[サステナビリティ紀行]国際目標を地域の実践に落とし込む
2015/03/20
語り手:京のアジェンダ21フォーラム事務局長 井上和彦さん
●1992年にリオ地球サミットで採択された「アジェンダ21」を地域に定着させるために、京都で「ローカルアジェンダ21」が策定された経緯を教えてください。
地球規模の行動計画である「アジェンダ21」の中に、課題解決のために地方公共団体は「ローカルアジェンダ21」を策定すべきと書かれています。実際には、ICLEI(イクレイ:持続可能性を目指す自治体協議会)が各国でローカルアジェンダ21の策定を促し、日本では、1994年に環境庁(当時)により「ローカルアジェンダ21策定に当たっての考え方」が公表されました。
京都市では、1997 年に気候変動枠組条約第3 回締結国会議(COP3)が開催されるのを機に、環境問題に関する学識者、市民団体、事業者団体の代表者等が参加する「京(みやこ)のアジェンダ21 検討委員会」が設置され、同年、京都市と協働で「京(みやこ)のアジェンダ21」が策定されました。その後、この推進組織として1998 年に「京(みやこ)のアジェンダ21 フォーラム」が設立されました。
●京のアジェンダ21フォーラムは、どのような活動を行っているのですか。
例えば再生可能エネルギー普及の仕組みについて京都市へ提案を行うといった活動の他、京都市を始めとする様々な組織や団体と連携した活動を行っています。
かつて中小企業でも取り組みやすい環境マネジメントシステム「KES」を創設したことから、企業のCSRや環境活動の支援を行っており、生物多様性保全の取り組みを企業に広げる活動も進めています。また、2012年のリオ+20開催時には、その前後に京都でシンポジウムやダイアログを行いました。(上写真;京のアジェンダ21フォーラムが開催するワークショップの様子)
●国際目標を地域に落とし込むうえで、どのような視点やプロセスを持つことが大切ですか。
SDGsに含まれる課題は多岐に渡るので、多様な主体の参加が必要になると思います。まずは、「国際目標を達成していく上で、地域でも多様なステークホルダーの参加のもとで、地域に即した目標やアクションについて合意を形成することが必要である」という前提が、何らかの形で国際的に示され、国もそれを総合的に推進する姿勢を示していくことが、地域で取り組みを始める上での根拠や動機付けとなり、参加を促したり、同意を得やすい環境をつくることにつながると思います。
また、自治体として、「他の主体とともにSDGsに取り組むことが総合的な政策課題の解決にもつながる」ということを認識していくことで、自治体としての役割をより発揮しやすくなることが期待できると思います。
●SDGsの目標を達成するために、どんなアクションやパートナーシップが必要でしょう。
実際には、多様な主体による様々なアクションが考えられると思います。新たな活動だけでなく、これまでの活動に「SDGsに向けて」という要素を加えることで何らかのメリットが生じるということが理解されれば、より施策が進めやすくなると思います。その中で、異なる主体とのパートナーシップも、相乗効果が発揮できればメリットにつながります。
また、課題を越え、セクターも越えたそれぞれのアクションをつなげたり、総合的に見ることができるようにする機能が必要かもしれません。その中で目標への達成度を測る仕組みがあるとより有効になると思います。(上写真;生物多様性保全の取り組みを企業に広げる活動)
井上和彦(いのうえ かずひこ)
京のアジェンダ21フォーラム事務局長。アジア航測株式会社勤務を経て、2001年よりNPO法人環境市民が受託した自治体の環境基本計画策定のための市民会議コーディネート業務に従事。その後、2004年4月よりNPO法人とよなか市民環境会議アジェンダ21事務局長に就任し、大阪府豊中市でのESDの取り組みに従事。2010年4月より現職。