでしょうか。教育や保健衛生、居住など、すべての人の生活にビジネスは関わっているのですから、各企業で、関わる分野を見つけ、取り組みを検討いただけたらと思います。

●今後注目すべき動きなどがあれば教えてください。

地球規模課題や国連の動きに注目しているのは大規模多国籍企業だけではなくなっています。中小の企業や地元密着の企業でも、事業をするためにグローバルな影響を少なからず受けるからです。「The B Team」というのは、ヴァージン・グループ創設者のリチャード・ブランソン氏が呼びかけて設立された非営利組織で、人や地球のことをもっと注視したビジネスを展開し、雇用問題や、自然資源の利用、経済格差の問題などに取り組もうとする試みですが、このような自発的な動きが増えてくるといいと思います。
国連では積極的に民間資金の活用を歓迎しており、その意味でもビジネス界への期待があります。ピケティ氏も発言した「国際連帯税」など、市民社会が支持している貧困格差是正の動きにも注目したいと思っています。